[第1話] ~ 出逢う。
目が醒めると、私は見知らぬ場所にいた。床には畳が敷かれ、横には神棚がある。
どうみても私の家ではない。
”ここは、どこだろう・・・?”
それすら思い出せない。でも、自分の名前ぐらいは思い出すことができた。
私の名前は ”鏡音リン”
しかし此処は何処だろう・・・?と思っていた時だった。
「あら、起きましたか。」
と、後ろから女の人の声がした。
急いで振り返ると、綺麗なひとがやさしい笑顔を浮かべていた。
「お体はもう、大丈夫ですか?」
結構人見知りの私は、だいぶどもってから
「・・・っはい・・・っ!」
と、返事した。
女の人は、にっこり笑って誰かを呼び始めた。
と、私とよく似た顔をした男の子が襖の後ろにあらわれた。
とたん、うれしそうな無邪気な顔をして私によってきた。
「名前はなんというのですか?」
的外れな質問に私は、一瞬困ってしまった。
私は、歴史小説がすきだった。 いま思い出した。
たぶん、ここは <江戸時代>だ。
女のひとも男の子も、着物を着ているし。
たしか、この頃は武士しか苗字を持ってなかったんだっけ・・・?
ってことは、”鏡音”は名乗らないほうがいいか。
「リンといいます。」
というと少年は、一層うれしそうに、
「私は、この鏡屋の若旦那で、連というんだ。」
・・・連・・・。
連なら、知ってるかもしれない。
「私は、どこにいたの!?」
急に大声を出した私に、連は、少し驚いて
「3日前私が、丁度、常連の所へ帯を持って行った帰りのことだよ。人だかりができていたから、すこし道草したんだ。そこには見知らぬ女の子がたおれていた。」
「それが・・・わたし・・・?」
「髪が黄色だったから、可哀想とおもっても預かる気にはならなかったんだろうねえ。」
そうだった、私が金髪だった。
でも、すこし気にかかることがあった。
「どうして、連は私をひろってくれたの・・・・?」
そういうと連は少し微笑むだけだった。そして、
「この者は呉服鏡屋の奉公人で、めい子という。」
綺麗なひとは、
「申し遅れました、めい子といいます。」
と、深々とあたまを下げた。
「連さーーん」
と、店表から声がした。
連は急いで声のするほうへ駆けて行った。
めい子が、
「りんさんも行きますか?」
と訊いてきた。
私は、「はい」と返事して、めい子さんに綺麗な山吹色の着物を着せて貰った。
店表へ行くと、連と笑顔のかわいい少女が親しそうに話している。
その子が、私に気がついた。
「連さん、あの子は・・・?」
連がこちらに目を向ける。
「3日前、みちに倒れていた子だよ。家で、預かることにしたんだ。“りん”というんだ。」
連が私に手招きする。おずおずと私は、近づいていく。
「りん、こちらはお武家の初音家の娘さんで、鏡屋の常連の、みくさん。」
「・・・こんにちは・・・。」
思い切り睨んでくる、みく。
苦笑いをうかべる私、なにも気が付いていないみたいに、笑顔を浮かべる、連。
なんだか、波乱の、予感、です。
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そして、連の腕をぐいと持ち上げ、みくさんから引き剥がした。
「お届物の反物は、若旦那がお渡ししましたね?...緋色花簪
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私を噂した奴は、絞め殺してやる、と思った時のあの頭痛。
緋色の簪をくれた時の連のあの複雑な表情。
あの顔を向けられてからは、まともに連の顔が見れていない。
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ひとりで、縁側にちょこんと座って、空を眺めていた。
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しるる
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