「へぇ、気が変わったの」
カイトが言った。
「まあね。だから、だれか応募しておきなさい。オーディションに」
どうしてそうメイコの考えが変わったのかはわからないが、リンとの関係もおかしくなっているわけではないらしいし、まあ、よかったということにしておこう。そう思いつつ、カイトは微笑んで、
「うん。わかった」
とだけ言っておいた。
「何々、どういう心境の変化?」
興味津々と言った様子で、ミクが言う。
「ちょっとね」
曖昧に答えて、メイコはパイプいすを引っ張ってくると、腰を下ろした。
「あー、最近腰に来るわ。歳かしら」
「大丈夫だよ、めーちゃん、まだ二十五行ってないでしょ」
「来年は二十五よ」
フォローするカイトの言葉をばっさりと切り捨てて、メイコはいすをぎしぎしと鳴らしながら、かばんから書類を取り出して、ぱらぱらとめくる。
「何それ、試験の?」
「違うわよ。次の会議の書類」
難しい顔をして書類を見つめるメイコをみて、少しだけほっとしつつ、カイトはオーディションに応募するためのはがきを探していた。しかし、メイコを見つめているので、手はなかなか動かない。
「ちょっと、バカイト。手が動いていませんよ」
ルカに言われて、カイトは驚きながら、急いで手を動かし始めた。
「たっ、確かここに入ってたはずなんだけどなぁ…?」
ため息をつきながら、ルカも安心していたに違いない。ほっとしたように優しい眼でメイコを見つめていた。
と、いうか、ここは楽器を演奏するだけの場所ではないのか。と、リンは思った。全員がまるで自分の家のようにくつろいでいるのが、なんだか当たり前のように見えた。
あんな演奏が出来るのも、信頼しあっているからなのだろうか。そうだとしたら、きっと、もっとすごいバンドになれるのだろう。
絆とか、信頼とか、情とか、そんなちっぽけで下らない『きれいごと』で、強くなれる人たちだ。正義の味方みたいに格好いいことは言えないかもしれないけれど、きっとそれだけで、伝説のバンドを超えていけるはずなのだ。
才能と努力の比率の問題はわからないけれど、それでも、すごい人たちの集まりだということはよくわかるのだ。
リンはぼうっとしながら、そんなことを考えていた。このバンドに自分がふさわしいのかも、よくわかっていない。ふさわしくなければ、おのずとやめるなり、やめなければいけない理由が出てくることだろう。それなら、それでもいい。
そのときまで、待てばいい。
「あ、はがきあったよ!」
嬉しそうにカイトが声を上げた。
「うるさいバカイト」
三人くらいの声が重なった。
しゅんとして、一人部屋の片隅で手紙にペンを走らせるカイトの背中が、なんだかとても小さく見えた…。
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