レン王子との面会が明日に控えた日の夜のことです。
「・・・しっ、執事・・・。ちょ、ちょっといいかしら?」
たまりにたまった雑務を片付けている僕のところへアリス様がやってきました。そして、ソファに許可無く勝手に座りました。
「いいですよ。ただし、用件は手短にお願いします」
僕は、アリス様をちらりと見てまた雑務に戻りました。ただ1つ聴覚を除いて。
「・・・あ、えっと・・・そうね、手短に言えば・・・・・」
夜は、スーツを脱いでシャツ姿の僕から目を逸らして言いました。
「・・・貴方からもらった、大事なうさ耳が、どっか行っちゃって・・・申し訳ないけど、反省はしてないわ」
・・・なんか後半部分にになにか引っかかりを感じるような。・・・気のせいでしょうか?
「・・・どうりで何かすっきりした訳です」
「でしょ?・・・でも、貴方って、まだ付けてくれてるのねぇ、うさ耳」
「はい。そうじゃないとタイトルが一部嘘になりますからね」
「あらそう。・・・だけど、タイトルに眼鏡がある割には、眼鏡の描写がないような気がするのだけれど・・・気のせいかしら?」
「・・・それは、これを書いてる作者に言って下さい」
「作者がいないから、どうしようもないわ。だから、前々から気になっていたのだけれど、その眼鏡って、伊達なの?」
「伊達じゃないですよ。・・・ちゃんとした眼鏡です」
正直、今更言われるとは思いもしなかったですとは、心の内に留めておいて放置しといて無かったことにしておきました。
「・・・うさ耳の件は僕がなんとかしておきますから、・・・・それで用件はそれだけですか?」
心とは裏腹のことを口が言います。アリス様は、僕の偽りの言葉に頷いて、
「・・・そうね、別に用件なんてないわね」
そう言って、さっさと部屋に戻りかねない雰囲気を漂わせているような気がしました。
ほんとは、もう少し・・・いえ、もういっそのことずっと一緒にいたいのですが、そんなこと執事の僕が言う・・・ことは出来ません。
主従関係で結ばれた僕とアリス様は恋愛で、もう一度結ばれては駄目なのでしょうか?
僕には、よく分かりません。だけど、あの一時的に主従関係を取り払ったあの夜のことは忘れたくないです。
たとえ、アリス様が忘れてしまっていても。
・・・旅行から帰ってきても、まだあの夜のことは覚えているのでしょうか?
そんな淡い期待みたいな気持ちに後押しされて、僕は手を止め、アリス様を見ました。
「・・・何よ?そんなに見られるとなんか、嫌だわ」
何やら白い目で見つめ返されましたが、ツンデレなのだと思うことにしたので、別段ダメージはありませんでした。
「いえ、何でも。・・・ところで、アリス様、あの夜のこと覚えてますか?」
さりげなく探る僕。・・・ここで重要なのは、冷静に普段どおりの自分に演じきることです。本心を押さえ込まずに、優しさを前面に出すように。あくまで、友達と話しているような感覚で。・・・僕の場合は、メイドとかですね。あとは最低限、緊張さえしなければ、失敗することも無く、あとで後悔する必要もありません。
・・・と、全国の恋する男子に、僕なりのアドバイスとエールを送ったところで、僕の本命のアリス様が答えました。
「・・・覚えてるわよ」
「・・・ほんとですか」
僕は少なからず、驚きました。だって、一昨日の晩御飯さえ忘れているアリス様なので、まさか覚えてるなんてと、思い込んでいたからです。
思い込みは、油断大敵なのだと思い知らされた今日この瞬間です。
「貴方が私を初めて襲った夜のことでしょ?・・・あれ、でもそれはお酒のせいだったから違うわね。あれ?あの夜って、どの夜?」
首を傾げまくるアリス様を見て、僕はやっぱりという定番の展開にため息をそっとつきました。
定番の展開は、もうたくさんですと、誰かに向かって心の中で呟きながら、口では、
「覚えてないなら、いいです」
と呟きます。我ながら器用だなぁとか何とか感心していると、
「何よ、教えなさい?・・・ふわー」
眠たいのか普段の威圧感が欠伸によって半減するアリス様。欠伸をする姿も可愛いなぁとか思ってしまう僕は執事失格ですね、はい。
「もう夜も深いんですから、アリス様、寝てください」
「え、執事の隣で?いいの・・・?ほんと・・・?・・・・・・・ぐー」
「ちょ、こんなところで寝ないで下さい。色んな意味で、すっごく困ります」
僕は慌てて立ち上がり、ソファにうたた寝し始めるアリス様を、揺り起こそうと努力するも、全くの水の泡で起きてくれません。
仕方なく、揺り起こそうと努力するのはやめて、対策を考えることにしました。
部屋まで送っていこうと考えましたが、途中でメイドたちに遭遇すると面倒なので、却下になりました。
その次に、朝までアリス様の隣で添い寝するという案が出ましたが、そうするとなんだか色んな意味で危なくなりそうなので、魅力的な提案ですがやっぱり否決されました。
結局、メイドの1人にアリス様を部屋に戻すというある意味無難な案が可決されたのでした。

4人の中では、比較的大人しく、なおかつ少しだけ僕の味方をしているメイドが、たまたま回廊に、一人でいたのでそのメイドにアリス様を部屋まで送るというか、完全にアリス様が熟睡してしまっているので運んでもらうことになりました。少し重そうに持っている小柄なメイドに僕は、
「手伝いましょうか?」
と申し出ましたが、
「いいえ、大丈夫ですわ。・・・それに、アリス様より先共同作業する訳にはいきませんわ、執事様?」
「・・・そ、そうですか」
余裕盛りだくさんなメイドの澄んだ瞳に見つめられ、少し僕はどきっとしてしまいました。
・・・いわゆる、これが浮気というものなのでしょうかと内心にたずねても、ただそっくりそのまま心の中のやまびこさんが面白そうに繰り返すだけでした。
「では、失礼いたしますわ。明日は、2人の面会ですわね。・・・執事様も、早く寝た方がよろしいですわ、では」
僕の心中など欠片も気にせず、にこやかにメイドは言って、アリス様と共に去っていったのでした。
「・・・・」
僕は無意識に頬に手を当てていました。
・・・ほっぺたは、なぜか、熱くて。
アリス様とメイドのどちらに対するのか、分からなくて。




そう思い悩みつつも、夜は、ゆっくりと更けていくのでした。





             

                                   END ?

       


            


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

不思議の国のアリスとうさ耳&執事+眼鏡verカイト その19

こんにちは、最近あめを食べるのがまいぶーむになってきているもごもご犬ですこんばんは。
・・・あめといっても天気の悪い時に降るあれじゃなくてお菓子の方ですよとかはさておき、内容の方を少し。
今回は、まだレン王子との面会当日ではなく前日です、すいません。
だって、当日よりも前日の方がわくわくするんです。・・・それって私だけ?ま、いっか。
なので、ほんとに次回は面会です。レン王子登場です。
ほんとなんだからね!
・・・なんでツンデレ口調で言った?私・・・。

閲覧数:156

投稿日:2010/03/27 14:39:51

文字数:2,707文字

カテゴリ:小説

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  • hogawa_511

    hogawa_511

    ご意見・ご感想

    こんにちは、ホガワです。
    続編お知らせメッセージありがとうございます。
    教えてもらってから大分(2ヶ月くらい?)経っててすみません。m(_ _)m

    お嬢様の鈍さに伸されて刃向かえない執事は手近なところで・・・はい、最低ですね。
    へたれでも優柔不断や浮気はアイスだけにしてください。(え

    ちなみに私はどっちかと言えば前日は普通で当日の直前にならないと激しい緊張感がないです。
    内容はどうあれ、わくわくはしないですね・・・緊張か無気力です。(←どうでもいい。
    次回はもっと早く返事できるよう努力します。
    気候がおかしくて体調崩しやすそうですが、お体にお気をつけてこれからも頑張ってください。

    2010/06/05 16:55:08

    • もごもご犬

      もごもご犬

      >ホガワさん

      こんばんは、すっごいお久しぶりですねー!
      再び会えて嬉しいです><

      執事最低ですか(笑)
      アイスならいいんですね、分かります←

      私も前日には緊張感とかはない方ですね。
      緊張感というよりわくわく感といった方が正しいですね^^
      今日は体育祭があったのですが、別段緊張はしなかったです。
      むしろ、あっという間でした!楽しかったです。
      でも興味のないことだったらどうでもいいと思う人です(←←

      そんなに急がなくていいですよ!
      何事もマイペース・・・でも仕事とかそういうのはマイペースとはいかないんですけど(笑)
      この頃の天気は無駄におかしいですよね><
      風邪とは無縁の私ですが、気をつけて頑張りますね!

      2010/06/05 20:08:13

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