氷のような冷たい視線を浴びつつ、リンたちはそれぞれの立ち位置に立ち、楽器のセッティングを始める。ドラムセットとキーボードを中心に立ち居地を考えた結果の、一番よく聞こえる場所、とミクが太鼓判を押していたのだ。
「はじめてください」
全員の準備が終わったころ、審査員の一人が言った。一気に空気が張り詰める。
ルカのドラムが響く。カイトのキーボードが歌う。リンとレンのベースとギターがそれぞれ、力強く空気を揺らす。すべてを纏め上げるようなメイコの声。
曲も、詩も、演奏も、すべてがこの為にあるような、不思議な感覚と感情を聞き手に思わせるような、『音の流れ』だ。
はっと息を呑むような凛とした表情もまた、曲によく似合った。
曲が終わるまで、審査員は言葉を発しなかった。恐らく、このバンドがもっとも長く審査室にいたことだろう。曲が終わり、全員が肩で息をつくと、審査員は、
「はい、わかりました。では、戻ってください」
「け、結果は…」
「登録されている住所に、通知いたします」
「そうですか…」
言って、メイコはお辞儀をすると、部屋を出た。勿論、全員がその後をついて、部屋を出た。
ドアを閉めた瞬間、約半数がその場に倒れこんだ。
「お、お、終わった…」
「あー無理。もうこっから動けない」
「誰かコーラ買ってきてー」
「自分で行ってー」
廊下で待っていたミクが、心配そうに駆け寄ってくる。
「どうだった?」
「うーん、微妙な反応。何も言わないんだよ」
と、カイトが答えると、メイコがこくこくと頷いた。
「随分出てこないから、心配したんだよ」
「本当、五時間くらいに感じた」
レンが笑うと、
「本当です!」
と、ルカが肯定した。
全員が安心して笑いあっている中で、ただ一人、リンだけが放心状態で、そこに突っ立っていた。まるで魂を抜き取られたように、心ここにあらず、と言う感じである。
「大丈夫、リン」
「うん」
リンは答えた。しかし、レンのほうをみてはいない。
「疲れたでしょ?」
「うん」
「…。一×一は」
「うん」
「だめだ、こりゃ」
お手上げ、と言う風にポーズをとって見せたレンをみて、全員が苦笑して、それからため息をついた。安心したようなため息だった。
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