【二次創作】翻案・優しいそら【短編小説】

投稿日:2011/07/04 18:34:38 | 文字数:3,300文字 | 閲覧数:102 | カテゴリ:小説

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※この作品は、kznr様の楽曲『優しいそら』(http://piapro.jp/t/ICXc)をもとにした二次創作です。

文字数にしておよそ3000字、原稿用紙に写すと9枚。
前作が文字数にしておよそ3500字、原稿用紙に写すと12枚。
 そ れ っ て 掌 編 っ て 言 い ま せ ん よ ね ! 
ということで、前作と今作を短編に訂正。いやあ、プロット段階ではどちらとも掌編程度の長さにするつもりでしたんですけどね(※おい

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※この作品は、kznr様の楽曲『優しいそら』(http://piapro.jp/t/ICXc)をもとにした二次創作です。

原曲:優しいそら
作詞:kznr
作曲:kznr
編曲:kznr
唄:初音ミク


『翻案・優しいそら』 日枝学

 雪が降る。夜九時、人々が行き交う駅前で、私は立ち尽くす。
 私は五年前のことを思い返す。五年前の私は――

   ――  ――  ――  ――

 わたしは空を見上げる。雨は未だしとしとと降っている。
 わたしの隣に立つ彼が言う。
「やまないねえ」
「うん」
 彼の手と繋いだわたしの手が、繋いだままぶらぶらと揺れる。冷たい空気の中、彼の手に触れるわたしの手のひらだけが、体温の温かさを感じる。
 わたしと彼がこの電車を降りた時にはもう、雨は降っていた。今日雨が降るとは想像していなかったので、わたしも彼も傘を持ってきていない。わたしと彼が雨宿りしているのはそういうわけだ。特に急いで帰る必要もない。
 彼は私に、自らの発する言葉の一つひとつを確認するかのように、ゆっくりと話しかける。
「それにしても、今日は面白かったねえ」
「だねー。まさか××くんたちと出くわすとは思ってもいなかった」
「違いない、あいつらの慌てっぷりは笑ったよ。学校では毎日会ってるのに、なんで外だとあんなに慌てるんだか」
 ははは、とわたし達は笑いあう。緩んだ頬が自然と上に持ち上がって、意識しなくても笑みになる。彼もそうなのだろう。笑い方がとても自然だ。
 その話自体が面白いから笑っているわけではない。勿論、話がつまらないというわけではないが、それ以上に、こうして彼と今日のことを思い返しながら話しあえること自体が楽しく、幸せなのだ。
『心が温まる』という言葉があるが、あの表現は極めて正しい。わたしは彼といる間、浮かれたような、それでいて落ち着くような妙な心地になるが、それはまさに心温まるということなのだろう。寒空の下、身体中が冷え切って固まろうとも、心だけは温かい。周りが寒ければ寒いほど、その温もりは目立って感じる。
 今のわたしの心を目で見ることが出来たら、きっとそれはオレンジ色をしているのだろう。ほのかな明るさと温もりを放って光る、柔らかなオレンジ色。
 熱は触れるものに伝わり導かれる。わたしの心の温もりは、彼から伝わってきたものだ。だからきっと、彼の心もそんな色をしているに違いない。

 わたしと彼が、今日のことを一つひとつ思い返して話している中、ふと彼が笑みの中に違う色を混ぜた。
 そのことに気付いたわたしは、彼にどうしたのかと尋ねる。
「いや、クラスのやつらと毎日毎日飽きるほど会えるのも、あと少しなんだよなと思って……」
「ああ、そうだね……」
 わたしも彼も、あと少しで卒業だ。卒業したらそれぞれが別々の高校へ行く。そうしたら、多くのクラスメイトとも毎日会うことはなくなるだろうし、何より隣の彼ともここまで会うことは出来なくなるだろう。そのことを考えて、わたしの心はほんの少し、ざわめいた。毎日が楽しくて、一緒に楽しみを共有出来る友人たちが好きで、わたしの心の拠り所である彼が大好きで、だからこそ、今の中学を去るのは少し寂しい。
 もちろん彼とは学校で会わなくなるだけであって、互いの家もそんなに遠くはないから、会おうと思えばいつでも会えるのだが、何故だろうか、ほんのすこし、不安だ。彼との距離が離れていってしまうかもしれない。
 前に友人にそのことを相談したことがある。相談相手になってもらった友人は「大丈夫だよ。だってほら、あなた達ものすごく仲良いじゃない。そんだけ仲良い二人が、たかが学校離れるぐらいで、今更関係を崩すことはないでしょ」と、不安を微塵も感じさせない口調で言った。
 友人が本当にそう思っていたのかは分からない。もしかすると彼女も同じことは思っていて、けれどわたしを不安に思わせないためにああ言ったのかもしれない。逆に、本当に言ったとおりの言葉を思っていた可能性もある。しかしどちらにせよ、わたしは未だ完全に不安を取り除けてはいない。
 以前、小学校卒業の時に似た状況があったことを思い出す。
 自分が通っていた小学校はほぼ全ての生徒が、今のわたしが通っている公立中学に進学したのだが、同じクラスの子で一人だけ、みんなとは違う私立中学へと進学した子がいた。
 わたしはその子とは仲が良く、卒業の際には「違う学校だけで、これからもたまには遊ぼうね」と言い交わしたものだったが、今となっては会うことは滅多にない。互いに遊びに誘うようなこともなくなった。
 その時にわたしは思った。ああ、人と人との繋がりは、案外弱い力でしか結びついていないのだ、と。
 その友人と私の関係の状況が、わたしと彼との将来が重なって見える。わたしが不安を消せないでいるのはそれが原因だろう。
 未だ消えることのない不安は、気にしなければ認識することが出来ない程度の、ほんの小さな、ふとすれば溶けてどこかに消えてしまいそうなものだ。
 しかしながら、それは確かにわたしの胸に残り続けている。

 唐突に、彼が「あっ」と言って、夜空を見上げた。
 わたしがどうしたのかと尋ねると、彼はわたしに夜空を見上げるように促す。
 見上げると、夜空から小さな光が降ってきていた。
 雨が雪に変わって、夜空を白く染めていく。
 繋いだわたしの手を、彼がより強く握ったのが分かった。手の触れている面から温もりが伝わってくる。心の温もりが、伝わってくる。温もりは心に伝わり、胸にささる不安を溶かし、血液を介して頬を赤く染める。
 隣を見ると、彼も頬を赤く染めていた。

   ――  ――  ――  ――


 五年前の私は、今の私を見たらどんな反応をするだろうか。あれから色んなことがあった。あの時の私が想像もしないことが、いっぱい起きた。色々な経験をしていく中で、人間は少しずつ変わっていく。私もその例外ではなかった。
 彼とは結局のところ、高校になってからも、飽きるほど会った。中学を卒業するときのあの不安は何だったのだろうかと思うほど、何度も会って、距離を縮めていった。
 二人きりで会う時間が中学の時よりも増えたからだろうか。中学の時にはお互いが楽しんで遊んでいるだけだったのが、高校になってから、互いの価値観や人生観などに関わる真剣な話をすることが多くなった。互いに互いのより深い所を知ることは、底知れぬ喜びと充足感を私達に与えた。味を占めた私達は、さらに互いを知ろうと距離は縮め続けていった。結果、私達の距離は加速度的な早さで縮まっていき、同時に、仲はより深まる一方のように見えた。
 けれど、不思議なこともあるものだ、どこかの段階から、私達は互いに対する興味を少しずつ、しかし確実に失っていった。そのことに気付いたときにはもう、私達は一緒にいても心の温もりを感じなくなっていた。そしてどちらから別れを切り出したというわけでもなく、自然と、それが当たり前であるかのように、私達は別れた。
 後悔はしていない。悲しかったり悔しかったりするわけでもない。
 結果がどうであれ、あの日々は私にとってかけがえのない大切なものだった。あの日々があるからこそ、今の私がある。
 今でもあの日々のことは、大切で大切で、とても、大切だ。楽しかった頃を思い返すと、今でも心が温かくなる。
 彼もこんな心地でいてくれたらいいな、と思いながら私は立ち止まっていた足を再び前に進ませ始める。
 空から降る雪は、ほのかな光となって夜の街を優しく包む。
 彼もこの雪を見ているだろうか。




※あとがき
 心情描写の練習を兼ねた作品パート2。同じ『別れ』を取り扱ったものでも、前回は絶望的な話だったので、今回は少しだけ温かい話を。最後の所の心情描写が雑だったかな? あと、くどい所が多々あったように思える。
 夏にクーラーのかかった部屋で冬の話を書くのは、よく考えると妙な気もしますね。

なにかの素材になればいいな、っていうテキストと、好きな作品をモチーフにした掌編小説を投稿できればいいなって思ってます(2013.12.25)

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作品へのコメント3

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    ご意見・感想

    遊びにきました!
    締めくくりの言葉がすごく好みです。歌がポップなので、淡々とした語り口の文体と一緒にあわせて味わうと、また良いものですね。ごちそうさまでした。
    光の見えるさびしさというものは、ぼんやりと明るい雪の昼間のようで、だれもが持つ思い出に通じて心を打つと思います。
    では!これからも「手のひらに乗せる物語」、楽しみにしています。

    2011/07/14 21:11:31 From  wanita

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    メッセージのお返し

    >wanitaさん
    おおおおwanitaさんこんにちは! コメントありがとうございますっ!!
    現在wanitaさんのコメントの表現におおおおおとなっております(笑 具体的には、
    >光の見えるさびしさというものは、ぼんやりと明るい雪の昼間のようで、だれもが持つ思い出に通じて心を打つと思います。
    の所ですね。ここの表現SUGEEEEEEEE!!!!!!(※おい
    いやあこういう表現出来るようになりたいものです。モチベーション上がりました! 長編だけじゃなくてこういう短編もしくは掌編もまったり書いてきますね。頑張ります! ありがとうございましたっ!

    2011/07/15 13:36:59 日枝学

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    ご意見・感想

    こんにちは!ちょっとお邪魔します。

    なんかすごく優しい気分になりました!
    なんていうか心温まりますね^^
    自分もこんなふうに書けたらいいな~

    次回作もまた読みますね!おじゃましました!

    2011/07/05 14:23:18 From  ピロ

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    メッセージのお返し

    >enarinさん
    こんにちは、enarinさん。今回もコメントありがとうございます!
    はい、まさにその通りで、前回が社会人の二人が心のすれ違いから距離が離れて別れ、今回は中学から付き合いだした二人が大学(書きはしなかったけど脳内でそう設定して書いてました)になって何故か別れた話として書きました。
    確かに、気持ちだけじゃなくてその他色々な要素が混じり合って、付き合いが長続きするかしないかって決まりますよね。何故か分からないけれど別れた、というのはその要素一つひとつが気付かないほど小さな影響を二人の関係に与えて、それが重なり続けた結果なのかなと考え中です。うーん、難しい。
    空論オッケーです! 自分たちが実際に直接自分で体験出来ることしか書けなければ、我々物書きは死滅するので空論万歳です(笑
    コメントありがとうございました! 勉強になります!

    >mikoさん
    mikoさんこんにちは! コメントありがとうございます!
    このとてつもない暑さの中あたたかい話を書くのは妙な気持ちでしたw
    きっと人が別れたり惹かれたりするのは、色んな要素が絡み合っているのだろうなって思ってます。
    人の思い自体も、多くの要素から生まれるので、結局の所要素が多すぎて、こういう話を書きながらもよく分からないでいる所が多々ありです(笑
    そういうわけで、分からないなりに想像で補ってこの作品を書いてみました。読んでいただいてありがとうございます。
    それではコメントありがとうございました!

    >ピロさん
    ピロさんこんにちは! テスト期間中にも関わらずコメントありがとうございます(笑
    おお心温まりましたか、そう言っていただけるとありがたいです。
    今回は読み手が心温まるような雰囲気を目指しつつ書いていたので、いやあそう思っていただけて良かったです^^
    ちなみにここの所意識しているのは、心理描写をゆったりと書こうということを意識しています。
    書くのは読むよりゆっくりのスピードで進むので、自分で心理描写細かく書いたつもりが、読み手からすればすぐ終わってあっさりすぎる感想を抱かれることがある、ということを何かで読んだので、そのことに注意して書いてみました。
    コメントありがとうございましたっ!

    2011/07/05 15:30:04 日枝学

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    ご意見・感想

    今晩は! 今回も拝読させて頂きました。今回も”別れ”のお話ですね。

    前回は、イメージ的に”サラリーマンとOLのカップルだった大人の二人が、心のすれ違いを起こし続けて、結局別れる”な感じだったのですが、今回は、貴方が書かれている通り、中学生でカップルだった→大学生付近で別れる、であり、”世の中現在進行形のカップルは数多くいるのに、長続きしない”のが何故なのか、を心証描写を交えて書いている作品のように感じました。設定年齢は学生かな。

    大人になって、結婚まで到達するカップルが少ないのは、この主人公さんが漠然と抱いている”よく解らないけど何故かお互い離れていった”原因にあると思います。

    恋が続くためには、お友達ゴッコの仲だけではダメだったりします。趣味、考え方、価値観、etc、これらが、恋が持続できる程似ていたり強かったりしないと、だめなのかもです(勿論例外も多くあります)。お互いが住んでいる家の位置は、遠距離恋愛で成功する事もあるので、なんとも言えません。

    なーんて、いかにも知っている専門家のように書きましたが、所詮、友人から聞いたこと、本で読んだとかTVでやっていたとか、そこから出てきた空論でもあります。今回のは、作品で感じたこと、だと思って下さいませ。

    今回も気持ちよく読めました。凄く読みやすいですね。

    また次の作品も楽しみにしてますね。夏これから本番で暑いので、ご自愛下さいませ。

    ではでは~♪

    2011/07/04 21:23:31 From  enarin

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    メッセージのお返し

    >enarinさん
    こんにちは、enarinさん。今回もコメントありがとうございます!
    はい、まさにその通りで、前回が社会人の二人が心のすれ違いから距離が離れて別れ、今回は中学から付き合いだした二人が大学(書きはしなかったけど脳内でそう設定して書いてました)になって何故か別れた話として書きました。
    確かに、気持ちだけじゃなくてその他色々な要素が混じり合って、付き合いが長続きするかしないかって決まりますよね。何故か分からないけれど別れた、というのはその要素一つひとつが気付かないほど小さな影響を二人の関係に与えて、それが重なり続けた結果なのかなと考え中です。うーん、難しい。
    空論オッケーです! 自分たちが実際に直接自分で体験出来ることしか書けなければ、我々物書きは死滅するので空論万歳です(笑
    コメントありがとうございました! 勉強になります!

    >mikoさん
    mikoさんこんにちは! コメントありがとうございます!
    このとてつもない暑さの中あたたかい話を書くのは妙な気持ちでしたw
    きっと人が別れたり惹かれたりするのは、色んな要素が絡み合っているのだろうなって思ってます。
    人の思い自体も、多くの要素から生まれるので、結局の所要素が多すぎて、こういう話を書きながらもよく分からないでいる所が多々ありです(笑
    そういうわけで、分からないなりに想像で補ってこの作品を書いてみました。読んでいただいてありがとうございます。
    それではコメントありがとうございました!

    >ピロさん
    ピロさんこんにちは! テスト期間中にも関わらずコメントありがとうございます(笑
    おお心温まりましたか、そう言っていただけるとありがたいです。
    今回は読み手が心温まるような雰囲気を目指しつつ書いていたので、いやあそう思っていただけて良かったです^^
    ちなみにここの所意識しているのは、心理描写をゆったりと書こうということを意識しています。
    書くのは読むよりゆっくりのスピードで進むので、自分で心理描写細かく書いたつもりが、読み手からすればすぐ終わってあっさりすぎる感想を抱かれることがある、ということを何かで読んだので、そのことに注意して書いてみました。
    コメントありがとうございましたっ!

    2011/07/05 15:30:04 日枝学

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