彼女のおかげで命を救われた僕は大臣から“次期王女の召使として働くように”と言い渡された。新調された明るい山吹色のベストは彼女と僕の髪の色に似ていた。
服に腕を通して改めてその色を眺めていたら、無性に彼女に逢いたくなった。お礼も言いたいし、召使として傍にいることを許されるたのなら、今すぐにだって傍にいたい。
彼女を探して城を歩くと兵士達や他の召し使いが溜め息を吐きながらも城のあちらやこちらを走り回っていた。
「嗚呼レン!また姫がいなくなったんだ!お前も一緒に探しておくれ!」
「…………。」
彼女がいなくなった、と聞いたとき思いの外不安にはならなかった。僕には彼女が何処にいるかわかる気がして。
中庭を通り越して、時計台の奥。抜け道を潜ると小高い丘が見える。僕等はよく抜け出して其処で遊んでいた。城の中にいないなら其処にいると思った。
「……リン。皆が探してるよ?」
どうやって其処まで行ったのか、丘にある桜の木ノ上からクスクスと笑う彼女がいた。
「知ってるわ。
もぅ。皆どうして毎回毎回
おんなじこと繰り返すのかしら。」
「それはリンが繰り返しお城を脱走してるんじゃ…」
「違うのっ。
なんで見つけられないのかって話よ」
「そんなこと言われても…」
「じゃあ、レンはどうして?」
「え…?」
「レンはどうして
すぐあたしを見つけられるの?」
「それは…」
――君を守ると誓ったから…――
「それは…?」
「……リンだからだよ」
「何それーっ。変なの!」
そう彼女がはしゃぎながら笑った。そのとき腰掛けていた枝に添えていた腕がズルッと滑り、彼女の小さな悲鳴とドスンッという音がした。
「いっ…たぁい……。
って、レン!?大丈夫っ??」
「へ…いき。イテテ…、それよりリン怪我は?」
「大丈夫…」
なんとかギリギリのところで彼女が落ちるところへ滑り込んだ僕は、ゆっくり立ち上がり服を叩いた。
「…ぁ。もう汚しちゃった。せっかく綺麗な色なのに」
「あ。その服!
それね、あたしが選んだのよ。
レンの色だから♪」
「僕、の…?」
僕の傍に膝間付いて、泥を叩きながら彼女は幸せそうに話はじめた。
「そう。レンの色。
向日葵みたいな、太陽みたいな
暖かくて優しい色。
レンにぴったりでしょ?」
見上げて無邪気に笑う彼女が可愛くて、可愛くて。僕は顔をそらしながら言った。
「それって…
リンのことだろ…?」
きょとんと首を傾げる彼女の腕を掴んで立たせてやり、絡んだ草や土を払う。
「もう痛くない?
早く戻ろう。もうすぐ3時になるよ?」
「えっ、嘘!
おやつの時間じゃないっ」
本気で慌てる彼女に思わず笑ってしまった。
僕は改めて
ずっとずっと 一生をかけて
彼女を守ろうと思った。
next…
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センリ
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