――――誰も近づかない古びた小さな教会で、彼等は静かに過ごしていた。
*
リン「レンー朝だよー。起きろー!」
薄暗い部屋の中で甲高い少女の声が響く。
レン「うーん…もう少し…。」
レンと呼ばれた少年は、剥がれた布団を元に戻そうと、手探りで布団を掴んみ、元に戻した。
まだ眠そうだ。
まぁ当たり前である。何故なら、四時だからだ。
夕方の四時ではなく朝の四時だからだ。
陽も出ていなく、真っ暗だ。
リン「もう!レンはだらしないなぁ。」
だらしなくはない。この反応が正常なのだ。
少女は何かを考えるように、腕を組み、何かを思いついたようで、頭の上で愉快な音が鳴る。
リン「レーンー。早く起きないと、食べたゃうぞ☆」
考えた結果がこれである。
もぞもぞと布団の中に、忍び込み、少女は何を思ったのか、少年の耳を甘噛みした。
かぷっというより、はむっという効果音が似合いそうだ。
レン「うひゃあああ!」
可愛らしい悲鳴を上げ、飛び起きる。
一瞬で目が覚めた様で、少年は少女を睨めつける。
少女は屈託な笑みを浮かべ、嬉しそうに手を叩く。
リン「うひひ。大成功ー。」
Vサインを少年に送りながら、少女は笑う。
少年は呆れながら、少女の頬を抓りながら、何がおもしろいのか、釣られて微笑んだ。
レン「で、起こして何がしたかったの?」
皮肉そうに微笑みながら、少年は少女に訊く。
リン「えー…っとね、一緒に朝ごはん作りたかったの!」
少年は少し考え、
レン「えっと、料理経験もない僕を無理矢理起こして、朝ごはんを作りたいとな?」
リン「うん!」
少年の額から何かが切れる音がした。
レン「無理に決まってる!!!
家が火事になって終わりだよ!」
リン「むぅぅ…レンのいじわる。けち!」
レン「!! 怒ったよ。僕怒ったよ。
さぁ、何が食べたい!?しょうがないから僕が作ってやる」
少女はぱぁぁぁぁっと明るくなり、
リン「うーんとね、レンが食べたい!」
その言葉に、少年は固まった。フリーズした。
顔も赤くなった。湯気がでそうだ。
レン「リン、それ本気!?
本気だったら余計タチ悪いと思うよ!?」
少年は声をあらげているが、まんざらでもなく嬉しそうだ。
リン「えー…レン、リンのこと嫌い…?」
その言葉に少年はたじろぐ。
レン「わ、わ、嫌いじゃないけど…わぁ、」
少年は生唾を飲み込むと続けた。
レン「リンのことは好きだけど、やっぱり、姉弟だし…」
その時、少年は少女を押し倒した。
リン「れ、レン!?」
レン「リン、好きだよ!」
<自主規制>
*
リン「っていう感じでレンとイチャイチャしたいんだけど…。」
レン「…色々ダメ。却下。」
始めまして。僕は鏡音レンです。
僕の前でキラキラした笑顔を向ける子は僕の双子の姉のリンです。
何故か紙芝居を持っています。
今のはリンの妄想みたいで、実行に移したいみたいですが、ツッコミどころがおおすぎて絶句状態です。
実際の僕とリンは、リンの方がだらしがないです。
リンが起きるのは昼の12時です。
もう既に朝じゃないです。
レン「そう言えば、なんで4時っていう設定なわけ?
リンそんな時間に起きれないじゃん。」
リン「うーん…なんとなくかな。」
…サラッと言ったよこの子!
妄想の中の僕可哀想!
僕じゃないけど、僕っていう設定だから良いや。僕可哀想!
リン「なんてね。冗談だよ。妄想の中でくらいねちゃんとしてたいんだぁ。えっとね、しんこんふーふ、みたいな!」
その瞬間、僕の体内のどこかが切れる音がした。
げふっ鼻血が出そうだ。
リン!可愛すぎ!
ほっぺた赤くしちゃって!
リン「レン、ほっぺた赤いけど、熱でもあるの?」
心配そうに僕の顔を覗き込むリン。
反則!レッドカード!
(赤だけにね!)
てか、僕の顔赤いとか、妄想状態!
何ていう失態!
レン「大丈夫だよ。リンが可愛くてドキドキしてたんだ。」
…ん?僕、何を言ったんだ?
うわぁぁぁぁ!
恥ずかしいよ!
何気障な台詞言っちゃってんの!?
絶対リン引いたって!
僕のバカ!
レン「わわっいっ今のは忘れて!」
項垂れる僕に、リンの明るい声が耳に響く。
リン「えーやだぁっ。リン、凄く嬉しかったもん!
絶対忘れないー!
あ、それとも、リンには聞かせたくないことだったとか?」
うるうるな瞳を僕に向けるリン。
レン「はわわわ。」
動揺する僕。もう頭が回らなくなりそうだ。
リンはにやけながら見つめる。
リン「もう、レンは可愛いなぁ!」
自分でもわかるくらい、顔が熱い。
リンは僕の頭をなでなでしながらにやけてる。
レン「り、リン、好きだよ…」
リンは少し驚きながらも、僕の言葉に応える。
リン「リンも、レンのこと大好きだよ!
いじめたいくらいに!」
レン「リン、それ大好き違う…気がする」
リン「違くないから!」
頬を膨らませるリン。
そんなリンも可愛い…。
どれくらいの大好きかは測り知れないけど、僕はリンが大好きで、リンも僕のことをいじめたいくらい大好きなんだ。
僕はそれだけで嬉しかった。
レン「恥ずかしいけど、嬉しいな。」
リン「リンも嬉しい!
ねぇレン、ずっと一緒だよ?」
レン「当たり前だよ。ずっと一緒にいよ。」
僕とリンは指切りをし、また今日も深くなっていった。
――――好きだと素直に伝えるだけで、こんなにも幸せになれる。
自分の気持ちを隠さずに、伝えた彼等は、とても幸せだった。
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