彼女ははじめから気づいていたらしい。

自分が異端な存在だったということに。




幼い頃から独りぼっちで。

常に周りから孤立していて。

誰からも期待されなくて。

何も持っていなくて。



彼女から話はできなかった。


話題を見つけることもできなかった。

たまに話しかけてくる友達は数少なく、口数も少なかった。


聞けば、彼女は人を寄せ付けない雰囲気があったらしく、周りから浮いていた理由はそれだという。

そんな彼女に近づいた俺は、周りから見れば変わり者だったのであろう。常に冷たい視線を浴びせられたものだ。

当時の俺は、どうして誰もが彼女を嫌うのか、これっぽちも理解していなかった。




中学二年の春、彼女は俺のクラスに転校してきた。

まだあまり時間が経たない四月のある日、彼女は学校にやってきた。

転校生というものはどこの学校でも噂になるものだが、彼女の場合は違う理由で噂になっていた。


なぜなら彼女は歩けなかったから。

幼い頃患った病気で、足が使い物にならない程動かなかったそうだから。

俺も骨折をしたことがあるから、歩けないという痛みはよく知っていた。

だから、彼女に近づいた。友達になりたいと、心からそう思った。



友達というのは自然になるものだが、俺は手を差し出して「友達になろう」と言っていた。

転校してきて間もなかった彼女には嬉しかったのだろう。

それが男でも女でも、昨日まで顔も知らなかったクラスメイトでも。

まだ桜の散る時期、放課後の教室で彼女が嬉しそうに俺の手を握り返したのを覚えている。



俺たちはすぐに仲良くなった。

いろんなことを知り、お互いの趣味を話し合ったりもした。

話しているときの彼女の笑顔は、今でも忘れられない。




彼女は身体障害者だった。

自らの足で歩けなかったから、常に車椅子や松葉杖で移動していた。

階段などといった足場が悪いところでは、俺が支えて移動していた。

いつも申し訳なさそうに「ごめんね」と言っていた彼女。

暗闇に取り残されれば、そのまま消えてしまいそうな存在だった。



彼女を心配した人間は俺以外にもいた。

だけど他人と違う彼女を嫌う人間だって少なからずいた。

嫌な存在は徹底的に排除すべき、そう思った人間が学年に一人や二人はいたものだ。



ある日の朝、俺は彼女の腕に小さな傷がいくつかあった。

どうしたのか聞くと、転びかけて打ってしまったと答えた。

そのときの彼女は笑っていた。



翌朝、小さい青あざを腕に作った彼女はまた笑っていた、

どうして笑っているのか、その時の俺は理解できていなかった。



それから毎日、彼女は腕にひとつずつ傷跡を増やしていった。

さすがにおかしいと思った俺は、彼女に何があったのか聞いた。

彼女はいつも『何でもない』とはぐらかし答えてくれなかった。

きっとあの笑顔は無理して作っている。俺の考えは当たってしまっていた。


夏休みが近づいたある暑い日の放課後、とうとう彼女は話してくれた。

それは俺の予想どおりの答え。彼女曰く『私みたいに異端な存在が気に入らないらしく、名前も知らない数人がいじめてきた』そうだ。

殴られることもあった。机や教科書に落書きをされることもあった。カッターナイフで斬りつけられることもあった。

いつも飲んでいる薬を隠されることもあったらしい。

酷いときには、一人で松葉杖を使っているときに階段から突き落とされたこともあったらしい。


どうして相談してくれなかったのか、俺には少しだけ理解できた。

俺に心配をかけたくなかったのだろう。彼女はいつも一人で抱え込んでいた。

誰にも相談できず、ずっと酷い仕打ちに耐えてきた彼女。

俺は彼女を守りたいと思った。



俺たちのクラスの担任の教師に相談してみた。

だが全く取り繕ってくれなかった。

俺だけじゃなく彼女が必死に訴えても、何の対処もしなかったのだ。

面倒だから。自分には関係ないから。そんな理由で教師は裏切った。

何が正義だ。何が平等だ。

助けてくれるんじゃなかったのか。相談一つ聞いてやることもしないのか。

最初から気づいていたなら人間失格。気づいていなかったのなら教師失格。

見て見ぬフリをする。そんな汚い大人になりたくなかった。


だから俺が彼女を守った。

俺が彼女を慰め、いじめっ子に立ち向かっていった。

いじめなんて最低だ。そこには人権も何もありゃしない。

人は人を見下し、差別する。そんな考えは間違っている。

彼女の気持ちを理解していたのは俺だけだった。




夏休みの出校日、彼女は学校にこなかった。

俺は異変に気づいた。

それは彼女の席に、彼女が座っていなかったからじゃない。






彼女の机の上に、花瓶に入った花が置かれていたことにだ。






担任は理由を話した。

赤信号で待っていた彼女は、横からぶつかってきた自転車にバランスを崩し、道路へ押し出されてしまった。

松葉杖は歩道に落ちたため、当然彼女は手が届かず、一人じゃ立てない。

そこへトラックがやってきて、彼女は逃げられなかった……ということだった。




ぶつかってきた自転車に乗っていたのは、いつも彼女をいじめていたグループの一人だった。

つまりそいつは、わざと彼女にぶつかり、事故を起こさせた。

だけどそいつは、まさかこんなことになるとは思っていなかったのだろう。

クラスメイトでもあるし席も近いので顔をちらりと見ると、真っ青になっていた。


だけど、俺は理解してしまった。

彼女は遠くから自転車がくるのが見えていたはずだ。

そいつが何かすることを知っていたのに避けなかったのは、きっと彼女が全てを諦めていたからなのだろう……。



つまり、彼女は、死ぬつもりだったのだ。


俺だけがそのことを知ってしまった。




どうして俺は彼女を助けることができなかったのだろう。

どうして俺は、彼女の考えを知ることができなかったのだろう…

俺は後悔し続けた。






あれから一年経った今でも、俺は彼女を想い続けている。

過ごしたのはたった数ヶ月という短い時間だった。

できるなら、もっと傍にいたかった。



ふと思い出すのは、出会ったばかりの日のこと。

まだ明るい光を瞳に灯し、少しだけ教室の中を見つめ。

偶然目が合った俺に、笑いかけてくれた。

美しい桜色の髪が印象的な君。もう会えない、手の届かない場所にいる存在。

教室で過ごした彼女との日々を、俺は生涯忘れることはないだろう。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

花弁の舞う日々【かなりあ荘】

あの日の記憶を忘れない。
皆さんこんにちは。かなりあ荘202号室のゆるりーです。

なんとなく考えてたらふっと思いついたので、結構雑です。
というか常に雑です。
これがくルカかどうか微妙なので、そのタグは外してみましたが、「これがくルカだり」と思った方はタグいじってください。
こんなのでよかったのでしょうか。一応シリアスにしてみました。
ちなみに、ちゃんとフィクションなのでご安心をw

私は普段いろいろ書いてまして。
自己解釈、パロディ、シリアス、コメディ、恋愛、ホラーみたいな何か(←)…いろいろ書いてます、ホント。
ファンタジーやほのぼのやバトルものは全然書けないのでご了承ください。
尊敬する方がピアプロ内にたくさんいらっしゃいます。
文才、ちょっと分けてくださいませんか?←

普段こんなの書いてますよってことで、マイページの作品URLをいくつか。
http://piapro.jp/t/viBO
http://piapro.jp/t/M6CN
http://piapro.jp/t/dprp
懐かしいなと思った3作品を載せました。
マイページとかコラボとか、他にもたくさん書いているので、よろしければアイコンをぽちっとお願いします。

かなりあ荘、どんどん進化させましょう!
Bボタンは押さないでくださいねw
よろしくお願いします!

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閲覧数:368

投稿日:2013/06/17 02:14:17

文字数:2,762文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • しるる

    しるる

    その他

    さすが!の一言のみ
    ルカちゃんの嬉しそうな笑顔と、一人の時の悲しい顔が容易に想像できる……
    なおかつ、がっくんの心情を主として展開しているから導入もしやすい……

    これを雑だというのなら、やはりあなどれないです!
    そして、考えがどことなく近い分、なぜか悔しいと感じる←

    【ゆるりーは、一人用冷蔵庫(10)を手に入れた!】

    2013/06/17 19:00:08

    • ゆるりー

      ゆるりー

      私が普段からこんな感じなんですよ。
      自分のことが少しでも入っていると、結構書きやすかったりするんですよね…
      忘れたくても忘れられない、心に傷を負ったあの日の記憶。
      そんなことを考え、思い出しながら書きました。

      ルカさんにとってつらいのは、頼れる存在が一人しかいなかったということ。
      親に相談することは怖い。教師も話をしてくれない。
      頼れるのは必然的に友達だけになるのですが、彼女の場合、事情をしっかり解ってくれるのはがっくん唯一人。
      たった一人の優しいひとを苦しめたくない。そんな思いから彼女は死を選んでしまう…
      それを知ってしまったからこそ、がっくんは後悔し続けているんじゃないかなと思います。

      私の文章が雑かどうかの簡単な見分け方ありますよw
      今回、改行が多いですよね?私は普段行をつめて書いているので、改行ばかりしているときは結構雑なんです←

      あなどれない?…あぁ、「あんたなんかどっかの冷蔵庫なくせばいいさ☆」の略ですね、わかります(どうしてそうなった
      嘘です。ありがとうございます、本当…憧れのしるるさんにそんなこと言っていただけるなんて思っていなかったので。頑張ります。
      考え近いんですか←

      まずは冷蔵庫ゲットですね。
      とりあえず豆腐を入れましょう(なんで

      2013/06/17 21:42:07

  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    る……ルカちゃああああああああああん!!
    とりあえずルカちゃんに自転車ぶつけてきた奴に毒リンゴを投げつけてきますね!!(やめろ

    ゆるってホントいろんなジャンル書いてるよね……
    ホント憧れるよ、そういうの……(´・ω・`)
    私のは、もう、なんか……うん……(´;ω;`)

    2013/06/17 17:17:35

    • ゆるりー

      ゆるりー

      あと大根ぶっかけたgiftも投げつけようね!!((

      大丈夫、妄想が止まらないだけさ←
      むしろ、あんまり書かないほうがいいよ?
      特にシリーズとかいっぱい書きすぎると、忙しくなって(^p^)になるからねww

      2013/06/17 17:41:11

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    BBBBBBBBBBBB……はっ!?び、Bボタンにつながる基盤が壊されているだとっ!?

    ゆるりーさんが泣けるクオリティを作る時は99.999%がくルカだからいいじゃないかなぁw
    まぁそれを決めるのは読者ではなかったりあったりだから自由。
    つーか雑でこのレベルなら十分じゃないかなw

    バトルの文才なら錆びついてるものがありますのでどうぞ(まさに外道
    その代りギャグと恋愛の文才を分けてくだs(まさに外道×2

    完結の兆しが見えない続き物を書き出してしまったのでアパートのレベルアップは任せた!←
    一応自分も単発は出すけどね……ww

    2013/06/17 15:25:16

    • ゆるりー

      ゆるりー

      おや? かなりあそうの ようすが…
      →BBBBBBBBBBBBB…何!?止められない!?
      進化しかできませんよwww

      高い確率ですねwwベストフレンドのときはがくルカではありませんでしたが。
      眠い中書いたので(寝ろ)結構雑なんですよw

      錆びてる…w
      深夜の変なテンションで書けば、ギャグはできあがるはずですよ←適当

      任された!←
      ターンドッグさんの単発ってかなりレアのような。

      2013/06/17 16:41:58

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