Len side.

~♪
~♪

スタジオの中に広がるハーモニー。

この重なりを聴いている時間が俺は一番好きだ。

家でも歌うことはあるのだが、やはりスタジオの方がよく響く。

~♪ ~♪"
~♪ ~♪

「リン、ここのフレーズまた音外したぞ」
「だ、だって難しいんだもん…」
「リンが主旋律じゃないか。俺はハモり担当だから、俺の方が音は取りにくいはずだぜ」
「だって…」

リンの大きな目に涙がたまっていく。

「わ、分かったよ。音取りやってやるから…。泣くなよ」
「うん!」

リンは笑顔をみせた。

俺の宝物だ。

この感情は、たとえ双子だろうと関係ないと思う。

「だから、リンは下がる傾向があるから、高めのイメージで歌うんだよ」
「~♪ ~♪ …こう?」

リンは俺の顔色をうかがうようにして覗き込んだ。

「うん。ばっちりだ。合わせてみるか」

~♪ ~♪
~♪ ~♪

顔を見合わせると、なんだかおかしくて、二人で笑った。

「おい、リン。レン。声の調子が良かったらレコーディングしようと思うんだが」
「分かりました」
「いいすよ」

~♪ ~♪
~♪ ~♪



「ただいまぁ。あ~疲れた」

リンは靴を脱ぎ捨ててリビングへ入っていった。

「ったく…」

俺はリンの脱ぎ捨てた靴と自分の靴をそろえ、リビングへ入っていった。

荷物を片付けると、俺は夕飯の準備に取り掛かった。



突然だが、俺には前世の記憶がある。

催眠術とかで出てきたりする、あれだ。

それも、自分の過去のように、鮮明に覚えている。

一度リンにも前世が記憶があるのか聞いてみたことがあるが、「あるわけないじゃん」と言われてしまった。

前世の俺は、リンの召使。リンは王女。

けれど、双子。

前世から俺たちは双子だった。


いや、前世の俺たちの『願いが叶った』だろうか。


物心ついた時から、俺は前世の記憶と願いが胸にあった。

そして、リンの口癖。

今は『おやつの時間だわ』ではなく、『おやつの時間だ!』だ。

毎日の楽しみの一つなのだろう。


前世の俺はよく『笑って』と言っていたが、現代は言わずとも俺たちは笑い合っている。


あの時と違って、何も苦しくない。



―――リリアンヌ、僕は君の『弟』だよ。君の弟で良かった。感謝しているよ。





――もしも生まれ変われるなら。


願ったのはいつの日だっただろうか。その願いは時を越え、叶えられた。

双子として生まれ、いつも笑い合って、幸せだ。



「届いてるよ」
「何が?」

リンは首をかしげる。

「なんでも無いよ」
「変なの」



また俺たちは『笑い合った』





End.


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

悪ノ娘と召使 Len side. 後編 【最終回】

あっさりな最終回。


次回から脱走姫様を再開します。


本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2916956
悪ノ娘

http://www.nicovideo.jp/watch/sm3133304
悪ノ召使


閲覧数:670

投稿日:2012/07/07 20:07:23

文字数:1,134文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました