愛とはこういう事を指すのだと思った。
輝いた瞳が好き。
艶やかな髪が愛しい。
華やかな笑顔が眩しい。
世界で一番、彼女が綺麗だ。

- - - - -

さっきから、正直泣きそうでたまらない。
気まぐれで久々に立ち寄った人界から、いつもだったら翼で帰るのに今日はちょっとしくじってしまって翼を傷つけてしまい、そのせいで飛べなくなってしまった。

「どうしよう・・・」

もう既に辺りの日は沈みかけて夕暮れ。
そろそろ人の家では母親が夕飯を作りながら家族の帰りを待ち詫びている時間だ。
あたしも家に帰りたいのにさっきから翼は痛みを訴えるなかりで飛ぶ力は出してくれそうにないし、だからと言って目指す場所は地続きな訳でもないので歩いて帰る訳にも行かない。
いくら翼が生えた存在である天使が紙上のみ存在している訳ではないとされている今でも珍しさはかわらないため、下手に怪我しているところを見つけられるととらえられてしまうとうろうろしてみるけど、地理感がない私はより深く道に迷うだけだ。
路地に家から漂ういい香りがお腹がしみた身にしみてわびしくなる。

「かいとぉ・・・」

頼りになる身近な存在を思い出して自らを奮い立たせようとするも、むしろそばにいて安心感がある状況と今の状況の差が浮き彫りにされて逆に不安が増すだけだった。
膝を抱えて瞳を押しつける。
より小さくなれば自分の身を守れる気がしたけど心細さは変わらなかった。
もうダメだ、泣いちゃう。

「どうしたの?」

大きく息を吸ったその時に頭の上から声がかけられた。
細い声だ。
多分少女だろう。
声から推測がついたので警戒もせず、そのままの体勢を維持する。
何より、だれにも泣きそうなところを見られたくなかった。
膝に押しつけていた瞳がそのままずらして更に深く膝を抱えた。
視界の隅にちらちらと黒いドレスが見に入る。

「迷子なの?」

問いに躊躇いながら頷く。

「帰れないの?」

やはり問われた言葉にもこくんと頷いた。
何故だかこの声の持ち主には素直に頷いても大丈夫なきがした。

「・・・そか、それは・・・さびしいね・・・」

胸に在る感情を的確に指し示した言葉に胸が震えた。
眼のふちにたまっていたしずくがぱたぱたと服に落ちて、真っ白の服が濡れて薄く灰色に染まる。

・・・うん、さびしい。
さびしいよ。
助けてかいと。

あたしは図星をさされたせいかもう涙腺が決壊した。
身を縮こまらせて本格的に泣き出したあたしの頭をふわりと何かが触れていった。

「あなたさえよければうちに来る?」
「・・・ふぇ?」

頭を通り過ぎて行ったものが翼にふれる。
少女の声に合わせてそれはゆっくりと翼の上を動いていった。

「あなた1人の面倒をみられるくらいの余裕はあるよ?」

言われた言葉が呑み込み切れずにぱっと少女を見上げた先には
「ねっ、決まり!」
と満開に咲き誇ったような笑顔があたしに向けられていた。
細い指先はあたしの頬を伝う涙をぬぐっている。
心臓がひとつだけ強くどくん、と鳴った。

「わたしはミクっていうの。あなたは?」
「り、リン・・・」
「リン? これからよろしくね!」

その少女・・・ミクはあたしに手を差し伸べた。
華やかな笑顔にまた胸が鳴る。







さっきから止まらない強い鼓動が
あたしにこれは恋だと知らせていた。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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【SLS】no title1【秘蜜-黒の誓い-】

SLS=スーパーロングストーリー

【鏡音リン・レン】秘蜜-黒の誓い-【オリジナル】
(http://www.nicovideo.jp/watch/sm10282629)
を見て衝動的に書いたもの。
この設定が素敵すぎる…!!

閲覧数:792

投稿日:2010/04/13 01:32:45

文字数:1,407文字

カテゴリ:小説

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