「あ、レン? もう今日の収録終わったんですか?」
リンから逃げ出して、居間に駆け込んだレンを出迎えたのは、初音ミクだった。
テーブルの上を片付けていた手を止めて、レンににっこりと笑いかけてくる。
「ミク姉…」
「先に片付けちゃいましたけど、お昼ご飯、今持って来ますね」
「…いや、いい…」
「レン?」
ミクがきょとんとした顔で聞いてくる。
「食欲ねえから…」
「夏バテですか?」
「…そんなとこ」
「んー…」
少し考える素振りを見せてから、ミクがぱんっと両手を打ち合わせた。
「それじゃ、特製ミックスジュース作って来ますね。ちょっと待ってて下さい」
「あ、や、いいって」
「良くありません」
手を振って断ろうとするレンに突き刺さるミクの目線。
「バテてても何かおなかに入れないと駄目です。私たち、歌を貰ったばかりなんですし」
「っ…」
レンが思わず顔をしかめる。それを見て、ミクは困ったように笑った。
「とりあえずちょっと待ってて下さい。すぐに持って来ますから」
特製というだけあって、ミクの作るミックスジュースはオリジナルレシピだ。
家族それぞれに対して少しずつ配分が違っていたりする。
レンのそれはバナナベース。かなりたっぷりとバナナを使った濃厚な味。
結局その味の誘惑に耐え切れず、レンはミクの目の前でそれを啜る羽目に陥っていた。
「美味しいですか?」
「ん…」
返すのは生返事。だが、いつものように美味しくて、レンはずるずると音を立ててジュースを啜る。
「少しは気分、晴れました?」
「…んえ?」
変な返答になってしまうのはレンがストローをくわえたままだからだ。
ミクが笑顔を浮かべて愛らしい声で爆弾を落とす。
「リンとの喧嘩の声、内容も含めて、全部聞こえてましたよ」
「ぶふっ?!」
こぼれないまでもごぽっと逆流するジュース。流石にレンはストローを口から外してむせ返る。
「っな、な…」
「あんなに大声出してたら聞こえます」
「う…っ」
言葉に詰まるレン。確かに全くもってその通りではある。
「本当にレンは、お兄ちゃんを尊敬してますね」
「っ…」
「でも、リンの言う通り、お兄ちゃんと同じように、なんて、歌わなくて良いと思いますよ」
「…けど…っ」
「はい?」
「…カイ兄、本当、すげー、からさ…」
穏やかな語調と優しい味のジュースに釣られて、本音が転がり落ちた。
「…高音キレーだし。低音響くし。中音部伸びるし。滑舌いーし。何かもう…かなうとこないじゃん、って…」
「比べられるのが怖いんですか?」
「それ以上にさ、…近付きたかった、んだ…」
真似れば比べられるだろうと分かっていても。身の丈に合わないことだとは承知していても。
…あの憧れる歌声に近付きたくて仕方がなかった。
お互いに言葉をなくす。レンは時折ストローでかき回しながらミックスジュースを飲み続けた。ずるずるという音がやけに響く。
「…私も、頑張らないと、ですね」
ミクがぽつりとこぼした言葉にレンが顔を上げる。
ミクも同じ歌を歌うのだ。
完全に同じではなくても、同じようなプレッシャーを感じていておかしくない。
「そいえば、ミク姉のが…きつくないか?」
「まあ、確かに、お姉ちゃんもリンもルカも居ますからね。でも、その分、たったひとつの重荷、ではないですから」
「…そ、か」
「それに、本来、比べるものじゃないですよね。音楽なんていうものは」
にこっとミクが笑う。その笑みと言葉。レンの中で少しだけ何かが解れた。
「私も頑張りますから、レンも頑張りましょう? 私も『レンの歌』が聴きたいです」
どんな歌になるんでしょうね、と夢を見るような瞳で言われて、レンは小さな声で、頑張る、としか答えられなかった。
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じょるじん
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ご意見・ご感想
西の風
ご意見・ご感想
>つんばるさん
メッセージ有難う御座いますっ。
ご無沙汰だなんてとんでもない! 書きたいものを書きたい時に書いている人間ですのでお気になさらずw
私にも優秀な上が居ますので、「優れた兄を持つ弟」を書いてみたくなったのです。青春只中、ふぁいとだレンきゅん。
でも、確かに、レンってブラコンを押し出して書かれること少ないですね…(指摘されて気付いた
ボカロ兄弟は全員お互いに仲良し兄弟であれば良いと思います。皆ブラコンシスコンで!(何
うきうきして頂けて光栄です! 続きも頑張りますねーっ。
2009/08/27 21:35:14
つんばる
ご意見・ご感想
こんにちは、ご無沙汰してて申し訳ないです、つんです!
レンくんメインのお話ですね! 自分は長子なのでわからないのですが、末子は無意識的に
長子(たち)に抑圧されて生きてるらしいので、レンきゅんがどうなっていくのか楽しみです!
とりあえず、レンきゅんのあからさまなブラコン設定なかなかないのでうきうきしてまs(蹴
次回も楽しみにしてますー!
2009/08/27 13:16:07