三人は家に帰ってきた。帰るなり、自分の部屋に閉じこもってしまうミク。
 「なあ、リン」
 「ミク姉、どうしようか」
 二人はミクが家を出る時から暗い様子だったのは分かっていた。二人はそれを理解した上で、ミクを明るくするために少々オーバーに振る舞っていたのだが、食事の時のミクの様子を見ると、リンとレンの行動が、あまり効果はあったとはいえない。
 「リン、今がその時じゃないか?」
 「私たちが、ミク姉を助けるって話ね?」
 「ああ、今のミク姉は、とてもじゃないけど見てられないぜ」
 「そうね、計画を実行しましょう」
 そういって、ミクの部屋のドアをノックする二人。
 「…どうぞ」
 そうミクからいわれ、部屋に入る二人。部屋の中では、明かりをつけずにベッドの上で体育座りをして、顔を膝につけているミクがいた。二人が入って来たのを見て、顔を上げる。気のせいかもしれないが、そんな中で見るミクは、普段よりやつれているように見える。
 「…二人とも、どうしたの…」
 「ミク姉、駄目だよ、部屋の明かりをつけないと」
 そういって明かりをつけるリン。
 「ねえ、ミク姉、今から俺たちが歌を歌うから、聴いて欲しいんだ」
 「良いけど…」
 そうミクがいうと、リンとレンはミクの前に立つ。そして、目を合わせて頷いて、呼吸を合わせて歌い出した。
 (この歌は…)
 その優しい歌い出しを聴いて、ミクが記憶を辿る、この歌は、リンとレンが歌う曲の中では、比較的新しい部類の曲だったはずだ。リンとレンの二人が歌う曲の中では、かなりヒットした部類に入る曲である。ミクはこの曲の作ったPのインタビューを聞いたことがある。確か、どんなに辛いことがあっても、未来はきっと明るいはずだから、その時まで希望を捨てずにいよう、という未来への希望を歌った歌だとPはいっていたはずだ。その前向きな歌詞は、多くの人の心を掴んでいる。事実、リンとレンが参加するライブで歌って欲しい曲を募集すると、かなりの希望が集まるらしく、その希望が通って、実際にライブで何度もリンとレンが歌った曲であり、さらにはこの曲をテーマ題材にしたマルチメディア作品が多く存在し、個人レベルでも絵や動画、二次創作作品として漫画や小説等が作り続けられている。
 そんなことをミクが考えていると、歌は終わったらしい。
 「ミク姉、マサ兄は大丈夫だよ」
 「そうよ、ミク姉も頑張らなきゃ」
 ミクを励ますようにいう二人。
 「リン、レン…」
 そういって、二人を抱き締めるミク。
 「二人とも、心配かけてごめんなさい…」
 「ミク姉、みんなを不安にさせないためには、笑顔じゃなきゃ駄目だよ」
 「そうよ。ミク姉が笑顔になれば、周囲のみんなは明るくなるわ」
 「そうね…。二人とも、ありがとう。私、頑張ってみる」
 そういうミクの表情は、少しであるが、かつての明るさを取り戻していた。

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初音ミクとパラダイムシフト2 2章12節

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投稿日:2017/02/22 23:09:44

文字数:1,206文字

カテゴリ:小説

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