＃１



私は入社二年目で、去年から一人暮らしをしている

私の勤める企業は、会社の規模自体は大きくはないのだが、大手との商談もそこそこあり、急成長を遂げている最中の企業である

そして、仕事柄、パソコンの知識はそれなりに持っていた





今日…こんなことがあった…

今年、新入社員として入社してきた後輩と、一緒に電車に乗った時のことだ…


「ねぇ、あなた、それ何を聞いているの？」


私は後輩が片耳にイアホンをしていることが気になっていた


「あ！すいません！学生の時の癖でして……はずしますね」


彼女はそういって、そそくさとイアホンをかばんにしまった


「あ、いや…そういう意味じゃなくて、何を聞いていたの？って意味だったのだけれど……別にいいわよ。私には気をつかわなくて」


私は彼女に嫌な奴だと思われたのではないかと心配になった


「これですか？これはボカロです」

「ぼかろ？」


私はその言葉を聞いたことがなかった


「あれ？先輩は知りませんか？ボーカロイド…」

「ぼーかろ…何？知らないわ。」


私はそれが流行りのバンド名かなんかだと思っていた


「ボーカロイドですよ！初音ミクとか…」

「あ！それはきいたことあるような…」

「それはPCのソフトウェアでして…人工音声を組み合わせて、自分でつくった曲とかを歌わせるんですよ」

「へぇ～面白そうね！あなたもその…歌わせてるの？」


私は少しだけボーカロイドというものに興味を持った


「あ、いえ…私は聞く専門です。いろんな動画サイトなんかに、他の人のつくったものが上がってるんですよ。今じゃ、CDも出ていますよ」

「CD！？そんなに有名なの？」

「はい、ある意味、一種のアーティストですよ」


私はそんなに有名なものを知らなかったのかと、驚いた


「確か、先輩は音大出身でしたよね？どうです？先輩もつくってみたら？」

「ええ！私には無理よ。」

「先輩はパソコンにも詳しいですし、きっとできますよ」

「……ま、考えておくわ」


○○駅～　○○駅～


「あ！私、ここで降りますので…お疲れ様でした」

「うん、お疲れ様」



彼女が電車を降りたあと、私はボーカロイドというものが少し気になっていた









私は帰り道にある電気屋によった

そして、私は店員にたずねる


「あの…ボーカロイドってありますか？」

「あ！ございますよ。こちらです」



店員に案内された先に、ずらっと並んだPCソフトの棚があった

そこには「初音ミク」を始め、様々な名前のボーカロイドがあった

私は「初音ミク」以外の言葉をきいたことがなかったので、迷わず「それ」を手にとった


しかし、私は値段を見て、やっぱりと思った

「初音ミク」もPCソフトだ

安いはずがない


私は「それ」を棚に戻すと、電気屋を後にしたのだった