~シーン変化:音楽室~

マスター「(今日は、みんな出払ってるのか。
      そういえば、いつもなら、練習してる時間なのにいないな、あいつ。)

マスター「(今日きたら、一緒に弾こう、ともう一度伝えよう。
      そしたら、俺は・・・。)

~シーン変化:暗闇の中~


ミク「ん・・・・。

ミク「うぅ・・・なんだか・・・めまいが・・・」

白服の男「博士、起きたようです・・・。」

白衣の老人「そうか・・・。」


(ツカツカとミクに近づき)

ミク「(・・・だれかくる・・・。)
   ・・れっ・・・それ以上ちかづかないで・・・。

白衣「・・・怖がる事はない・・・。

(少しずつ意識がはっきりしてくる)
ミク「・・・ここは・・・
   ・・・何も見えない・・・(どうしよう・・・。なんか怖いよ。先輩・・・。)

白衣「怯えるのも無理はない。
   私は、君を怖がらせるつもりはないから、
   これ以上は近づかない。

ミク「(声は・・・優しそうな感じ・・・。)

白衣「君はね・・・。怖がる必要はないんだ・・・。

ミク「あ、あなたは・・・だれなのっ。
   私をどうする・・・つもりなんですか・・・。

白衣「驚かしてすまない。もうあまり時間がなくてね・・・。
   何せ、計算が終了し、猶予が1日しかないことを
   人類が知ったのは、昨日だったのだよ。

白衣「手荒な真似をしてすまない。
   だが、君にはどうしてもきてもらわねばならなかった。

   もう一度、このクリプトンに。


ミク「・・・。言っている意味がよく・・・。
   クリプトンって、あの初音ミクの、クリプトン?

白衣「ああ・・・。君と、たまたま
   「そっくりな姿」を持つ、電子の歌姫を作り出した
   研究所。その東京支部だよ。

ミク「・・・よかった。ここは東京なのね。
   なら、私に何か、聞きたいこととかでもあるの?
   用事があるのなら、それが済めば、・・・うちに帰してくれる?

白衣「ああ、もちろんだ。

ミク「・・・。(・・・よかった・・・。やっぱりこの人悪い人ではないみたい・・・。)

白衣「だけどね、君には1つ、
   選択をしてもらいたいんだ。
   選択によっては、少しだけ、やってもらう事ができるかもしれない。

ミク「・・・。(なんだか雲行きが。。)

白衣「初音ミクの誕生以来、人類は飛躍的な進化を遂げた。
   ああ、ここでいうミクとは、Vocaloidの彼女だ。
   彼女は世界にちりばめられて、
   今も世界中の人をその歌声で癒している。

   目が見えなくても、身体が動かなくても。
   その声は聞こえるからね。

ミク「・・・ええ。彼女の声は、私も好き。
   でもそれと、私とどんな関係があるのよっ
   私・・・名前だけで、あんなに綺麗な声で歌えない・・・。

白衣「そうだね。君は彼女と同じ名前だが、Vocaloidの彼女は
   今でも人類の発展に貢献している。
   だが、君の歌声だけに、できる事もあるんだ・・・。
(少し悲しそうに。)

白衣「人類は彼女のおかげで、戦争をやめた。
   君の知っているのはここまでだろうね。
   とにかく人は争いをやめて、武器や兵器は処分された。
   その事が・・・。

白衣「いいかい。ショックを受けないで聞いてほしい。
   地球には、もうすぐ隕石が激突するんだ。

ミク「・・・。え・・・。(何をいっているんだろう)

白衣「隕石が近づいている事自体はわかっていた。
   しかしその可能性は10%程度、確率で言うと気の遠くなるような数字だよ・・・。
   数学者や観測者は全然安心していたし、その程度なら、他にも色々言われるような事象はあった。

   しかし2ヶ月前、隕石の軌道上に何らかのガスの集合体が現れた。
   隕石はそのままガスの中を通過したが、
   隕石の内部にガスのコアをとりこみ、外面にそのガスが充満してしまったんだ。

ミク「何をいってるのか・・・意味がわからないよ・・・。

白衣「わからないだろうが、このまま話すよ。話し下手だから巧く説明できないんだが。
   我慢してきいてくれ。
   隕石は、そのガスを通過した際にほんのわずかに軌道を変えた。

   その軌道の変化は角度で言ったら、わずかなものだったが、
   角度変化による地球激突確率をも変化させた。
   そう。9割以上の確率で地球に激突する事となったんだよ。

   それが判明してすぐにスーパーMICによる軌道解析や解決方法を模索するとともに
   激突時の被害予想も行われた。

   被害予想は燦燦たるありさまだった。
   そのガスをまとったまま激突した場合、成層圏での大気摩擦の影響は極微小となり、
   その勢いと質度を保ったまま地球に激突する。つまり・・・

ミク「まさか・・・。

白衣「そうだ。ミク・・・。人類は終わりなんだ。
   人類だけではなく、地球も。おそらく影も残さず塵と化し、
   そのガスだけが残るだろう・・・。

ミク「そんな・・・
   そんなこと突然いわれても、わけがわからないよ!

白衣「そうだろうね。でもねミク。
   時間がないんだ。だから我々はこうやって
   君が嫌がるのも承知でここに連れてきて、話しをしている。

ミク「その隕石・・・壊せたりはしないの?

白衣「それも考えたよ。人類は戦争を止め兵器を捨てたが、
   わずかな時間でも、今の技術なら作る事ができる。
   でも、だめだったんだ。

   詳しくは話さないが、破壊した場合、
   隕石自体は破壊できるだろうが、そのガスが、
   隕石それ自体を分解し吸収。ガスを大きくするだけなんだ。
   また、質量を伴ったそのガスが地球にぶつかってしまうと・・・。

ミク「・・・どうなるっていうの・・・。

白衣「地球を・・・、そのガスが包み込む。
   人、いや生物の生きていけない世界のできあがりだ。

ミク「・・・。

白衣「だから、破壊では、だめなんだ。
   そのガスに相反しても、破壊行為を行ってしまうと膨張する。
   かといって、あの質量の隕石の軌跡を変えるには、触れねばならない。
   しかし触れてしまうと、膨張し続けている隕石は、破壊されてしまうだろう・・・。
   解決が見出せず、抜け出せないループの中ということだ。

ミク「なんだっていうの・・・。
   それを私に聞かされても・・・。どうしろっていうの。

白衣「全世界39台のスーパーMicが導きだした、答えは1つだけだったんだよ。
   宇宙空間で、物理的に接触せず、力を加えられるものがあれば。

   それは、この全世界で1つしかなかった。

      
      
   君の歌声だ。
       World is Yours
   M.I.Cは「相反する世界」と名づけた。

ミク「何をしろっていうの・・・。

白衣「ただ、これは君に強制できる事柄ではない。
   君は只の、女の子なのだから。

   だから、ひとまず全てを聞かせている。
   そして考えて欲しい。


   どうしたいかをね・・・。

ミク「・・・。そんなのきm

白衣「いや、まだだよ。
   君は全てを聞かなくてはいけない。

   君の歌声はある研究機関によって既に調べられている。
   調べられたタイミングはここでは伝えないが、
   何が起きるのか、具体的に説明しよう。

   宇宙空間では通常「音」は発生しない。空気がないからだ。
   空気の振動なしに、波形である「音」は出ないのだ。
   だが、君の歌声は・・・。
   宇宙空間で、波形ではない「何か」を出力する。

ミク「・・・なんか調べられてるってやだな。
   勝手に!人の声を・・・。

白衣「・・・。それは、物質を揺さぶり、動かす力だった。
   しかも、それは物理的に触れてはいないから、「破壊」は起きない。
   触れてないのに、「移動」させる事ができるんだ・・・。


   それを最大限に出力させれば、軌道を変化させる事ができうるんだ。極低確率だがね。
   それが1つの選択肢。
   だが、これは、君にとっては残酷な選択肢だ。

   最大限に出力する、それはつまり、大きな力を出さなければならない。
   しかしそれはスピーカーなど、出力を変化させる機械を通せない。

   だから、君自身が、「出す」しかないんだが、
   それは最大出力でようやく可能性が出る、くらいの力となる。
   だが最大出力が意味するのは、君の限界を超える事であり、
   超えた場合・・・自我・身体どちらも崩壊する。
   おそらく、出し続けた声の力によって、君は命を失うだろう・・・。

ミク「・・・。(え、今・・・なんて・・・)

白衣「だから、みんなに育まれ、愛され、望まれて生まれた君に、
   世界はそんなことを、それを、望んではいないんだ。

だけどコレガ1ツノセンタクシナンダヨ・・・・

(意識が少しずつ遠のいていく・・・)


ノコルセンタクシハ・・・
キミト・・・キミノタイセツナヒトヲ・・・
コノチキュウカラ、ダッシュツサセルコト・・・

(もうあまり、声がきこえなくなってきている・・・)

ウチュウカイハツモキンシサレテヒサシイガ
1セキダケツクルコトガデキタ ウ・・ウセ・・ヨ

キミト・・・イセ・・ナヒト、フタ・・ブンノ・・・・(ぷっ)

(暗闇)

{シーン変化:音楽室夕焼け}

マスター「あいつ・・・結局こなかったな。」


マスター「(どこか体調でも崩したんだろうか、
      そういえば昨日顔が赤かった。)

マスター「(・・・約束は、先になりそうか。)


{シーン変化:・・・深層心理]

センパイ・・・

・・・・ワタシ・・・ドウスレバ・・・


(ヴァイオリンの音)

ア・・・コノ・・音・・・

ヤサシイ・・・スキ・・・

キモチ・・・ツタワルオト・・・

(ビオラの音)

コレハ・・・ワタシノオト・・・

スキヲツタエタイ・・・


ワタシノココロ・・・



(波形を見ている博士)

白服「この波形・・・博士・・・これ・・・。


白衣「ああ・・・あの若者・・・、
    World is Mine
   「魅了される世界」に唯一影響のない、「彼」のそばに
   おいた効果があったのかもしれん。

白服「皮肉なものですね・・・。
   世界が魅了されている中、たった一人、魅了されずに育った。
   危険視していた「彼」が
   彼女の隠されたチカラを引き出すなんて・・・。

白衣「ああ・・・。彼女のチカラ、
   偶然だったが、無重力空間でのメンテナンスの際、
   あんな秘められたチカラが出るとは・・・。

   Vocaloidを作った時も、予想はしていなかった。   
   アンドロイド化の時に少しだけVoiceデータをいじり、
   本人には自分の声がミクの声には聞こえないように調整しただけだったのだが、
   こんな結果をもたらすとはな。

黒服「でも、私はさっき博士もおっしゃっていましたが、
   ミクさんには、脱出してほしい。
   本当に、彼女の歌声で、何百万人というヒトが、救われたんだ。
   現代に生きる、女神が、
   ガスとともに燃え尽きる、だなんて・・・。そんな姿は・・・。

白衣「君は本当にみっくみくだな。

黒服「我ながら、いつも涙がでてくるのです。
   この奇跡の歌声を聴いていると。   

白衣「だが、君の言い分は世界の言い分だろう。
   街を行く、だれもがそう答える。
   そして実際に集計結果も出ている。
   ・・・世界は自身の存続よりも、世界を助けてくれた、
   彼女に生きてほしい・・・と。

   あれから、人はそれほどまでに他人に優しくなる事ができたんだ・・・。
   彼女のおかげで・・・。

   だから、それほどの影響力を持つ、彼女がいなくなったとき、
   その後、人類はどうなってしまうのか・・・。

   世界は既に選択を彼女に・・・初音ミクにゆだねている・・・。

   実際のところ、みんなが望む風になればいいのだが。

白服「なら、博士、もう少しおどろおどろしく
   誘導できるように伝えればいいのに。

白衣「だから、口下手なんだと何回いわせる。
   私は製作者だ。口でいうよりも、手を、頭を動かすべきなんだ。


   それに・・・私は「親」として彼女の意志を尊重したい・・・。


白服「そういえば、製作者ということで質問しますが、
   他のVocaloid2ベースのコード「R/R」や「LK」も
   アンドロイド化には成功している、と聞きます。

   彼女たちにも同様のチカラがあるんでしょうか?

白衣「わからんな。なにせ予想外の出来事だった。
   元々試作ミクをベースに作られているから、
   色々と状況は異なる。

   隕石を軌道から、動かす、という選択を選んだ場合、
   阻止限界点は近い。
   試している時間もないし、な。

白衣「だが、彼女たちは、ミクを姉と思っている節があるから、
   もし、阻止の選択をしたら、悲しむだろうな・・・。

黒服「心中・・・お察しします・・・。

白服「博士、脳波がやや正常に、きっと意識が戻ります。


白衣「なるほど・・・では、
   選んでもらおうか。世界の歌姫に。
   人類の未来をかけて・・・。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

[小説]隕石を回避する方法思いついた。(その2)

前回の続きから。
突如さらわれた彼女がどうなるのか?

という所で分けてみたw

閲覧数:141

投稿日:2010/07/31 22:22:07

文字数:5,657文字

カテゴリ:小説

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