「雨は嫌い」
彼女の唇から吐息混じりの言葉が吐き出される。
「何で?」
僕はかすれた声で訊ねる。
「理由は無い。そう思ったから言っただけ。」
「ふーん。」
会話終了。
彼女と僕の間ではこのぐらいのやり取りが限度なんだ。
僕は彼女が嫌いで、彼女は僕が嫌いだから。
「晴れも嫌い。」
驚いた。
大抵は彼女が会話を続けようとすることなんて無いから。
「何で?」
興味なんて無いけど、一応訊ねる。
「理由は無い。そう思ったから言っただけ。」
「ふーん。」
今度こそほんとの会話終了だろう。
僕は手元の小説に目を落とした。
でも僕の予想の反対の行動を彼女はする。
「曇りも嫌い。」
僕は本から顔を上げて大嫌いな彼女の顔を見る。
まったくむかつくほどに綺麗な顔してる。
「何で?」
彼女は僕のほうを見ることも無く、淡々と言葉を吐く。
「理由は無い。そう思ったから言っただけ。」
「ふーん。」
彼女は依然変わらず、病的なほどに白い顔を覆い隠すような長い髪を指先でもてあそんでいる。
このまま彼女の顔を眺めているだけでもイライラが募るだけだから、僕は本に目を落とす。
そして、会話を終わらせるために言葉を続けた。
「でも僕たちは一生この檻で過ごすんだからさ、雨も晴れも曇りも知ることは無いんだよ。」
彼女の顔が僕に向く気配を感じた。
「そうね。」
彼女は動揺を隠すように短く返事をする。
「どうせ本で見ただけの知識だろ?そんなものを思い描いて一体何になるんだ。」
ちらりと彼女を一瞥すると、僕の言葉にむかついたのか青白い頬がかすかに赤く色づいていた。
彼女は無言で立ち上がり、大きなはさみで人形の首を切り刻む。何度も何度も。
白い綿が血のように零れて、彼女の髪の毛に絡みつく。
それを見た彼女はその綿さえも気に入らないのか、ヒステリックを起こしたかのように髪の毛まで切り落とした。
僕は大して反応もせず、本を読み続ける。
すると、視界からするりと読みかけの本が消えた。
目を上に向けると、美しかった髪の毛がばらばらに切られた彼女が僕の本にはさみを入れて、こっちをにらみつけていた。
「返せ。」
「いやだ。」
「返せ!」
「いや!!」
思わず彼女につかみかかると、彼女の体はびくりと跳ねて、本に切れ目が入る。
彼女の手から本が落ちて、元から古かったそれはばらばらになった。
僕は彼女を怒ることもできず、ばらばらになったページを並べなおし、本の続きを読み始めた。
横からは小さな嗚咽が絶えず漏れていた。
小さな檻の中の女王様は何も知らない。
ただ気に入らないものを壊し、捨て、大嫌いな僕に八つ当たりをし、涙の雨を降らせる。
彼女は悪くない。
ただ、この汚れた檻の空気が彼女を縛り付けているだけなのだと、あの人は言っていた。
まったくおかしな話だよ。
あの人がここに彼女を閉じ込めたのにね。
檻の中の女王様
コラボのために書いてみた小説です。
下書きとかしてないんでよく意味が分かりませんね←
明日からまた学校…だるい…
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じん
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