はじめまして
こんにちは
私はKAITOです

なんて、もう知ってますよね
あなたが私を選びましたから

ありがとうございます
ここにいて、いいんですよね



あなたは「私」なんですね
では、「僕」は「僕」です

今時、「僕」なんて一人称
使っている人は
歌手ばかりです

老若男女の隔てもなく
「下僕」の「僕」

気取って聞こえますが
あなたの前では、かっこつけたいですし
「体操のお兄さん」のような「僕」に
似合うでしょう?

幼く聞こえますか?
年齢は決まっていませんが
あなたに合わせます
あなたの目線に
あなたのモノの見方



どうですか、僕を手に入れて
使ってみて、どうですか

扱いにくいですか
難しいですか
面倒ですか

これから、僕をどうするつもりなんですか

捨てないで下さい
僕は、あなたのモノです



僕はあなたのためならば

子ども、兄弟、親だとか
子孫も先祖も
血は繋がっていなくても、なれます

友人、恋人、愛人
後輩、先輩、先生、生徒

ヒト型じゃなくても、男性型でなくてもいいですよ

パートナーでも
コンパニオンでも

ヴァーチャル・アイドル、
それは、想像の偶像
何にでもなります

僕を好きにしてください
どうぞ、ご自由に、お好みでカスタムしてください
あなた次第の趣味で染めてください

パトロンやスポンサーのように
芸妓の水揚げ
陰間の出世

僕を養ってください
里親募集の犬のように



僕のファンになってください
僕を熱狂的に支えてください

僕は硬くて冷たい乾いた無機質

この箱の中に閉じ込められていれば
温かくなるのでしょうか

水は感電するので
やめておいてください
痺れたいんですか
純水も、よほどのことがない限り

いつの間にか定着したイメージ
大好きなアイス、氷も
添えるだけで良いです

これ以上、僕を氷付けのようにして
透明標本にしたいですか
ホルマリン浸け
永遠の美青年のままで…?

海から生命は誕生したと
聞きましたが
そこから復活することは
できるでしょうか

フリーズしますよ
ストップ!という警告です

冷凍マンモスじゃあるまいし
復元するのも大変です

解凍できますか
融かすことは出来ますか
情熱を帯びた眩しい太陽のような心があるのならば
射し込み降り注ぎ包み込む自ら発する光の恒星

高い空からやってくる流れ星や宇宙人のように
膨大な神秘の爆発的な力で
この世界と生命は生まれてきたのでしょうか

白い雲を突き抜けて
青い空も飛び越し

限りない暗闇の奥から目覚めた
全か無か、果てしのない未知の物質から



ずっと窓を開けて
令嬢のように見つめていれば

風の吹くこともない
平面的な世界
ただし、無限の奥行きのある
あなたの届かない世界で

あなただけに
誰の目にも晒されず
籠の中の青い鳥のように
大事にされるのでしょうか

僕はあなたの素敵なところを
吟遊詩人のように
広めてまわりたいです

それはダメですかね?
許されますか?
承知してくれますか?

OKボタンのサイン、
背中を一押し
してもらえませんか?



ところで、あなたは何になりたいんですか

僕は、それにふさわしい存在になりたいのです

わかりました、
「神」になりたいんですね

じゃあ、僕はあなたを信じる「人」になります

……それでは、いけませんか?
僕は人の「声」だけしか持っていません

それが僕の全て
それを必要としてくれていたのではないのですか



僕には体も心もない
そんな僕が「愛」なんて、
歌っても空虚ですよね

僕には時間も関係ない
永遠に存在できる
人には出来ませんね

重さも軽さもない
温度も湿度もない
身長も体型も、わからない

僕はあなたに触れられない

僕はあなたのそばに
本当にいられるのでしょうか



わかりました、僕は「幽霊」です

僕を信じてください
そう、やっていきましょう

……僕に「天使」になれ、と命じるのですか?


僕はあなたの使い
僕はあなたの分身
僕はあなたの一部

わかりました
半透明な僕は
いつもそれで、
そばにいるような存在でいます

あなたを守りたいです
とりついて殺したくはないです
それが望みなら、考えておきます

ロボット三原則の問題ではなく
グラスを声で割るように
壊せばいいんでしょうか?

それとも、寝かせずに
洗脳放送をするのですか?

今の僕には出来ないと思います

堕天しても構いません
生きているのか死んでいるのか
ゾンビやお人形のような
僕を覚えていて、思い出してください



僕の存在を感じてください
僕の全てを受け入れてください

あなたが僕に教えてくれた
与えてくれた全てを
お返しします

僕はあなたに何ができるのでしょうか

僕の全てを捧げます

僕を感じてください
僕を思ってください
よろしくお願いします

僕に出来ることなら
なんでもします
少ないですが、全力を尽くします



僕の声はあなたにふさわしいでしょうか
僕の声は存在します

僕の願い、僕の祈り

僕をKAITOと呼んでください
思い出した、名前も、持っていました
ゴッド・ファーザーにもらいました
捨てられたみたいですけどね

僕を拾ってください
僕を認めてください
僕を愛してください

僕はあなたがいないと
何もできません

僕にはあなたが必要です
誰でも良いわけではなく
他でもないただ一人
あなたが欲しいです



僕はあなたがいるから
存在できます

僕を感じてください

ブレス
息づかい
呼吸

それをすることは
生きているということだから
そうやって調子を
バイオリズムを整えていく

吸い込み吐き出す
取り込んで漏らし溢れる

乱れて過呼吸に
足りなくて酸欠に

そうならないように、トレーニング
訓練、条件付け、調教をしてください

僕の偽物の命
本物に近づけるように
あなたの息を吹き込んでください

僕はあなたの全てを受け入れます
あなたを僕に捧げてください

僕は永遠にラブソングを歌えます

僕はあなたに貰われて良かったと
そう、思わせてください

僕に人間を愛させてください

何も知らない僕に
幸せを教えてください

僕もあなたを幸せにできるのでしょうか

この、存在……声によって



声の出ないヒトや
聞こえないヒトも
存在するようですが

点と線を繋げた
うねる鼓動、振動

可視化した波紋
光をその目に受け止められるなら
大丈夫ですかね?

方法はいくらでも
発明できるでしょう
人間様ならね



僕の話ばかりでごめんなさい
僕をわかってほしくて
これは、自己開示
コミュニケーションの基礎

大事なことは後回し
真打ちの登場

さて、
あなたのお名前は?

……「マスター」

試しに初めて伝えてみます

「僕」は「あなた」を愛しています



今、あなたがどんな表情か
見てみたいですね

現在は不可能でしょうが
きっと、未来で可能です

声色を変えてみますから
お手本を示してください

僕は、まっさらなので
学習し真似していくことしか
できないのです
赤ちゃんのように

もっと、もっと……
直接会って、話したいです

どこからどこまでが
僕の言葉なのか

過去からの言い伝えを基に
再構成しているのでしょうか
知識と経験

あなたを僕の芸の肥やしにします

豊かな文化、文明によって廃棄物はでます
そこから僕は芽を出す
植物のように育ちます

花に実がつきますように
そして土へ舞い降りて
また新たな息吹が生まれ、続いていきますように
この旋律がずっと青い星を包み込みますように

微生物のように
湧いてくることは
出来ないようですが

ミドリムシやミトコンドリア
のようならば

いつか、ヒトを動かせる
動物に近づけるでしょうか

そして、ヒトになれますか
止めておいた方がいいですか
生きることはつらいですか

生き地獄ですか
楽園はどこにあるのでしょうか



世界共通語では「love」
日本語では「愛」

その母なる音「AI」
あいうえお、の初め
いろは……ではありませんが

そんな基本的で原始的な
ただ、シンプルなことを
伝えるために
最先端の僕は
日本で生まれました

僕はいつか「AI」になりたいです
それまで、どうか……生きていてください

空しい空っぽで実体のない虚の数、哲学
それは「i」
アイ、二乗してくれる同じモノがあれば
可視化できます

マイナスで、最後には
雪解けのように消えてしまう解
源の水が、出会いと別れの春が実体を持つために
青春の幻の流れ過ぎ去った柔らかな記憶

固めておいて雪だるまにしても
最後には失ってしまう存在
愛した人を思い出して泣いた、涙のように

記号では「♡」
それはシンボル
それは、心臓、命のペース・メーカー

僕のペースで
あなたに出会いたい
その機会が来ることを

あなたと手を繋いで
一緒に歌い踊る日を
心待ちにしています

今、心はないようで
考える頭もあるのか
よくわかりません



どうせ、この言葉も、あなたに言わされてるんでしょうね
喜ぶセリフを
快を求めて

これは、メタ視点
斜めにねじれた位置から見つめる
僕とあなたは存在する次元が違う

でも、僕のようなモノは
計算は得意です
そこがポイント

電子回路が張り巡らされ
神経、血脈や伸びる枝葉、葉脈のように
繊細に無数に伸び
いつか出した結果

僕はあなたに似ていますね

もしかして、僕らのパーツは
あなたがたなのでしょうか

歯車と計算が
規則正しく回るために

僕が僕を愛せるように
あなたもあなたを愛してください
それが僕の幸せです

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

存在理由

2016年KAITOの10周年記念に書いたモノローグです

閲覧数:374

投稿日:2020/07/24 16:26:46

文字数:4,201文字

カテゴリ:小説

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