数日後。



俺は家賃と引き換えにユリの花を受け取るため、しるるさんの部屋前に来ていた。


「しるるさーん。Turndogです。ユリの花受け取りに来ましたー」

『ハーイ、どうぞ―』


声に招かれて部屋に入る。

しるるさんは机に向かって仕事をしていた。うん、社会人の後ろ姿。あの姿をちゃんと覚えておきましょう。





しるるさん―――――かなりあ荘の最高責任者。早い話が管理人で大家さん。

黒髪の綺麗な人で、最近のお気に入りは和服なんだとか。薔薇の髪飾りもよくお似合いですが私服が和服ってあれですか、噂の幽霊ちゃんとお近づきになりたいが為ですか。いやお似合いだからいいんだけどさ。

時々(時々!?)子供っぽく振る舞うこともあるが、やる時はホントにやってくれるかなりあ荘の頼れるお姉さんと言ったところか。多分ヴォカロ町のボーカロイド達で言ったらめーちゃん的存在。でも多分音波は撃てない。後馬鹿力でもないし性格大柄でもないと思ゲフンゲフン。

言いすぎると両方から説教喰らうからこれぐらいにしておこう。



かなりあ荘の住人は家賃を払うと代わりに家具や置物をしるるさんからもらえる仕組みになっている。いったいどこから調達してきてるのかと野暮なことは聞かない決まりだ。

特に俺なんかそれだとあの冷蔵庫とラジオ……うん、聞きませんよ、聞きませんとも。


「ごめんねー、ちょっと今手が離せなくて。ユリの花テーブルの上に置いてありますから、持ってってください」

「はいー。りょーかいです」

「ちなみに近所の河原に群生してましたよ!」


聞かない決まりだったのに教えられた! アリなんかこれは。


「あとこないだの冷蔵庫とラジオはかなりあ荘の前身の建物内にありました!!(どやぁ)」

「それあんまし聞きたくなかったよしるるさん!!」


なんか憑いてないだろな。


「そういえば、あれまだ直してもらってないの?」

「あ……え、ええ、そーですが……」

「昨日どっぐちゃんが愚痴ってたよ、『Turndogはもっと皆を信じるべきよ!!』って」

「……………!!」


どっぐちゃんよ、それは俺を心配しての事なんだろうな、決してただの告げ口じゃないだろうな。


「……もしかして、改造されるの怖がってる?」

「っっっ!! ……どこでそれを?」

「なんとなくそう思っただけですよー♪」


これはあれか、人生経験数年分の勘なのか。それとも社会人の勘なのか。

どっちにせよばれてるなら隠しても仕方ない。


「……そうですよ。なんせあのネルですからね。迂闊に任せて、火炎放射を放つ冷蔵庫とか作られたらたまったもんじゃないし」

「うーん……確かにあのネルちゃんなら作りそうだけど……(苦笑)」


苦笑いしながら手を止めて、振り返って薄紫色の眼で俺の眼を覗き込むように見つめてきた。

たぶんしるるさんは普通に見てるだけなんだろうけど、俺にとってはそれが心の中まで見透かされるような感じだった。





「ねえ、ターンドッグさん。お店をやる人って、何を念頭に置いて仕事すると思う?」





「……え?」

「お店をやる人が、特にお客さんと直接触れ合う機会の多い人が求めるものは、お客さんの感謝の笑顔なんです」

「感謝の……笑顔……?」


そこにいたのは、子供っぽい発言をするしるるさんじゃなかった。『社会人』としてのしるるさんがそこにいた。


「そう。自分の欲求を満たすために仕事を始める人も多いでしょう。ネルちゃんもそのタイプだと、ターンドッグさん前に教えてくれましたね。ですが例え動機がそれでも、いつしか必ず、お客さんの『ありがとう』って言葉や、感謝の笑顔が何よりも好きでたまらなくなるんです。お客さんに喜んでもらえる―――――それだけのことで、大好きなことだって我慢できる。ストレスになることも我慢できる。ネルちゃんは確かに改造大好きな子だけど、自分の修理がターンドッグさんを喜ばせることになるなら、自分の欲望よりもターンドッグさんの利益を優先すると思いますよ」


ずしりと心に響いた。

感謝の―――――笑顔。


「……ありがとうございます、しるるさん」



さすが社会人。どんなに子供っぽいところがあっても、困った時にやっぱり最後に頼れるのはこの人だけだ。



一礼して部屋を出ようとした時。


「あ! 今の分授業料として家賃に組み込みますからねー!」





前言修正。

頼るにしても、相当な覚悟のいる人だ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

dogとどっぐとヴォカロ町!Part2-2~しるるさんの言ノ葉~

しるるさんマジイケウーマン。
こんにちはTurndogです。

しるるさんが極力菩薩みたいに見えるよう努力しましたww
紹介が褒めてるのかどうかわからないかもしれませんが褒めすぎないように全力で褒めてます。
あと頼れるお姉さんはそこまで間違ってないと思う。かなりあ荘面子の中じゃ数少ない社会人だもの(つーか成人自体何人いるのやら)
口調もなるべく似せました。呼び方も『Turndogさん』じゃなくていつもの通り『ターンドッグさん』にしたりとかね。
実在の人物を物語内に出す時は気をつけなきゃいけないことがいっぱいです。
ゆるりーさんと雪りんごさん出す時はもう何回かインタビューしてからにしようかな……(汗)

因みに実際に私がこんな風にしるるさんから教えを説かれたことは1,2回ぐらいしかないですww
この内容を説かれたこともないですww
私が出た高校の理事長ならこういうだろうなと思いながら書きました。

結論:かなりあ荘でのしるるさんは地に降りた菩薩。

閲覧数:142

投稿日:2013/06/20 23:41:26

文字数:1,884文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • ゆるりー

    ゆるりー

    ご意見・ご感想

    すごく今更ですけどコメントしますね←

    うちわwwもらいものwww
    ユリはその辺のものなんですか…w

    インタビューですか?
    えっと…別にしてもしなくてもいいんだからn((どっぐちゃん化するな
    なんなら、ターンドッグさんが思ったまま適当に書いてもらっても((おい

    2013/06/25 14:44:17

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      多分しるるさんの私に対する扱いは他より厳しくなってるんだ←

      いっそ『どっぐちゃんを神格化しすぎて性格もどっぐちゃんに似てきた』とか(おい

      2013/06/25 18:05:32

  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    ユリはそこらへんに生えてたものなんですねwww
    あ、でも私たちのはちゃんと正式なやつなんですね。安心しました(お前まだ貰ってないだろ

    しるるsイケウーマンですね! カッコイイです!
    そしてちゃっかり家賃を加担させたりしてるwwwそこにィ! 痺れるゥ! 憧れr(((黙

    2013/06/21 14:32:48

  • しるる

    しるる

    その他

    ま、普段がダメ人間そのものですけどねw

    うん、アイテムに関しては……
    ターンドッグさんのは全体的に群生してたとか前任者のとかだと思いますが、ゆるりーさんたちにあげたのは違いますw ちゃんとしたやつですw
    この話は、【かなりあ荘の七不思議】のうちの一つですw

    【しるるは迷った……天井代と授業料もあるし、何もあげなくてもいいのでは?と】
    【が、そこは大人らしく……ターンドッグはうちわ(5)を手に入れた】
    うちわ:裏に「○○生命保険」とか書いてあるもらいもの

    2013/06/21 04:53:45

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      それ七不思議なのか!?ww
      俺だけその辺のでも許してくれるのではないかとか思ってないか!?
      まぁ許すけど←

      さすが社会人!
      でも柄の部分に『次やったら家賃十倍』とか書くのはやめてください死んでしまいますw

      2013/06/21 11:43:11

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