翌日。この日はミクは久しぶりに休みだった。ミクは部屋にこもって、考え事をしていた。
 (…もう、お互いに今の地位を全てを捨てて、雅彦さんと駆け落ちして、どこかで2人で新たな生活を始めるしか無いのかしら?)
 ミクは朝、朝食を食べる為に部屋を出て以降は、ずっと自分の部屋の中でその事について考えていたのだ。確かに雅彦と結ばれる為には、世間が2人の仲を認めないのであれば、駆け落ちしないと結ばれる事は難しい様に考えられた。しかし、この事にも問題があった。
 (でも、私が暮らしていく為には、定期的に検査をしないといけない、それから逃れる事は出来るかしら?)
 ミクを始めとするボーカロイドは、アンドロイドの例に漏れず、定期検査が義務づけられている。ミクの場合、常に最大のパフォーマンスが出せる様に万全を期する為、3ヶ月に1回は検査を受けているが、これをどうするかという問題があった。頻度を落として、普通のボーカロイドと同等の頻度で受けるとしても、年1回は受ける必要がある。ミクにとって重要な事は、検査の際にアンドロイドの各個体に割り振られたIDを確認されるので、駆け落ちして行方をくらましたとしても、検査の時にIDを確認される事で、どこにいるか気付かれてしまう。そうなればどうなるかは自明の理だ。
 (定期検査を避ければ…でも、それだと問題が起きてしまうわ)
 身元をばれる事を避ける為には検査を受けないと言う選択肢を取る必要が出てくるが、そうすると、今度はパーツが動かなくなるリスクを考えなければならない。実際の所、法律で義務付けられている年1回の検査と言うのは、安全を見込んだ頻度であり、実際はもっと頻度を下げても大丈夫かもしれない。しかし、検査を受けなければ、時間と共にパーツが動かなくなる可能性が増大する。リスクはそれだけではない。検査を受けないのは法律違反なので、雅彦が逮捕される可能性も出てくる。
  (私がずっと家にこもっていれば、雅彦さんが逮捕される可能性は少なくなるわ。パーツの件に関しては、個人で何とかする必要があるわね)
 検査を避けて稼働率を保持する為には、個人で定期的にメンテナンスをすれば良いのだが、メンテナンスにはそれなりの設備が必要であり、費用もスペースも必要で、それらを個人で全て用意するのは難しい。更に言えば、必要に応じて部品を交換する必要が出てくる。部品は個人が入手が容易な物もあるが、そうでない物も有り、完全にメンテナンスするのは容易ではない。特にミク達は特殊仕様なので、一般的に流通していない部品も多いのだ。他にも、メンテナンスするにはある程度の技量も必要である。それを一大学生、しかもアンドロイドのハードウェアをいじった経験の少ない雅彦に期待すると言うのは、いささか酷な話である。
 (障害は多いわね…。でも、今の私達にはこれしか無いわ。だから、何とか解決する方法を考えないと)
 ミクはそう思い、また考えに没頭していった。

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初音ミクとパラダイムシフト1 3章13節

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投稿日:2016/10/25 23:21:20

文字数:1,234文字

カテゴリ:小説

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