こうしてナナオとの共同生活が始まった。
「さて、ミクと逢えた記念に私からのプレゼント♪」
ナナオは、私が出てきた箱─パソコンというらしい─の真横にある
黒い大きな箱を指し示す。
「ミクとおそろいよ」
手前の蓋を跳ね上げると、白と黒の鍵盤が出迎える。
ニーハイブーツの模様。気づかなかったが、言われてみれば同じだ。
「貴方を作った人が、モデルにしたシンセサイザーなんだって」
そういえば目覚める前、かすかに誰かの声を聞いた。
優しく呼ばれる自分の名前と遠くで聞こえる音は、たぶんキーボードをたたく音。
──あれが、私を作ってくれた人だったのかな?
「いつかはあなたに歌ってもらいたいな。この歌を」
スタンバイ状態の白い指が、そっと動き出す。
桜舞い散る季節 君を思い出す
楽しいねって笑った 懐かしい思い出を
思い切り走ってた 外遊びかくれんぼ
クリスマスにはサンタ はるばるやってきた
泣き出した 2人とも 言いたいことが言えず
ごめんねの 一言で また友達に戻れた
桜吹雪舞う中 君を思い出す
今は元気にしてる? 違う学舎で
いつか また 逢いたいね
桜の木の下で…
例えるなら、春を告げる雪を手にし、そっと受け止めて消えないよう願う
そんな儚い気持ち。
マスターの歌は、心に響いた。
「…ミク?」
「マスター、すごいです。私には歌えるかどうか」
「確かに人が歌うのとミクが歌うのは違うよ。
だからこそ、私はミクに挑戦してほしい」
マスターは私の手をとると、自分の胸部へ当てた。
重なる心拍。今の私は、マスターと一心同体なのだ。
とはいえ。
突然の動作に、一瞬思考が止まりかける。
「ごめんね。でも貴方にも心がある。
その気持ちをみんなに伝えてほしいんだ」
「…解りました」
「じゃあ、最初のフレーズから。桜舞い散る季節…」
「マスター、低すぎます…出ません」
「ええーっ、この音じゃないと困るの」
確か低い音を出すには、声を上あごの一番前に当てて…。
「さく…ら」
「できたーっ!ミクすごい♪」
その日、ナナオの部屋から歌声が途切れることはなかった。
next→3
コメント0
関連動画0
オススメ作品
おにゅうさん&ピノキオPと聞いて。
お2人のコラボ作品「神曲」をモチーフに、勝手ながら小説書かせて頂きました。
ガチですすいません。ネタ生かせなくてすいません。
今回は3ページと、比較的コンパクトにまとめることに成功しました。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓「前のバージョン」でページ送りです...【小説書いてみた】 神曲
時給310円
君の神様になりたい
「僕の命の歌で君が命を大事にすればいいのに」
「僕の家族の歌で君が愛を大事にすればいいのに」
そんなことを言って本心は欲しかったのは共感だけ。
欲にまみれた常人のなりそこないが、僕だった。
苦しいから歌った。
悲しいから歌った。
生きたいから歌った。ただのエゴの塊だった。
こんな...君の神様になりたい。
kurogaki
8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することも無いから君と駄弁っていた
「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
君はふてぶてしくつぶやいた
あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
バッと通ったトラックが君を轢き...カゲロウデイズ 歌詞
じん
チクチク針が進む ドクドク心が溶けて
ゴリゴリ消えていく あなたに惑わされていく
私はあなたが嫌い なにもかも
私の心は壊れていく なにもかも
チクチク針でぬわれる ドクドク心が溶けて
ハラハラと涙が止まらない 私はどこにいるの
私は好きじゃない 途方もなく
あなたの心はととかない さようなら
どう...サヨウナラのための唄
星原うなぎ@せんべい食う人
ゼロトーキング / はるまきごはんfeat.初音ミク
4/4 BPM133
もう、着いたのね
正面あたりで待ってるわ
ええ、楽しみよ
あなたの声が聞けるなんて
背、伸びてるね
知らないリングがお似合いね
ええ、感情論者の
言葉はすっかり意味ないもんね...ゼロトーキング(Lyrics)
はるまきごはん
ピノキオPの『恋するミュータント』を聞いて僕が思った事を、物語にしてみました。
同じくピノキオPの『 oz 』、『恋するミュータント』、そして童話『オズの魔法使い』との三つ巴ミックスです。
あろうことか前・後篇あわせて12ページもあるので、どうぞお時間のある時に読んで頂ければ幸いです。
素晴らしき作...オズと恋するミュータント(前篇)
時給310円
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想