ボカロ楽曲を題材にしたオリジナル小説を投稿します。 投稿小説はすべて作曲者の許可を取っています。 Twitterでも活動していますのでぜひフォローお願いします。
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投稿作品9作品
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風が髪を巻き上げる。私は片手で髪を押さえてどこまでも続きそうな階段を下った。さ
っきまでいたクラブの喧騒と照明、それからダンスで火照った体が冷めていく。私は胸の
奥まで吹き付けた風に気づかない振りをしながら込み合う改札を抜け、足を速めてホーム
に向かった。ちょうどホームに滑り込んできた電車に体を割...Subway rat’s racing
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鈍い頭のまま目を覚ました。目覚ましをつかみ取るようにして時間を確認する。午後三時。もう夕方だ。それでもまだ昨日の酒が体に残っているようで視界が揺らいだ。
雨音が部屋の外から響いていた。俺はカーテンを開け、ギターを抱えると窓枠に腰を下ろした。そのまま雨音をかき消すようにギターをつま弾く。
雨の日...入れない傘
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今年も私はこの場所へ来た。天の川の光の降り注ぐ丘の上へ。眼下には星を照り返す海が広がっている。私は柵を超えて丘の先の崖に近づくとその石の上に腰を下ろし、家から持ってきた水筒の蓋を開けた。中には温かなコーヒーが入っている。私は息を吹きかけてその香ばしい液体を一口飲んだ。それから空を見上げる。銀色の星...
Dreaming with U
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「てか明日の体育まじ憂鬱なんだけど」
「なんでこの歳になって校庭をぐるぐる走らなきゃなんないわけ」
「ねー。リンはどうせまたサボって見学でしょ」
日曜日の今日も私たちはやることもなくマックでだらだらと過ごしている。いつもならこのままみんなと夜まで街をふらつくところだけど。
「あ、私そろそろ行かなき...不機嫌な少女
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「リン、大きくなってもずっと一緒だよ」
そう言って彼は私に摘んだばかりのデイジーの花を差し出した。私は笑って言った。
「うん。約束よ」
デイジーの花が手の中で揺れた。私はその花に頬を寄せて、それから彼に抱きついた。
あたりでは一面にデイジーの花が咲き誇り、私たちの幸福な日々を彩っていた。
荒...星命学
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隣に住む花城さんは成績はトップクラスで、背が高くて、びっくりするような美人だ。
一言で言うと完璧な人間。それなのに。
玄関を開けると今日も花城さんが僕を出迎えた。
「おはよう、漣君。一緒に登校しましょ?」
毎日これだ。完璧な花城さんがどうして僕になんか執着するのか分からない。僕は背も高くない...ワタシヲスコレ
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私はデパートで買った総菜の袋を手に提げて土足で空家に入った。その空家では私の最愛の人が私を今か今かと待っている。
「遅くなってごめんね」
懐中電灯で照らしながら奥の扉を開けると薄暗がりの中であなたの肩がびくりとはねた。
「いい加減俺を自由にしろ」
あなたが裸のまま首につけられた鎖をじゃらじゃら...茨の皇女
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「これが私の運命なのです」
自らの手で喉に突き立てた小刀から赤い雫が零れ落ちていく。私は笑った。それから祈った。どうか地獄に落ちる前に、ほんのひと時あの人に会えますように。
目を閉じる間際、転がった雫が私の肌の上で椿のように咲くのを見た。
私の母は良家の娘だった。駆け落ちをして、戻ってきたとき...かぐやの幻
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今年もまた私はあなたのお墓を訪れた。あなたにチョコを供えるために。
私は少しの間手を合わせるとお供えのチョコの残りをひとかけら口に入れた。甘くて苦い味と一緒にあなたの思い出が蘇る。私はチョコを口の中で転がしながらその思い出に身を任せた。
「どうしたの?」
道端で泣く幼い私にあなたはまっすぐ声を...Chocolate affection