時音の投稿作品一覧
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『ミク……』
『カイトお兄ちゃん、一緒に歌って? ワタシの想いを、マスターに、ルカちゃんに、届けるのを手伝ってほしいの』
――最期の願い。
媒体を壊されたボーカロイドが望む、ただ一つの。
あれだけひどい仕打ちを受けながら、ミクは必ずマスターの名を忘れない。
一番届けたい相手にだけ、最期にそれぐらい望...欲に殺された歌姫、奇跡を残して 完結
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「……マスターが望むなら、それが、俺達ボーカロイドの生きる理由だから」
回想から戻ったカイトの返答に、ルカはあからさまに軽蔑の眼差しを投げつけた。
綺麗な顔は憎しみで歪み、紫がかった長髪は風もないのに靡いている。
まるで抑え切れない怒りを体言しているようだ。
ルカは唇を噛み締め、自身の腕に設置された...欲に殺された歌姫、奇跡を残して 4
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「どうって……」
「マスターの言いなりになるつもりなの? あんな冷酷な男のために、自分がちやほやされたいがためにミクを殺した男が作った歌を、あなたは歌い続けるつもりなの?」
存在理由を捨てたルカの厳しい問い掛けに、カイトは何も言えなくなってしまう。
確かに、マスターは無理を強いてミクを壊してしまった...欲に殺された歌姫、奇跡を残して 3
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『ルカちゃんの声は綺麗だね。おとなっぽくて、透き通ってて』
『声なんて皆一緒じゃない。別の私だって調教次第でこれぐらい歌えるわ』
『ううん。ワタシは今ここにいるルカちゃんの声が一番好き。何か優しいふわりとした感じがして、胸が温かくなるの』
生前のミクは、いつもそう言って私の歌声を褒めていた。
私達は...欲に殺された歌姫、奇跡を残して 2
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防音設備はそれなりに整った小さな一室。
部屋の中は作曲の邪魔にならない簡素な作りで、家具といえばパソコンが乗っている机と椅子ぐらいしか無い。
「――マスターが、ミクを殺したのよ」
ボーカロイドの運命を背負う巡音ルカは、首にマフラーを巻いた青い髪の仲間に言い放つ。
彼等のマスターは今宵は外泊の為、明日...欲に殺された歌姫、奇跡を残して 1(死ネタ)
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月に照らされ 広がる湖
波紋の中で 私は唄うの
寒空を抱いた 孤独な場所で
生まれたことすら恨めしかった
幾年も経って 寂しさも慣れたわ
そうして出会った 燃える髪の人に
私を指差し あなたは誰?と聞くから
龍の姿で答えたの
私は天の龍 村の護り神
この場所が私の住処...ある村に遺された物語