タグ:イチオシ独立戦争
10件
10
廊下の曲がり角から向こう側をのぞく。
政府軍の兵士――そこには、東ソルコタ神聖解放戦線よりも数は少ないが、それでも子ども兵が混じっていた――が、窓から中庭に向かって銃を撃っている。
「……」
壁に隠れて座り込み、バックパックの中を見る。
中には二.五キロのプラスチック爆弾と、信管二つ。...イチオシ独立戦争 10 ※二次創作
周雷文吾
09
僕より五歳下のムヴェイが、建物に駆け寄っていく。
立派な――けれどヘドが出る――装飾の上に無骨な鉄板で補強された建物の角にたどり着くと、彼は壁に背中を預けて座り込む。
決意を抱いた顔で両目をつぶり、手にしたなにかを握りこんだ。
爆発。
オレンジ色の閃光。
ムヴェイの身体が粉々に吹き...イチオシ独立戦争 9 ※二次創作
周雷文吾
08
爆発音。
一瞬、なにも聞こえなくなる。
視界も明滅して平衡感覚がなくなった。
「危ない!」
耳鳴りがしつつもなんとか立ち上がろうとしたところを、誰かに突き飛ばされる。
抵抗できず、よろめきながら倒れる。
僕を突き飛ばしたやつは、僕が顔をあげたときにはもう、直後に飛来した銃弾に胸を赤...イチオシ独立戦争 8 ※二次創作
周雷文吾
07
こいつは戦争だ。
僕たちはいつだって明日に怯えている。
今日一緒に戦い、一緒に寝た仲間が明日も一緒に生きているとは限らない。
それでも夢を見る。
戦争なんてなくなって、銃もなくなってしまう夢を。
そんな……実現するはずもない夢を。
あれから数ヶ月が経過した。
東ソルコタ神聖解放...イチオシ独立戦争 7 ※二次創作
周雷文吾
06
「……うぅ」
つらい。
くるしい。
下腹部をさすりながら、僕は寝床へと戻る。
寝床はみんなと同じところだ。広い部屋の隅で、肩を寄せあって眠る。
寝転がって睡眠をとる、ということをしたことがない。ベッドというのは寝るためではなく、その……大人との勤めを済ませる場所だから。
一人でいる...イチオシ独立戦争 6 ※二次創作
周雷文吾
05
「なんだこれは……なんなのだ! こんなもので、やつらはどこまでソルコタを馬鹿にするつもりなのだ!」
壁ひとつ向こうで、導師が声を荒らげている。部屋の中にいるのは導師だけだ。ついさきほど、三台の軍用トラックから回収してきた物資をその部屋に移し終え、物資の確認に導師に入ってもらったところだった。...イチオシ独立戦争 5 ※二次創作
周雷文吾
04
半壊した建物から出てきたとき、下のみんなは勝利の雄叫びをあげ、空に向かって銃を乱射していた。
僕を含めて十数人くらいの部隊は、大人の指揮官の他はみな十八歳以下だった。一番年上のオデルが十八歳になったばかり――だったが、どうやら向こうで死んでいるみたいだ。一番下は十一歳のチャールズ。僕らは簡...イチオシ独立戦争 4 ※二次創作
周雷文吾
03
人のいない廃墟となったレンガ造りの建物を抜け、僕は目的地を目指す。
他のみんなは正面から経路を塞いでいるはずだ。
物資を積んでいる車両を待ち伏せするために。
僕の役目は、正面に気をとられている敵の背後からの強襲だ。早すぎれば意味がないし、遅ければ効果が薄い。よくタイミングを見計らわなけ...イチオシ独立戦争 3 ※二次創作
周雷文吾
02
「これは、お前たちが生き残るための戦いなのだ」
導師は僕らに常々そう言い聞かせてきた。
このソルコタという国は、西側のコダーラ族によるソルコタ政府と、東側の導師の率いるカタ族による東ソルコタ神聖解放戦線に分かれ、僕らが生まれるずっと前から争い続けている。
その理由は、僕には難しくてよくわ...イチオシ独立戦争 2 ※二次創作
周雷文吾
イチオシ独立戦争 ※二次創作
※この物語には残虐な描写、グロテスクな表現があります。
01
擦過音。
僕は耳元で爆ぜるその音に、とっさにその場に身を投げ出して、瓦礫の陰に倒れこんだ。
それは反射的なもので、その擦過音が耳元を掠めた銃弾の音だとはっきり認識したのは、倒れこんだあとになってからだっ...イチオシ独立戦争 1 ※二次創作
周雷文吾