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9.四年後 ~レンカとリント~
レンカが十八歳となった夏、十三の歳から始めていた彼女の岬の女神像にまつわる探究活動はあっさりと幕を下ろした。
ある嵐の日、女神像が倒れ、その台座の下から、建てられた当時の石版が見つかったのだ。
『国の守りとして、ここに像を建てる』『岬の端、大陸勢力への見張りとして...滄海のPygmalion 9.4年後 ~レンカとリント~
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8.間章
「ねーえ。レンカおばあちゃん」
岬の端のサンダルの像の前に、老人と少女は並んですわり、真っ青に澄み渡る海を眺めていた。
「おばあちゃんは、ここから海に飛び込んだの?」
孫娘がこわごわと、這って崖ににじりより、ひゃっとすぐに悲鳴をあげて戻ってくる。
三階建ての建物くらいの高さはあるよう...滄海のPygmalion 8.間章
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7.石像の心
「冷たく白い石像、面影にそっと手が触れるとき」
白い女神像が、真っ青な海に向かって手を広げる隣で、白い頬をしたルカの唇が小さく動く。
「朱に染まり色づく頬、あなたに逢いたい……」
真昼の、海から吹く風が、ルカの唇にそっとくちづけては陸へと飛び去っていく。
ルカは、昼食を取らずに博...滄海のPygmalion 7.石像の心
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6.ルカの家庭
島の昼間。夏も近づくこの頃の太陽は、眩しく高い。白い石畳と粘度の壁が、鮮やかに光を反射している。時折家々の軒先に日よけとしてしつらえられた葡萄の棚が木陰を落とす中、ルカは濃い影を映しながら歩いていた。
「冷たく白い石像、面影にそっと、手が触れるとき……」
うつむき歩くルカの桃色の...滄海のPygmalion 6.ルカの家庭
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5.歴史と伝説とレンカ
「歴史と伝説は違うよ」
レンカにそう教えてくれたのは、この島のただひとりの学芸員のヒゲさんことヴァシリス・アンドロスだ。
「歴史は事実で、伝説は文化だ。歴史は事実だから、ただひとつしかなく、変わらない。しかし伝説は、人の数だけ生まれるといってもよい」
* ...滄海のPygmalion 5.歴史と伝説とレンカ
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4.女神像とルカ
今日も岬日和だった。「島の名物は、景色!」。その謳い文句の通りに、リントとレンカは、ルカを岬に連れてきた。
ひとしきり女神自慢、伝説への考察を披露したあと、リントは女神の足元におさまり、レンカはいつものように海へと向かっていった。レンカはルカにも海に入らないかと誘ったが、ルカは...滄海のPygmalion 4.女神像とルカ
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3.夕焼け色の髪の少女・後編
ルカがレンカの拾い集めた石片を弾き飛ばしたことに、リントは凍った。あまつさえ、彼女はその石片の一つを掴んで投げようとしている。
「あいつ! やっていいことと悪いことが……! レンカ! 落ち着けよ?!」
リントが、ルカを押さえるかレンカを心配するか迷った隙に、レンカが...滄海のPygmalion 3.夕焼け色の髪の少女・後編
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3.夕焼け色の髪の少女・前編
岬から白い石の道をたどって下り、広がる葡萄畑を通り過ぎ、再び街のある高台へと向っていく。この島の大地と同じ色で作られた石粘土と漆喰の壁が立ち並ぶ街は、訪れたばかりの青い夕闇に抱かれて、にぎやかな喧騒を見せていた。
「しまった! 明日は休日だった!」
「ヒゲさん、まだ仕...滄海のPygmalion 3.夕焼け色の髪の少女・前編
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2.島の双子 リントとレンカ
その女神像は、岬の先に、真っ青な海に向って腕を広げて立っていた。
大きさは、ちょうど大人の平均身長より少々高いくらいか。真っ白な大理石で出来た石像は、海から吹く潮風にもその肌を曇らせることなく、毅然として立っていた。
その女神像の足元に、今、一人の少年が座っている...小説『滄海のPygmalion』 2.島の双子 リントとレンカ
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1.滄海のPygmalion
真っ青に透き通った海に向かって、岬が張り出している。
風にあおられた短い草に覆われたその突端には、真っ白なサンダルの石像が一揃い、海を向いてしつらえられていた。
白い大地のむき出しになった細い道が、岬のたもとから、そのサンダルの像のある岬の先まで続いている。草の中...小説『滄海のPygmalion』 1.滄海のPygmalion
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表紙
『滄海のPygmalion』
発想元・歌詞引用 U-ta/ウタP様『Pygmalion』
http://piapro.jp/t/n-Fp
*この物語はファンタジーです。実際の出来事、歴史、人物および科学現象にはほとんど一切関係ありません。
*曲への愛のままに、気ままに書きます!...表紙 『滄海のPygmalion』
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