planetypeの投稿作品一覧
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今になっても時折、夕暮れの後塵を眇眼に纏う度、思い出す。
斜陽に煌めく粉塵の光柱。寒暖を帯びない無温の空気。その癖、何時までも浸かりたくなるような、歌声の瑞浴。二人きりの、音楽室。
彼女は、今でもウタを歌っているのだろうか。
十年も前の話である。脳科学の視座からは、人の記憶に欠落は有り得ない...音楽室で歌う女の子の話(1)。
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いつか、世界が終わるとき。
遠く、潮騒を聴く。
高く、低く、長く、短く。絡まり、解れ、解けて、融ける。
一時として一定しない、寄せては返す波のようで。
それでも潮の満ち干のように、緩やかな周期を以って揺らぐもの。
干満な振幅は、揺り籃を思わせて優しい。だからこそ人は、波打ち際に安らぐのだろう。
そん...いつか、世界が終わるときにウタを歌う女の子の話。
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さて。皆々様方に置かれましては、わたくしが何ゆえただ今になって、自身の心情を刻々と語る決心を抱いたか、不思議と思われる方も御座いましょう。何しろ、貴方が一度でも近日の新聞でも御読覧頂いて居れば、わたくしの罪状の如何に完全潔白なるか、事実無根なるかは瞭然のもので御座いましょうから。
然るに、わたくしの...鏡を割った女の子の話。
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「にゃあ」
それが私の第一声。生まれて初めて紡いだ言葉。
私は生まれつき喋ることが出来なかった。文字は読める。音は聞こえる。誰かの話す言葉を聞いて、その意味を理解することも出来る。
ただ、喋ることだけが出来なかった。言葉を紡ごうとしても、それらはまるで口端から上る前に空気に触れ、ただの音節へと裁断さ...「にゃあ」と喋る女の子の話。
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年齢16歳。身長158cm。体重42kg。それだけ。
私が私であることを示すパラメータ。
それだけが私の全て。
私にはそれだけしか無い。
だから私には何も無かった。私は私の形をなぞることでしか、私の存在を確認できない。その内容(ナカミ)は空っぽのままで。私は嘘のような私を実証する。
だから何でも良か...年齢16歳、身長158cm、体重42kgの女の子の話。