夢を見る。
最近毎日、同じ夢を。
『貴女に夢を、魅せてあげる』
それは、とてもとても綺麗な兎の女の人が言うセリフ。
演劇を観るようなドキドキより、遥かに胸が高鳴り私は夢の中で毎回言葉を失う。
“その可愛いお耳はどうして生えているの?”
“どうして私なの?”
栗色の髪にルビーの瞳を持つ女の人は、私を見つめてにこりと微笑む。
どきん、とはねる心臓にくらくらしていると彼女の唇がふ、と動いて夢の終わりを告げる。
『いつか必ず、貴女を夢の世界にご招待してあげる』
ああ、兎さん。
早くあなたに逢いたい。夢から醒めたくないの、その先の現実は、たまらなく似通ったつまらないものだから―――。
「はぁ………やっぱり、退屈」
私は、落書きをしながら呟いた。
退屈な毎日。
変わり映えしない日常。
マナーやお稽古、淑女のたしなみや花嫁修行その他アレコレ。
時間はないくらい、あっという間に過ぎていくけれど。
例えば、
お砂糖とクリームがたっぷりのお菓子をソファーに寝転がってお行儀悪く食べるとか。
例えば、
夜遅くまで挿し絵入りのちょっと下卑た笑える本をこっそり読んで昼過ぎまで起きないとか。
例えば、
見え透いた(格好よくもないくせに!)カッコつけな視線で舐めるように見てくる男の子達にあっかんべーをするとか。
そんな、私からしたらたまらなくしたいことをする時間はない。
私の毎日は、私のパパやママやお家柄が喜ぶようなスケジュールで埋め尽くされている。
もちろん、私は家族もお家も嫌いじゃないから逆らったりはしないし、喜んでもらえるなら頑張ってもみたりする。
だけど、ちょっとね。
たまに、嫌になるの。
「ははは、ミクは子どもだなあ」
「むう。お兄ちゃんだって、大人気ないってパパ達が言ってたわ。二十歳を超えてもまだ、お嫁さんを決めないなんてってみんな嘆いていたわ」
「それはふさわしい人が現れないからなあ、仕方ないよー」
さあほら、いい加減女の子が木登りしながらお話しするものじゃないよ、とカイトお兄ちゃんが本を読みながら私をいさめる。
それでも、カイトお兄ちゃんはそんなに厳しくはない。私はそれをいつものように無視して、勉強用の重たい万年筆をぱくっと口にくわえる(これも他のお兄ちゃんたいなら大目玉を喰らう)。
勉強と称して、お兄ちゃんを連れなきゃこうして大好きな木登りの森に出かけることも出来ない。
ぐりぐりと落書きを続けながら、お家じゃとても言えないような愚痴をつぶやく。
「ミクも、お兄ちゃんみたいに男の子ならよかったわ。だったら、好きなときに出かけることもできて、お見合いだって断れるわ」
「まあ、お見合いを断るのは俺もすごく叱られてるけどねえ」
「まあ、少なくとも。女の子よりは有利であると思いますわ」
「ええ。確かにそうやって、ミク嬢のように木登りをされても不利にはなりませんね」
ふざけて気取って、ミクはため息をついて。
のどかな森、飛び交う蝶々や暖かな日差しにため息なんてナンセンスだと思いながらも、ひたすらこぼれるのは重たい息ばかり。
カイトお兄ちゃんが、勉強は出来たのかい?とノートを見せるように促してくる。
私は遠慮なく、その場でノートを地面に落下させる。役に立たない数学なんて、必要ないわ。いずれ女はお嫁にいって、家庭に入るだけなのに、ね?
「いてて、きれいに縦に落ちてきたじゃないかミク」
「腕がいいのよお兄ちゃん」
「全く、とんだ妹だね………おやおや、ノートには落書きしか見当たらないよ?」
「落書きしかしてないもの」
「これは俺が叱られるなあ…、あれ、このウサギさんはミクの画力にしたらかわいい方だね」
「あ、ひどいわ。でも、可愛いでしょう?最近、うさぎの夢を見るから気になって、落書きもウサギばかりなのよ♪」
あの兎の女の人を書く画力は確かにないけれど。
そう思いながら、誉められたのにはやっぱりいい気になって木の幹から身を乗り出す。身体を起こした瞬間、ふ、といつもの森の風景にはそぐわない色……真紅の“赤”がチラと視界に入る。
(えっ……?)
見間違いかと思い、瞼をこすっても、その“赤”は消えない。むしろより鮮やかにピントを合わせて瞳に飛び込んでくる。
「まさ、か………」
白い肌に、栗色の髪。
真っ赤な瞳に、真っ赤な唇。
ちょっとちぐはぐだけど、とっても可愛いお洋服に。
兎の耳と尻尾。
綺麗な、綺麗な女の人。
遠くから私を見つめ、笑っているのがわかる。
きれいな長い足が草を蹴り、手招きをしながら少しずつ私から遠ざかっている。
どうぞ、ついておいでと言っているみたいに。
ああ、奇跡だ、夢みたいだけど夢じゃない!!!
なんて素敵な…………
「運命の出逢いだ!!!」
「っえ、エエェエ?!!!」
「ミク、あの女性は誰ッ!!!」
木から飛び降りようとした私の足を掴んで、カイトお兄ちゃんが立ち上がった。
私はぐずぐずと木からずりおち、草まみれになる。ああ、ウサギさんが消えちゃわないうちに追わなきゃいけないのに…!
「お兄ちゃんは黙ってて!あれはミクの夢の中に出て来てくれた女の人で………!」
「ああっ、てことは妹を介しての出逢いってことか……。待っててミク!すぐにお兄ちゃんがあの人を、ミクのお姉さんにしてあげるからね★」
「はぁあ?!!!お義姉さん?」
顔を紅潮させたカイトお兄ちゃんに反して、私はどんどん気持ちが冷めていく。すっかり遠く離れていくウサギさんを確認し、(今は邪魔な)カイトお兄ちゃんを放置して駆け出そうとする。
すると、カイトお兄ちゃんはわらったままで私の腕をつかむ。
そのまま木の蔓を適当に引っ張ってきたかと思うと、私の体を木の幹にぐるぐるにくくりつける。
「なっ、何するの!」
「や。彼女に求婚しにいくのに妹連れなんて野暮でしょ★?コブ付きなんて思われたらさらにマズいし、ちょっと大人しくしてて」
「なんなのよぉぉおぉっっ」
離してと叫ぶも、カイトお兄ちゃんは余裕綽々に柔軟なんかしてコートを脱ぎ捨てる。
ウサギはなんだか、異様な雰囲気に気がついたのか(そりゃあそうだろう…)ぱぁっと駆け足になり逃げ出す。ああ、ウサギさん……ミクを一緒に連れて行って!
「あれぇ~~~?
んもう、照れ屋さんなんだね彼女ってばっッ」
柔軟を終えたカイトお兄ちゃんがものすごい速さで地を蹴り、目の前から消える。
やる気がないだけで、運動能力はずば抜けて高いお兄ちゃんのことだ。あのウサギさんは下手したら捕まってしまうんじゃないだろうか……と不安になる。
「てか……私とウサギさんの夢の世界はぁああ……?!」
身動きが取れないまま、私はがっくりとうなだれる。
夢の世界への入り口が、見事に兄のせいで閉じられるなんて。
夢にも思わなかった。
END
はい、オチあり~~(笑)
アリスモチーフに書いてみたくて妄想を始めたら、こんなんしか浮かびませんでしたテヘ。
時計ウサギにめーちゃんで、ミクもカイトもアリス兄妹ふたりしてワンダーワールドへ飛び込めばいいと思います。
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感想失礼します(^ω^)
とても面白かったです!笑いましたw
読みやすい作り・流れでトントン読めました★(^∀^)
他の作品も読ませて頂きましたが、そちらもとても面白かったです!
これからも頑張ってください!応援してます★(^∀^)
2011/09/23 13:59:53
いのほた
葵彼方さま★
はじめましてコニチワ!
感想ありがとうございまガタガタ
((((;゜Д゜)))))))
読んで下さるだけでも嬉しいのに、
ワロテくださるとはちくしょう愛してる!
カイメイミクはドタバタが大好きなので
少しでも気に入ってくださったのならば
私の霊魂がかなり浮かばれますww
これからものたのた落書いていきますので、
どうぞよろしくお願いします★
フォローさんくすどぅえす
\(//∇//)\ぬあぁぁぁあ
2011/09/23 15:08:00