そして、当日。
『こ、こんにちは』
『こんにちは』
大山北大学の雅彦の部屋に神波と量産型のミクがやってきた。部屋には雅彦とワンオフのミクが待っていた。雅彦が案内して来客用のソファに座る。
「二人とも、大丈夫かい?」
「え、ええっと、その…」
落ち着いた感じの雅彦とワンオフのミクと比較すると、明らかに緊張しているのが分かる神波と量産型のミク。特に量産型のミクは神波からワンオフのミクに会える時に見せた時に見せた嬉しそうな表情はなを潜め、ガチガチに緊張している。
「…とりあえず、二人ずつ話した方が良いよね?」
「お、お任せします」
何とかこたえる神波。今の神波にはそうこたえるのが精一杯だった。
「それじゃ、ミクたちはここで話をしてくれないかな。ここだとミクがいても不思議じゃないけど、他の所だと大騒ぎになるかもしれないし。僕たちはカフェテリアで話そう。…ミク、冷蔵庫の中身やコーヒーなんかは自由にしていいから。さっき言ったように、準備はしてあるよ」
「はい」
「それじゃ、行こうか」
「は、はい」
そういって雅彦と神波が雅彦の部屋を出ていった。残された二人。
「何か飲みたいものはある?」
声をかけたのはワンオフのミクの方だった。ワンオフのミクの表情は、量産型のミクがいつも見るような、柔らかな笑みをたたえた笑顔である。
「え、ええっと…」
ワンオフのミクの態度とは逆に、表情がこわばっている量産型のミク。見た目は同じだが、二人から受ける印象はかなり異なる。
「…なら、メロンソーダにするわね」
微笑みながら言って、グラスを二つ取り出し、冷蔵庫からメロンソーダを出してグラスに注いで片方を量産型のミクに差し出すワンオフのミク。しかし、メロンソーダを差し出されても固まっている量産型のミク。するとワンオフのミクが量産型のミクの緊張をほぐすためか、微笑みながらグラスを手に取ってメロンソーダを飲み始めた。
「…普通のメロンソーダだけど、おいしいわ」
「は、はい…」
(…どうしよう)
一方の量産型のミクは混乱していた、昨日まで時間をかけて考えてまとめていたワンオフのミクに聞きたい内容が、本人を前にすると、全て頭の中から吹き飛んでしまったのだ。とりあえず、ワンオフのミクにうながされてグラスに入ったメロンソーダを飲む量産型のミク。そんな量産型のミクを見ながら、ワンオフのミクが何かを考えているようだ。
「マスターである神波さんのこと、好きなの?」
いきなり、あまりにも直球な質問をぶつけてきたワンオフのミク。それを聞いて、口にしたメロンソーダを吹き出しそうになる量産型のミク。しかし、何とかこらえることができた。
「は、はい…」
むせながらも、何とか口にしたメロンソーダを飲んだ量産型のミク。
「神波さんとの関係で、何か悩んでいないかしら?」
「…私はマスターのことが好きなんですが、このまま私がマスターのことを好きになっていいのかな、って思っています。いけないことなのかな、という気持ちが心の隅にずっとあって…。マスターは気がついていないので、このまま自分の想いを胸に秘めておいたままにした方が良いのかな、って思っています」
量産型のミクの悩みを聞いて、少し考えるワンオフのミク。
「…雅彦さんは私のマスターではないから、あなたと同じではないけれど、私と雅彦さんとの関係の話は、きっとあなたにも参考になると思うの」
「はい…」
量産型のミクとは対照的に、ワンオフのミクはかなり落ち着いて、量産型のミクを聞きたいであろう内容を話す方向に質問を誘導していた。
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