最近、仕事が忙しかったのと、音を楽しむ時間がないほどに疲れていた。
そんなのは言い訳でしかないし、今ここに存在するVOCALOID(こいつら)には寂しい思いをさせていたと思う。
だけどな――「だっから! あっついんだよ! ちょ、お前らいい加減に離れろ!」
それは、15分ほど前の話だ。
友人に頼まれた調べ物をするため、久々にパソコンへ向かおうとしたところでリンに後ろから抱きしめられた。
「ん? どうした、リン」
リンは何も答えず、ただギュッと俺を抱きしめた。
なんだ、この可愛いVOCALOID(いきもの)。
ぎゅ。
と、今度は前方から抱きしめられる。
ふと視線をよこせばそこにはレンがいた。
「あ? どうした、レンまで」
レンは何も答えず、ただギュッと俺を抱きしめた。
ほんとにどうしたんだ、この可愛いVOCALOID(いきもの)達は。
リンレンに挟まれて俺は身動きできず、仕方ないと二人の頭を撫でる。
「黙ってちゃわからないぞ?」
そう言っても黙り続ける二人に困りつつも、最近の自身の行いを振り返りしばらく気のすむまでこのままにしておくか、と心の中で溜息をついた。
そんな時、部屋の扉が開く。
そこには俯いて表情の見えないカイトの姿。
「カイト? なんかあったのか?」
俺が声をかけると、カイトは静かに近づいてきた。
そんなカイトを怖いと感じたのは、罪悪感のせいだろうか。
カイトは俺のすぐ傍までくると立ち止った。
そしてリンを押しつぶさないようにやわらかく包み込み俺の首に手を回し、抱きしめる。
「ちょ、おい。……カイト?」
一瞬、首でも締められるのかと思った。
でも、それは杞憂に終わった。
カイトもまた、何も答えなかった。俺の首に回した腕には弱く確かに力がこもる。
「おーい。ほんとに、どうしたんだよ」
いつもと違う態度のVOCALOID達(こいつら)に戸惑い、心配しているが。
そろそろ、暑くなってきた。
クーラーつけときゃよかった。
そんな後悔が頭をよぎった時、開け放された扉の向こうに赤い彼女を見た。
「あ、メイコ。ちょうどよかった、これどーにかしてくんない?」
天の助けがきた。
困った顔で言えば、メイコに目を逸らされた。
「ちょ、めーこさん!?」
「ずーっと、放置してたんだからそれくらい許しなさいよ」
そして厳しい目。
……こえぇぇ~……。
「……ハイ」
俺の返事を聞くとメイコ様はそのままどこかへ行ってしまった。
何度か3人に謝罪を試みるも、3人はずっと黙りこんだまま。
時間だけが過ぎていく。
「えっと、そろそろ離れてくんないかなぁ~?」
無視。
「調べ物があるんだ。終わったら遊ぶから、な?」
無視。
「あのさ。ちょっと、本気で暑くなってきたから少し離れようか?」
無視。
さっきから耐える度、時間を置いてそう言っても3人は俺を無視し続けている。
そして冒頭へ。
ついにプッツンいくほどの暑さに限界を超えた。
にも関わらず、3人は相変わらず抱きついたまま微塵も離れる予感を感じさせてくれない。
大きくため息をつくと、去ったはずのメイコが廊下にいた。
よくよく思えば、一番最初に家に来たのはメイコで
この甘えん坊達(カイトを含む)の面倒をみてくれていたのもメイコで
自分勝手な俺の面倒をずっと傍で支えてくれてたのもメイコだった。
「……はぁ。ほら、めーちゃんもこっちおいで」
「は?」
今では頼りになりすぎて、【めーちゃん】と呼ぶことは無くなってきていたが。今日くらいはいいだろ。
目を見開いて、固まっているめーちゃんに向かって手を伸ばす。
「みんなまとめて抱きしめてやんよ」
体に籠った熱のせいか、もうヤケと言わんばかりに笑顔を向ける。
めーちゃんは驚いた顔を引っ込めるとふっと笑って、照れたように少しだけほほを染めて、俺たちを抱きしめた。
(あっつ~……うぅ……そろそろ、いいんじゃないですかね?)
(やだー!)
(まだダメ)
(マスター、行っちゃヤです)
(もう少し耐えてよね、マスター)
(……はいはい。(でもそろそろ本気で死にそ……))
コメント1
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ご意見・ご感想
欠陥品
ご意見・ご感想
なんて可愛いVOCALOID(いきもの)達だ…。
マスターが愛されてて羨ましい(・ω・`)
楽しく読ませて貰いました、ブクマさせて頂きますね♪
2010/07/05 08:22:10
久遠@御用の方はメッセお願いします。
ほんと、可愛いVOCALOID(いきもの)達ですよね♪
楽しんでいただけたようで光栄です!
そして、まさかのブクマありがとうございます!!
嬉しすぎてどうしていいのか、わからない…。←w
2010/07/05 22:18:44