「で、お前は何考えてたんだよ。罪のない動物を蹴り殺すなんて、理由があったって絶対許されないからなぁ」
綱で縛られ、床にうつぶせになったまま動かない痩せ型の男に、わざわざ顔を近づけて見せて言う。男はへっ、と笑いながら顔をこちらに向けてくる。
「…うちの嫁が丹精込めて作った米を、あのクソたぬきははじから食っていきやがったんだ。この前ようやく見つけて、蹴り殺してやった。だいたい、お前らだって作られた米がなくなったら、回りまわって打撃食らうんだろう?だったらいいじゃねぇか」
男は御託をならべる。だが、どんな言い訳をしようと殺したことに違いはない。ならすべきことはなんだ?決まっている。
こいつを殺すだけだよ。
情けはかけない。むしろ殺された動物にこそ情けをかけるんだ。そう、私は自分に言い聞かせていた。
「じゃあ、今からお前を殺されたたぬきのように…」
そう言いかけたときだった。顔を離しておけばよかったと、遅くなって考えた。
がつっ!!!
男が私の顔めがけて頭突きを食らわせてきた。よける暇など無論ない。もろに鼻にぶつけられて、歯こそ折られなかったが鼻血を出しながら後ろに倒れこむ。
「あがぁっっ!!ううぐ、ぎいいいいいいいいいいいいっ!!!」
痛みで両手で顔を押さえて、床を左右にのた打ち回る。痛い。鼻の骨が折れたかと思うほどだ。このとき私は、白目をむいていたかもしれない。
少しずつ痛みがひいてくると、手から溢れ出した大量の血。いまだあまりみたことのない、自分自身の血。
…こいつ、私に気高き血を流させやがったな!!よりにもよって、女の顔に傷でも入れようとしていた!!許さない、絶対ッッ!!!!!!
家来が冷水の入った桶と、それに浸した手ぬぐいを私に差し出してきた。
「だ、大丈夫ですか!!?これを!」
「こ、これを見て、大丈夫に見えるのか…?まぁよい、礼を言うぞ。下がってよい」
心配そうな目を向けながらも一礼すると、部屋を出て行った。
男はいまだにニヤニヤと含み笑いをしている。私はすくっと立ち上がると、一度首を左右に振って、流血はないか確認する。済むと、再び男の前に立った。
「お前。その覚悟は讃えてやる。家来にしてやってもいいくらいの覚悟だ。ただ、“覚悟”だけだ。お前なぞ、この世におる必要など微塵もないわ!!」
私は目を細めて硬い靴のつま先で男の首を蹴る。男は一瞬呼吸を止め、転がりながら一回転して仰向けになった。「うぐぅ」と、苦しそうにうめいている。ただ、こんなのは普段と同じ、見慣れた現場だ。こいつは私にも手を出した。こんなことで済むとは誰が思うか。
「おい、誰か!この男の家族を全員連れてくるんだ!一人残らず、ここに!」
家来は扉の外で短く返事すると、小走りに男の身内へと向かっていった。
視線を男に戻すと、苦しみながらも反抗的な目を向けていた。それをにやりと軽い笑みで返してやる。
「なぜ、家族も巻き込むんだ!?俺だけしか動物は殺してない!!」
「そうだ。お前の罪だ。だからお前には苦しんで死んでもらおうと思ってな。目の前で宝物が崩れ去る瞬間を見て、絶望するがいいわ!すべて自業自得じゃ、愚か者ッッ!!」
「いやぁぁぁ、あんたぁぁ!!!!」
「とぉちゃぁぁぁん!!!おいら死にたくないぃ!!」
まだ若い、なかなか美人な男の妻と、4,5歳と思われる男の子。息子だ。
手足を縛られ、顔を涙のしずくで埋め尽くしている。男は動かない手足を必死にばたつかせて、私に今更助けを懇願してくる。
「たのむ!俺が悪かった!!こいつらだけは勘弁してくれ!!俺ならどうなってもいい、たのむ!!」
私は腕を組んで、さっきまででかい態度をぶら下げてた馬鹿男に、再度顔を近づける。
「おいおい、人に物を頼むときってのはさぁ、そんな『たのむ』だとかそんな荒っぽい言葉でいいわけ?お前には考える脳がないのか?」
皮肉に、笑みを浮かべながら言う。男は舌打ちをしたようだったが、食い下がり、言い換える。
「将軍様。私は罪深き人間でございます。どうか、相応の制裁をお願いいたします…ただ、身内だけはなんとか、お見逃しいただきたく存じます…」
歯を食いしばっている。男も、息子も、妻も。悔し涙が頬を伝っている。
愉快だ、実に。
「言い換えご苦労。でも残念。気はちっとも変わらないから。先にお前の大切なもの、消させてもらうよ」
私は女に歩み寄る。きれいに束ねられ、後ろに垂らされたお下げを右手でつかみ、上に引っ張る。顔が痛みで強張っているようだ。必死に口を閉じてこらえている。
「ちょっと痛いかもね。でも出産も経験してんだろう?腕の一本や二本切られたって、どうってことはないはずだ」
妻の顔が青ざめる。息子が見かねて泣き出した。男はその間にも謝り続けている。
私は左手に包丁を構えた。
「歯ぁ食いしばりなッッ!!!!!」
ざしゅ、ぶしぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
瞬時に血は出なかったものの、数秒後に猛烈なまでの出血とともに断末魔が部屋いっぱいに響き渡った。
「あああああああああああっっっ、うでっ、うでぇぇぇぇぇぇっっ!!!!!」
妻は右腕から血飛沫を舞い上げながら、失神してしまった。男はがくがくと体を震わせ、言葉ひとつとして発せていなかった。
「おいおい、気絶したら抵抗も何もないじゃないか。使えないな、まったく…」
息子も、もう見たくないみたいで、必死に目をそらそうと床に突っ伏している。
私の視線は、次なる獲物に向けられていた。
「次は息子のほうだよ。さぁて、早いとこやってしまうとするか」
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かたつむり
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リンさん怖いっすな(^^;)
鼻・・・奥さんは腕・・・・・・痛・・・・っ!!!!(○△○;;;)
インフル・・・!ミミーィ!お大事に、お大事にね・・・!!!><;
2011/02/07 19:19:52
初音ミミック
大丈夫だったよ??;;
おかげさまで生きてますww
2011/02/08 19:22:07