*亜種・崩壊注意*

 風呂掃除をしていると、ちびが遊びにきた。
 …いい加減名前つけてやれ、マスター。
 家で一番此処が気に入ってるらしく、だれも構ってくれないときはここで歌っている事が多い。基本的にみんな構ってくれるが、家事や宿題に追われてどうしても構えないこともあるがただ単にここが好きでマスターが遊んでやろうとしてふられたこともある。

 「ひーとーりーはいーのーそらー♪」
 マイクにエコーをかけられるようになって以来余計に響くのでお気に入りの様だ。流石に風呂まで防音していないのでできれば止めさせたいが、基本的に内に玩具がないので暗くなったら禁止ぐらいになっている。

 微妙に間違えている歌詞を歌い、時には即興で適当に歌を作ったりしてる。替え歌やらもしていて本当に楽しそうだ。
「ぼくらーのーけんしヨ…間違えたー」
 この場合歌詞ではなく、裏返った音の事を言っている。

「息すわないで一気に歌おうとするから苦しくなってあがんだよ。」
 聴いてる限りブレスポイントが二分の一に減少してる。
「そなの?じゃあさ、どこですうの?」
「じゃあ一回歌ってやるからよく見てろ。」
 こんな調子で歌ったりしながらだからはかどらない。

 しばらくして、マスターがアイス食べようとしてるのを聞きつけて出て行くまでこの調子だった。
 人間より音に敏感な俺でもわからなかったのにどんな聴力してるんだあいつは。アイスがらみだからか種っ子―マスターが種KAITOじゃ長いからってこう呼ぶ―だからか。

「いいよな、あいつらは。」
 マスターはカレーは軽くトラウマがあるし、辛いのももとから苦手だし。一緒におやつ食べようにも匂いもだめだから食べられない。唐辛子は匂いがそんなしないから平気だけど。

「こんなもんか。」
 風呂を洗い終えて出るとまだ3時になっていなかった。
 ああ、なんかいいことあったんだな。3時前にアイスだなんて。

「あ、あー君、あー君。今日は外に泊まりに行くから明日まで帰ってこないけどちび置いてっていい?」
「あ?いいけど…どこ行くんだ?」
「秘密。」
 …クリスマスは家に居たし恋人とかじゃないとは思うが、気になる。
 というわけではかせてみた。どうやったかって?一寸菓子の袋をちらつかせただけだ。

「宿題合宿ねぇ。帯っちゃんに教えてもらえばいーじゃん。」
 マスターに教えるために勉強したんだ、あいつは。
「いや、そうしようと思ってたんだけど…」
 ああ、巻き込まれたのか。マスターらしい。
「というわけで豆と一緒に玩具買いにいってくれる?その隙に行くから。」
 目の前で出ようとすればおお泣きするだろうし人さまの家に連れて行ってアイスをごちそうになるわけにもいかないよな。

「分かった。」
「でさ、豆はぽっけに入れてってくれる?カラスにさらわれそうだし…サイズ的に。」
「そうだな。」
 おもちゃ代に五千円あずかってちびをポケットに居れた。
 マスターの金を使う気はないけど、自分が奢るなんて言ったら遠慮するだろうからな。不良品をもらったことにでもしようか。

「いいか、顔出してもいいけどカラスが見えたらひっこめろよ。」
「はーい」
 さすがに目立つし試作段階でアンドロイドは一般家庭にまだ売りだされていないので人間と同じ服を着て、伊達メガネで年をごまかす。
 ガキっぽい玩具買うならちょっとでもふけて見られた方がいい。あの年で子供持ちなんてと冷たい目で見られるのが関の山だからだ。今の時代、弟のを買ってるとみてくれる人は少ない。

「ますたーさ、くればさ、よかったのにね。」
「忙しいなら仕方ねーだろ。」
「がっこうさ、わるいやつだよね。ますたーさ、すっごくさ、たいへんそう。」
「う~ん…あれは自業自得…自分のせいって奴だ。学校で出さなきゃいけなかった宿題を出し忘れて宿題増やされてんだから。」

 学校をそういう名前の悪い人だと思っているが、面倒なので放置する。そのうち新学期が始まる前には説明しないとな…。カイトと帯人はマスターに何かあっても大丈夫なように家に居るからこれを留守番させるのは問題ないが、毎朝泣き別れでは大変だ。

「あ!すずめ!もっとちかくでみたい!」
「頭の葉っぱ食われちまうんじゃねーの?冬は食いもんすくねーんだろうし。」
「ごはんがさ、たべれないの?すずめがさ、かわいそう・・・」
 だからって頭の葉食わすことねーぞ。大体それに毒がないとも言い切れねーし。
「大丈夫だって、ほら。」

 近くの家の庭に、えさ箱がある。リンゴも刺さってる。
「ああやって鳥を見たさにえさを用意する奴もいるし、そうじゃなくても探せば食べ物はある。見てないだけで食べれるものはたくさんあるんだぜ?例えばそこのたんぽぽも苦いけどてんぷらにして食えないこともない。」

 タンポポの天ぷら。そんな食い方があるとテレビでやっていて、面白半分にマスターが作ったことがあった。おもしろそうだと思えばやる。好奇心は我慢するな。そういう人である。

「おいしい?」
「…好みが分かれる味、かな。」
 山菜系や野草系は好き嫌いしないカイト以外はだれも食べられなかったりする。
「あのさ、それさ、食べてみたい、かも。」
「お前は食えるかもな。」
 葉っぱははえてるけど見た目カイトだし。

 そんなこと話してたらおもちゃ屋についた。
 テレビゲームはサイズ的に無理。DSとかはできないこともないが、本人が気に入らない。パソコンで宿題することが多いマスターをみてどうにもこういう形のモノが好きになれないらしい。

 ついでにままごとの食器を買うことにする。サイズ的にこいつのにちょうど良さそうだからだ。こいつには小さすぎるモノからちょっとでかすぎるモノまで多種多彩にあることは驚きだ。

「これがいい!」
 欲しがるのはプラスチックでできた単純なおもちゃ。コンビニでもあるしすぐに壊すか飽きるような奴。せっかくおもちゃ屋まで出向いてそれか。

「どうせすぐ飽きて他の似たようなの欲しがるからダメ。コンビニで買えるようなのよりこういうの欲しがれ。」
 戦隊ヒーローの人形や、ロボットの人形なんかがあるコーナーを指さす。今日の朝キャーキャー言ってたし、たぶん明日も違うヒーローものを真剣に見るんだろうな…

「わあ!ねえねえ、きょう、わるいひととさ、はこのなかでさ、けんかしてたひと!」
 目を輝かせていた。
「これにするか?」
「う~ん・・・あ!あれなにー?」
 次はボールに目を向けた。カラーボールくらいなら遊べるか?

「ぼーるだな。投げたり、転がしたりする。」
 ちびと同じくらいのカラーボールはまるで大玉転がしができそうな大きさだ。一人じゃ無理だが。
「一回店を回ってから決めるか。」
 全部のコーナーを回り、最終的には何かのアニメのキャラクターなのか、デフォルメされた白いアザラシの小さな人形を買うことになった。ちびからすれば抱き枕サイズか。

「これ、貰ったことにしろよ。」
「なんでー?」
「俺が買ってやったっていうと、うるせーから。男同士の約束だ。」
 最後にインターネットで見せたヒーローのセリフを付け足した。
「かっこいい!おとこどーしの、おやくそく!わかった!ぼくさ、ぜったいますたーにさ、いわない!」
 流石、子供には効果抜群だ。

「そういえばさ、かいとおにいちゃんがさ、ひーろーしてるのはさ、なんでさ、みせてくらないの?おにーちゃんさ、いえからでないのにさ、いつけんかしにいってるの?」
「あー…あれはもっと大きくなったらな。あとあれはうちのカイトじゃない。別の人んちのだ。」
「おにーちゃんのー、そっくりさん?」
「そんなもんだ。」

 ついでにマスターが用事があって今日変えてこれないというのを泣かないように気をつけて説明してやる。
 友達が困っていて助けるために1日帰ってこれない、と。ヒーローものも見せた効果か、涙目になったが聞き分けがよかった。
 嘘は言ってない。宿題合宿ったって、殆どマスターのを他の奴が写すんだから。帯人の教え方がうまいのか、成績は悪くない。

「ただい…「あかいの!ますたーが、ますたーが、たおれてたくせに、でてっちゃって…合宿で明日まで帰ってこないって・・・!」
 …ちびは泣かなかったらお前か。
 家からカレーの匂いがするから大体察しはついた。
「ぶっ倒れるくらいなら無理して作んなくてもいいのに。」

 でもそこがかわいいと思ってしまう俺がいた。…兄馬鹿か。
「大丈夫だろ。家に居た方が子の場合は衰弱するだろうし。」
「でも…」
「連れ戻してカレーの匂いで倒れれるよりたまにはだちとのんびりさせた方がいいに決まってる。体力はねーけどお前よりは丈夫だ。」

「…うん。」
 落ち着いて、部屋に戻る。
 台所の鍋には俺の為に作られた辛口のカレーと、カレーが食えない奴の為には肉じゃがが作られていた。シチューじゃないのは、ビーフシチューをこの前作ったばかりだからだろう。

 辛口のルーぐらいじゃ辛さが足らないけど、マスターのカレーは何故か物足りなさを感じない。
 外泊の時にはいつも無理して作ってくれるのがうれしい。
「そういえばもうすぐ正月か…」
 マスターが実家に帰るときはまたカレーとともに置いていかれるのだろうけど。
 置いていかれるさみしさの半面マスターのカレーを楽しみにしている自分がいた。

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「亜種注意」手のひらサイズの彼 その⑩「KAITOの種」

http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=onにて。
ホントはアカイト視点で買い物にちょっとだけはしゃぐマスターが書きたかったはずだったのになぜかこうなりました。
後、ここで書く気なかったとりみだしてる帯人も書いちゃいました。マスターに何かあると普段はアカイトとウノしたり本読んだりで無関心であろう彼がギャーギャー言うのがかわいいです。(この家の帯人だけだ、そんなに絡まない帯人は
拗ねるけどヤンデレないのは家族は別枠だからです。一緒に住んでない人に対しては近づくなとか脅したりとかやります。そのあたりもそのうち書きたいなぁ。
まあ新学期始まるまではヤンデレないか?…いや、合宿行ったからどうだろ。
とりあえず自分も宿題せねば。あ、年賀状書いてねぇ(オイ

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投稿日:2009/12/26 23:15:10

文字数:3,889文字

カテゴリ:小説

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