住宅街の夜の道を、並んで歩く影二つ。
「はむっ……。んぐぅ……今日の肉まんは蒸し加減が足りないなぁ。」
「コンビニの肉まんに何を求めてるのよ、ハク……」
「むぅっ」
雪のように真っ白な、腰まであるポニーテールを揺らしながら、ハクと呼ばれた女性は一歩大きく踏み出して、隣の人物に向き直る。
「なぁに言ってるのよルカぁ、わかってないわねぇ。」
桜色のストレートロングの髪をカチューシャでまとめた、ルカと呼ばれた女性は、ハクの事など気に留めず自分の肉まんを一口。
「コンビニの肉まんと言えどねぇ、作る人によってふかふか具合が違ったりするのよぉ。それに最近の冷凍食品って――」
後ろ歩きで自分の前を歩きながら肉まんについてアツく語るハクを眺めつつ、肉まんをもう一口。
「わかったぁ!?」
「あーあーはいはい、ハクが肉まんを愛してることはわかったわ。」
「聞いてなかったでしょぉ!?」
むくれるハクと、微笑むルカ。二人の手には紙袋。
――――今日は2月14日、バレンタインデー。
【雪と桜のバレンタイン】
「さてとぉ。」
ギターやキーボード、ドラムなど、楽器が雑多に置かれた、ハクの部屋。ドラムチェアに器用に胡坐をかいたハクが紙袋の中身を一つ一つ取りだし、ルカに渡していく。ルカは渡されたチョコをテーブルの上に一通り並べたあと、手近なアンプに腰掛ける。
「どれが誰のだっけぇ?」
「ええっと、とりあえずKAITOさんはそれね。」
「ああうんー、それは覚えてるよぉ。」
小さな赤い袋に、チ○ルチョコが2つ放り込まれる。
「まぁ、KAITOさんだしね。」
「うん、KAITO君だしねぇ。」
基本的にKAITOはこういう扱いである。
「こっちのは?」
「それはレン君かなぁ。」
手のひらより少し大きいくらいの、ハート形の箱。
「レン君はリンちゃんからもっといいもの貰いそうだねぇ」
「ラブラブだもんねぇ」
リンに聞かれたら全力で叱られそうな会話である。
「次は――」
φ
それから、あれはこれはと話しながら、箱を包装紙で包んでいく。
「……ハク、これは?」
ルカが手にしたのは細長い箱。チョコが入ってるにしてはずっしりと重い。
振ると、カラカラと乾いた音がする。
「あ、あーははー。ルカは関係ないよぉ。気にしちゃだめよぉ?」
同じくらい乾いた笑顔で箱をひったくるハク。
――に、一瞬で肉薄するルカ。
「誰に、あげるの?」
「ルカぁぁぁぁ目が怖い目が怖い笑ってないよぉぉぉぉ!?」
「ハクに想い人が居たなんて知らなかったわ……。」
溜息をつくルカ。観念したように、ハクが例の箱を開ける。
「違う違う……マスターにちょっとしたイタズラをねぇ?」
「……なにこれ?」
「爆竹。」
「やめときなさい。」
「だからルカぁぁぁ目が怖いってぇぇぇ!?」
一通り争ったあと、例の箱は茄子がデザインされた袋に詰められたことをここに記す。
φ
全員分のチョコレートを詰め終えて。
「ねぇ、ルカぁ?」
「んー?」
疲れたので紅茶でもと立ちあがったルカに向かって、ハクが声を投げる。
「はい、これぇ。」
手渡されたのは、雪色と桜色、2本でセットになった、革製のブレスレット。
「……へっ?」
「えへへぇ、はっぴぃばれんたいんー」
笑うハクの腕にも、同じブレスレット。
「ちょっ……えっ……!?」
目を白黒させるルカに、ハクが追撃。
「バレンタインはぁ、大切な人に贈り物をする日らしいよぉ?」
「なぁっ……!?」
ルカの反応を楽しむかのように、
ハクが止めを。
「あたしの想い人はぁ、今も昔もルカだけだよぉ。」
ぴしっ
見事にフリーズするルカと、ニコニコとそれを見守るハク。二人の手にはブレスレット。
――――今日は2月14日、バレンタインデー。
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