私は生きていく・・・。
今後も、そしてずっとずっと先まで。
ある人の魂と一緒に・・・。
朝起きてみると私は私でなくなっていた。
名前も思い出せない。
何も思い出せない。
・・・ただ一つ覚えていることがある。
私は自殺した。手首を切って。
そしてこの体に”リンネ”した、ということ。
だから私の名前はリンネ。
私には好きな人がいる。その人の名前は上田陽介、高校の教師をしている。
私とは違う高校の先生。なんで好きなんだろう・・・。わからない。
何の考えもなく、夕方の街をうろついてみる。
私がどこの高校に行っていたかもわからない。
ただ、制服を着てうろついている。
上田陽介を探して。思い出して欲しくて。
「・・・っ!」
上田陽介を見つけた。
私は何の気もなく後をつけてみる。
上田陽介、愛しの陽介、私だけの陽介・・・。
上田陽介が河原に来ていた。何をしているのだろうか。
驚愕の光景だった・・・。
「ごめん、待った?」
「いや、全然」
上田陽介が女と会っている。誰?
それだけでは終わらなかった。デートだった。
「許せない・・・」
そう呟いて、後をつけ続けた。
地下鉄の駅のホームで、上田陽介は女とキスをしてから別れた。
私はもう限界だった。
「う、上田陽介!!」
駅のホームから改札に抜ける通路で上田陽介は振り返った。
「え、誰ですかあなた」
「ちょ、ちょっとそこのベンチに・・・」
上田陽介はすっと隣を開けて座った。
「どうぞ・・・」
隣を開けて座った上田陽介に私は覆いかぶさった。
「な、何をするんだ」
そのとき、私の頭の中に声が響いた。
(殺せ・・・殺せ・・・殺せぇぇぇぇぇぇ!)
私は上田陽介の首を絞めた。強く。さらに強く。
上田陽介が声にならない声を上げて顔をしかめる。
「教えてダーリン!!ダーリン!!あれは誰?誰なのよ?」
私が言いたくて言った言葉では無かった。言わされていた。
「・・・!!思い出した!!凛子、わかった説明する。だから離せ・・・」
なぜか私のものでは無い記憶が蘇る。
赤松凛子は自分の高校の教師、上田陽介と付き合っていた。上田陽介は優しく、男らしい一面もありそのギャップに惹かれていた。
大好きだった。愛していた。
いつも「きれいだね」と黒髪と泣きぼくろを褒めてくれた。
結婚の約束までした。
しかし時間とともに、上田陽介から連絡がこなくなり・・・。
さらに、他の女子生徒とも付き合ってるのを知って、手首を切り自殺した。
「凛子・・・凛子・・・り、ん、こ・・・」
私の顔が凛子に見えたんだろうか、凛子の名前を呼びながら上田陽介は息絶えた。
あれから数ヶ月、まだ私の本当の名前は思い出せない。
あの事件はニュースになることもなく、時は過ぎていった。
私は赤松凛子の墓の前で手を合わせる。
「さて、学校行かなきゃ・・・」
少しずつ思い出してきたこともあるけど、私はまだ”リンネ”のままだった。
一人哀れに歩めや少女・・・。
リンネ
ボカロ名曲小説二作目、ハチさんの名曲、リンネを小説化しました。
このネタはパラジクロロベンゼンと共に思いついたネタで、同日投稿になりました。
男として上田陽介みたいな人間にはなりたくないです・・・。
この作品へのご意見、ご感想喜んでお待ちしております!!
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