#4「GUEST-ゲスト」



GUEST(名):来客





東の空から、日が昇る

結局……私もグミも一睡もしなかった

私は眠ることで、自分の中の本能が目覚めそうで、怖くて仕方なかった


「朝ですね……さぁ、リリィ様、参りましょうか」


グミが立ち上がり、座っている私を上から見る


「ど、どこへ……」


私の目の前にいるグミは……私の知っているグミじゃない……

でも……私も……本当の自分じゃないのかもしれない……


「街に行きましょう」

「……いや。私がいつ化け物になるかわからないもの……」


私は膝を抱えて小さくなってうつむく


「リリィ様……」


グミが私に近づいて、肩を抱く


「やめて……あんたはグミじゃない……」


私はうつむいたまま、そういった


「いえ、私は私です……」

「私の知っているグミはそんなんじゃない……私の知っ……グミぃ……一人にしないで……」


私の肩が震える、涙が止まらない








「……リリィ、ごめんね。」


今までの落ち着いた声だった声から、1トーン高くなった聞きなれたグミの声が聞こえる

私は思わず顔をあげる


「ごめんね……私だって、本当は……ずっとリリィと馬鹿やってたかったよ」


グミの目には朝日で光るものがあった


「でもね……これが私の使命なの。役目なの。」

「どうして?!グミの役目は私に命をささげることなの!?そんなの絶対に間違ってる!」


私のために……しかも、私がなりたくないものになるためにグミが犠牲になるなんて……


「間違っていたとしても……これが運命なの。リリィが、この世界を統一してくれないと、私たちの種族は絶滅しちゃうの!」


そういうと、グミの目が深紅に染まり、折れ曲がった角が生える


「本来の私たちの世界はもうずっと前に消滅してしまって……こんなふうに人間に擬態できる種族だけがこうして、かろうじて生きている」


グミが自分の体に手を当てながら必死に私に訴えかける


「けれど……私たちの種族は、この世界は適合しきれないの。こんな姿を人間たちが受け入れるわけはないでしょ?このままじゃ、いずれ私たちの居場所はなくなるの!」


それは……そうかもしれない……

昨日の自分は、私自身でも受け入れらないのだから……




がさっ!

その時、私たちの後ろで草木が揺れた


「誰!!」


グミは異形の姿のまま……誰かに見られたら……

私は急いで、揺れた草のもとにいく


すると、そこには、おびえる目でグミを見る人間の一人の少女がいた


「リ、リリィお姉ちゃん……グミお姉ちゃん、どうしちゃったの……」


そして、その子は街でお世話になっている薬屋の娘で、私たちが可愛がっていた子でもあった

手には、山で採取したと思われる薬草を握っている


「リリィ!その子を私に渡して!」


私の後ろでグミが慌てた声で叫ぶ


「……グミ、何する気?」

「その子をそのまま帰したら、私たちの存在が危うくなる!仕方ないけど……口を封じるしか」


グミが爪を鋭利にしていた


「駄目だよ!」


当然、私はグミをとめようとする


「私たちは、こうしないと生きられないの!だからこそ、リリィには完全に覚醒してもらって、世界を統一してもらわないと困るの!」

「だからって、この子には何の罪もないのに!」


私は少女の前に立ちふさがる


「早く逃げて!」


そして、少女に向かって叫ぶ

少女は、うなずくとふもとに走っていった





グミは真剣な目つきで私をじっと見ていて、あの子を追ったりはしなかった

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BRIGHT #4

グミの言い分もわからなくはない

リリィの気持ちもわからなくはない

これから彼女らはどうするのだろうか

閲覧数:114

投稿日:2013/12/11 20:09:35

文字数:1,532文字

カテゴリ:小説

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  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    人間の傲慢さは結局どこでも変わらないというね……
    でも情報操作できるなら記憶だけ消せと!

    2013/12/13 14:33:11

    • しるる

      しるる

      けど、別に人間側も悪いわけじゃない
      誰も悪くない……けど、だからこそ、誰かを悪にしないと生きていけないのが人間

      2013/12/13 16:24:23

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