そして、そのころ、雅彦の部屋。
「安田教授、夜遅くに申し訳ない」
幸田が雅彦に連絡をして来ていた。
「幸田さん、どうされたんですか?」
「…いえ、昼間、沢口さんの墓参りの時の安田教授の精神状態が非常に危うく思えたので。大丈夫ですか?」
心配そうに話す幸田。
「幸田さん、心配かけて申し訳無いです。今は大丈夫です。涙は涸れるまで泣きました。今は、前を向いて歩くことを考えています」
そういわれ、幸田は安心したようだった。
「そうですか。それは良かった」
「…沢口さんのことで、ミクには頼りっぱなしです」
苦笑しながらいう雅彦。
「良いじゃないですか。いざという時に頼れる人がいるというのは素晴らしいことですよ」
「そうなのかな?」
「そうですよ、安田教授、そのことは誇って良いことです。そういう人は、得ようとして得られるものではないですからね」
(沢口さんのことでミクだけじゃない、みんなに迷惑をかけているな)
そんなことを考える雅彦。
「私が心配していたのはそれだけです。それでは、夜分にすいませんでした」
「いえ、幸田さんこそすいませんでした」
「安田教授は気にされる必要はありませんよ」
笑顔で話す幸田。そういって連絡は切れた。
(…これで、人類のパラダイムシフトは終わったな)
雅彦の話を受けて、考える雅彦。幸田自身のライフワークともいる人類のパラダイムシフトを追う仕事は、沢口の死で一区切りしたことになる。とはいえ、これで終わりではない、いや、むしろ、これからが今以上に忙しくなる可能性もあり得る。神田の起こしたパラダイムシフトや、雅彦がとってきた行動の意味は、これから問われることになるだろうから。
(…これから何をするか、考えていかないといけないな)
そんなことを考え、何をすべきかリストアップする作業を始める幸田。そのリストアップする作業に集中しながらも、頭は他のことを考えていた。
(安田教授には、本当に色々と感謝しないといけないな)
そんなことを考える幸田。幸田がジャーナリストを初めて、どのジャンルを追うかを考えていた時に出会ったのが雅彦だった。雅彦に会い、色々と話をしていく中で、雅彦の人間性に触れる機会を得ることができた。そして雅彦の過去を調べた結果、人類のパラダイムシフトを起こしたのが雅彦としった時、自分はこの人を追うべきだという使命感を感じたのをまるで昨日のことのように覚えている。幸田は今でもその判断は間違っていなかったと考えていた。そして、幸田は人類の転換点に生きることができた幸運を感謝した。恐らく、このパラダイムシフトは過去の人類の歴史に何度もあり、そしてこれからも存在する人類の転換点の一つなのだろう。そして、こんな時期に生き、そしてジャーナリストとして活動できるというのは、狙ってできることではないし、ジャーナリストの腕前でどうにかなるものでもない。いつの間にか幸田は何をすべきかをリストアップする作業を止め、考えにふけっていた。
(とりあえず、これからも安田教授のことを追っていけば、食いっぱぐれることはなさそうだな)
そんなことを考える幸田。とはいえ、幸田ほどのジャーナリストとしての腕と有用な情報をかぎ分ける能力あれば、どの分野でジャーナリストをするにせよ、困ることはないだろう。
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