☆*゜・。

 あらかたの説明を終えると、来緒は満足げにソファの上にあったクッションを抱きかかえてあくびをした。
「…どう?協力…してくれる」
「…。…はい。協力しないと危ないみたいですし…。いいですよ」
「よっしゃあ!!」
 嬉しそうに立ち上がってガッツポーズをとる来緒はクッションを投げ飛ばして、仲間たちへ報告しに向かおうとして、立ち止まった。触れていない扉が、開いたのだ。部屋の中に、赤みを帯びた茶髪の青年と青い服装の少女が入ってきて、元いた二人に近況報告をした。
「やっぱりあのクソアマ共の考えだった。…叩き潰してやる」
「…こっちもやっと進展があった。…ね?」
「ああ。コイツもやっと分かってくれたぜ」
 胡坐をかいて怜の頭をぽんぽんと軽く叩いてみせると、来緒はレンに同意を求めるように視線を向けた。
「は、はい…」
「怖がらなくてもいい。俺たちはお前の仲間の…そうだな、兄弟みたいなもんだ」
「兄弟…ですか?」
 少しだけ顔を上げた怜に答えたのは芽衣斗ではなく、後ろで扉を閉めていた海子のほうだった。
「っそ!例えばそこの緑色のは未来ちゃんのお兄さん、流騎は流香ちゃんの弟だし、私は海翔お兄ちゃんの妹」
「でもって俺が芽衣子の兄貴」
 胸を張っていった芽衣斗に、怜は少し安心したのか柔らかい表情になった。
 と、そこに不思議な音楽が流れ出し、皆が芽衣斗のほうをにらみつけた。すると芽衣斗が少し慌てたように上着やズボンのポケットをごそごそと触りだし、やっと何かを見つけたように黒い携帯電話を取り出した。芽衣斗は携帯電話の呼び出しに応じてその場で会話を始めると、ろくに相手の確認もしなかったのだろう、相手が誰なのか分かるやいなや眉間に深いしわを入れた。
 低い声で会話を続けると、芽衣斗はいきなり携帯電話の通信をきって、自分の携帯電話に向かって叫んだ。
「ふざけんじゃねぇ!!あのクソアマァ!!」
 そういうと、手に持っていた携帯電話を床へと力いっぱいにたたきつけた。携帯電話はバキッと音を立てて真っ二つどころか粉々に、バラバラに破壊されてコードを通る電流がバチバチと小さな火花を散らしていた。
「めーくん、どうしたの?」
「あの野郎共、こっちに来るとか言い出していやがる。どうする、変な行動を起こしたら――」
「どうしたんですか?」
 不思議そうに芽衣斗を見上げる怜に、芽衣斗はとく関心もなさそうにけれど少しの望みをかけて、こういった。
「―――…。お前、頭いいのか?」
「…人並みくらい…」

 地図の場所は深い森の奥を示していて、五人はその目的地へと向かっていた。
 深い森の中には苔むした石ころや、足が引っかかってしまいそうに出っ張った木の根、ぬるぬると粘り気を持ったツタなどの障害物となるものが多く、五人はそれをうまくよけながら走っていた。
 家を出てから一、二時間は走っているのではないだろうか。もはや道とは呼べない道を走っていると、ようやく目的地と見える洋館らしき建物が見え、皆が少しスピードを落としてその洋館の前に立った。
「――それじゃあ、私は裏口を探してみるわ。皆、気をつけるのよ」
「僕も、どこか抜け道になりそうな場所を探してみる。大丈夫かな、女の子だけで」
「安心なさってください。私が責任もって二人を守って見せますわ」
 そう確認をすると、仲間たちはそれぞれ屋敷の周りへ行くものと屋敷へ真正面からすすむものとに分かれた。

 木から木へ、飛び移りながら芽衣子は考えていた。
 一体、何のつもりで相手はこんなことをしてきたのだろう?このような屋敷に住んでいるのならば相当の金持ちか権力者だろうが、そのような人間が何の目的で普通の少年を誘拐して、その家族に誘拐場所を示した地図を送り、そこまで導く。この行動に、一体何の意味があるというのだろうか。何かを要求してくるわけでもなし、何をするつもりか。まさかとは思うが、星の力が人間にばれたのではあるまいか。そうだとしたら、この場には何らかのトラップが張り巡らされているに違いない。気をつけなければいけないな、と芽衣子は心に命じて走っていた。
 と――
「きゃっ」
 コケだらけの枝に足を滑らせ、不幸にも木の高いところを走っていたものだから、そのまま真っ逆さま――その瞬間頭上からがさがさと音が鳴ったかと思えば、手首を大きく暖かい手がつかんだ。そうして一気に自分の体を持ち上げられ、わけもわからぬままに芽衣子は呆然とするしかなかった。
「あっ…ぶねぇ…」
 そこにいたのは自分によく似た短い茶髪の気の強そうな青年が自分をお姫様抱っこする状態で、芝生の上にしゃがみこんでいた。その顔はよく見知った顔で、一時は彼しか信じられないときもあったほどで――
「芽衣斗!?」
「よお。芽衣子、久しぶりだな」
「な、何でここにいるの?」
「…うんと…ここが、俺らの家だから」
 あたかも当たり前というように芽衣斗が発した言葉に、芽衣子は理解をするために数十秒を要した。しかし理解をした後の芽衣子の行動は素早く、
「芽衣斗!ねえ、怜を知らない?金髪の…そう、一度だけ会ったことがあるでしょう。あの双子の男の子のほう――」
「ああ、知ってる。…来い、会わせてやる。けど、途中で仲間を見かけても話しかけんな。その瞬間、お前は一生あの子供と会えなくなる」
「は?」

 一応、屋敷の周りを見渡せるように屋敷の屋根に上がってみたものの、特に収穫もなくその場を離れようとしたときだった。
「お兄ちゃん」
 後ろから可愛らしい高い声が聞こえて、海翔は振り向いた。その響きは懐かしく、可愛らしいダイスキな妹の声で、その妹は自分の背中のほうで優しく微笑んでいた。
「海子…」
「…ねえ、今は時間がないの。理由を聞かないで、協力してくれない?それで怜君も助かる」
「海子?何を言って…」
「お願い、私たちの未来がかかってるの」
 その瞳は真剣そのもので、まるで追い詰められたように海子は有無を言わせぬ剣幕で海翔の手を引くと、流香たちが入っていった扉とは逆の方向へと走り出した。

 巨大な螺旋階段と大きなステンドグラス、玄関横にあるコートかけも全てが高級そうに見えてくる、魔力のようなものを感じてしまう。三人は玄関から入り込んで、どこへ行ったものか、うろうろしていた。と、上から何か聞き覚えのある声が飛んできた。
「――未来!よお!流香さんも、チビも久しぶりだな!」
「来緒?何でここにいるのよ?」
「こっちに来たらわかるさ。来いよ、お前らの目的、達成させてやるから。その代わり、俺たちにも協力してくれよ」
 そういうと来緒は螺旋階段の上から三人に手招きをして、すぐの扉の中へと姿を消してしまった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

満月の夜に Ⅵ

こんばんは~
夏休みに入ってもまったく作成ペースが上がらない不思議…ッ!
ここで一つ、アンケートをとりたいと思います。
Q,今、私はこの物語が終了してから、何の物語を書こうかと考えています。貴方が書いて欲しい、書いたらいいと思うもの、あるいは考えに一番近いものを選んでメッセージをください。

A,
1,この物語の続編。
2,『鏡の悪魔シリーズ』の続編。
3,新シリーズをはじめる(その場合、音楽団で考えていこうと思っています)

明日の投稿までに答えを書き込んでいただければ、集計して発表します。
メッセージは個人宛でも、作品に対してでも良いですよ。
それでは、よろしくおねがいします><

閲覧数:360

投稿日:2009/07/27 23:03:54

文字数:2,785文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

    その他

    みずたまりさん
    回答、アリガトウございます!
    これで誰も回答してくれなかったら、凄い恥ずかしいなぁと思っていたので…。
    ファンだなんて!!アリガトウございます><
    鏡の悪魔シリーズの続編は頭の中で大体構成が出来上がっているので、一番を選択されるより楽でいい(←手抜き
    お願いされます。お願いされます!!!

    2009/07/28 13:13:59

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