第八話 

7人は川沿いを走っていた。

「ねえ、あそこ見て!」

リンが指差した先には、川に沿って風車が道を作っている。
色とりどりの風車が風が吹く度にまわり、とても美しい光景が広がっている。

「すごく綺麗…。だけど、なんか寂しい感じがするね」
「そうですね。何がそう感じされるんでしょうか…」
「僕はこの風景をバックにしたハルちゃんの美しさでもうs…「ちょっと黙って」
「ミク姉…」
「あ、すみません」

リンはすれ違おうとしていた銀髪の長い髪の女性に話しかけた。

「はい。なんでしょう」
「あの、ここの川の風車って誰がつくったものなんですか?」
「全て私がつくったものですよ」
「え!?そうなんですか!?」
「えぇ」
「すごいですね。こんなにたくさんの風車を一人で…」
「私がしてしまったことに比べたらこんなことは…。全く何の償いにも…」

そう言うと、女性はうつむいてしまった。
ミクは遠慮気味に聞いてみた。


「あ、あの…。何かあったんですか?」
「これは…、7年前のことです…」


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

「綴(テイ)!ちょっとこっち来て!」
「はーい!…きゃ!?」

慌てて走り出した所為か、私はこけてしまった。
こけた私は、ろうそくの乗っている棚にぶつかってしまい、ろうそくが落ち……。

一気に燃え広がった。

私には両腕がない。
火を消すことができないまま、私は逃げることしかできなかった。

二階で私を呼んだ母さんはどうなったのか。

もし、死んでしまうようなことがあったら私のせいだ。

「避難してください!早く!」

と言っても、ここは商店街がたくさん集まっている地域のため、声が届くはずもない。
鐘を鳴らせば早いのだが、私には鐘を鳴らす腕もない。

届かないと分かっていながら「避難してください」と叫び、街に背を向けて逃げる。
所々で「火事だ!」と叫ぶ声がする。

ごめんなさい。私のせいなの。

火消も駆けつけ火は収まったが、亡くなった人の人数は何人になったのだろう。


私はずっと川岸に座って泣いていた。

自分の責任から逃れたくて。



数日後。

私のせいで随分と焼け野原になった。

亡くなった人の人数は9人だそう。その中に母もいた。

私が9人の命を奪ったんだ。
しかも、私を生んでくれた自分の母の命も。

法に触れないとはいえども、こんなの殺人鬼だ。



私はどうすればいいの?

ねぇ。

教えてよ。


気づけば、いつも私は川岸で泣いていた。

こんなので罪滅ぼしになんかならないのに。

泣いていると、隣に近所のおばあさんが腰を掛け、私に語りかけるように話しだした。

「この辺りに伝わる昔話なんだけどね。好きな人を殺すように上司に命じられて、殺しちまうんだよ。
そいつは罪を嘆き、苦しむ。そこで、罪滅ぼしにとメッセージを書いた風車を川岸に毎日さしていったんだ。そこからきてるおまじない。名前を書いた風車を川岸にさして、毎日お祈りをすると謝罪の意志をその人に届けることが出来るんだよ」

「おばあさん」
「何だい?」
「私、それをやる。私が殺してしまった9人の人たちに毎日祈りを捧げる」
テイの目には強い誓いの光がみえた。
それを見ておばあさんは笑顔で
「そうしなさい」



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

「こうして、私は毎日9本の風車をさしに来ているんです」
「風車なんて、どうやって作るんですか?」
「足で作ります」
「器用なんですね!」
「そんなことないですよ」

と、いいつつテイは嬉しそうだ。

「でも、さすがに足で風車をさすのは失礼なので、通りかかった人にやってもらっています」
「私、さしたいです!」

リンがシュバッと手を挙げる。

「ありがとうございます。お願いします」

リンはテイが肩から下げている巾着から風車を出し、川岸に9本さした。
風が吹き、新しくさした風車がたくさんの風車と共に回る。

「では、さようなら」

テイは会釈をすると小走りで去っていった。

「風車にこんな意味があったなんて…」

レンが回っている風車を見つめる。

「そうね」

ルカはそれだけ言うと、風車の羽部分を見る。
そして目を伏せ、合掌した。


「じゃあ、行こうか」


風車が回る川沿いを、7台の自転車は走っていく。







次回に続きます。







ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

千本桜 ~脱走姫様~ 第八話

急にシリアスものが書きたくなったので…w

テイの過去がものすごい事になってますが。

こういう場面ではメイコ姉さん静かそうだなと思ったので、セリフは0です。


今回は前奏の風車のシーンをもとにして書いたので、サブタイトルはないです。

千本桜
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15630734

本家様

閲覧数:385

投稿日:2012/05/30 21:20:14

文字数:1,891文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    私、結構、終盤まで、風車を(ふうしゃ)と読んでましたwww
    一人なのにつくるとか、すごいな!とか思ってましたww
    それこそ、オランダのイメージでしたねwww

    私、テイは好きなキャラですww
    なんというか、純粋なテイは始めてみましたwww

    2012/05/30 01:20:55

    • june

      june

      流石に無理だwwww


      テイは器用なイメージがあったので、足で一日9本風車作れるやろww
      と思ったんでw


      大体テイは病んでるか、変わってる人に書かれていますね……w

      2012/05/30 21:08:57

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