森の中を彼女たちは歩いていた。
静かな森で、迷ってしまった彼女たちは腹が減っていた。
「もう限界だよーー。おなかすいて死んじゃうよぉ」
初音ミクが腹を押さえてつぶやく。
そうは言いながら、ここで止まってしまってもどうにもならないということは彼女もわかっているようで、歩くのはやめない。
それを聞いた巡音ルカは少し微笑みながら言う。
「大丈夫。もし本当にまずい状態まで陥ったらカイトの体をみんなで食べればいいんですもの」
メイコはルカの意見に首を縦に振る。
カイトは弱弱しい困り顔を浮かべながら言う。
「お前たちが言うとほんとにしそうで怖いんだが・・・」
横で会話を聞いている鏡音二人は前を向いて目を輝かせた。
レンが前方を指差しながら言う。
「見ろ!あれは・・・レストランって書いてあるぞ!助かった!」
それを聞いた一同がレンの指差す方向を見た。
同じように、皆目を輝かせた。
「た、助かったぁぁ!!」


レストランを見つけて、走ってそこに向かった一同。
さっきまで失いかけていた希望が、一気にあふれた瞬間であった。
中に入ってみると、案外殺風景なところだった。
しかし、こんな人里はなれた森の中にレストランがあること自体彼女たちには救いだったので、そんなことは関係なかった。
入ってみると、奥にひとつ手で開けるドア。
その前に立て札も立ててある。
その立て札には「このドアに入ったら、まずは男女に分かれてください。入って右手のドアが男、左手に女でお願いします」と書き記されていた。
先頭にルカがいるので、ルカは後ろの仲間に目で確認をとり、ドアを開ける。
すると本当にドアの向こうには、二手に分かれたドアがあった。
他にはドアなどは見当たらない。
二つのドアを確認し、メイコが切り出す。
「じゃあ、男女で分かれましょうか。とりあえず、カイトとレンは右にいくのよ」
そうすると、はいはいとカイトはさっさとドアの向こうに行ってしまった。
「あ、待ってくれよ~~!!」
レンもそれを見てあとを追いかける。
男二人が他の部屋に行ってしまって、他のメンバーはしばらく静まった。
沈黙をかき消すため、リンが口を開く。
「じゃ、私たちもいこうよ。おなか減ったし、早くいこーよ」
「そうね。じゃ行きましょうか」
女子全員が合点し、再び動き出す。
今度はリンがドアを開けた。

そのドアの向こうには、なぜか脱衣所のようなつくり。
しかも、本当にその向こうにあるのはプールのシャワーのようだ。
またも、そのシャワールームの前に立て札がある。
「ここで衣類をお脱ぎください。あちらに再び衣服をお戻ししますので、タオルを巻くなりしてシャワーをお浴びください」

皆が疑問に思った。
レストランに果たしてシャワーは必要あるのか。
しかし勝手にミクが解釈する。
「きっと森の奥にあるから、体とかが汚れてるからじゃないかな。ここで体もきれいにしておなかいっぱいで帰って、みたいな。ここまで徹底してるなんて、すごいなぁ」
それを聞いて、またも疑問が晴れた一同。
「すごいな、やっぱ。ここでやってけるほどの人に対しての気遣いはあるね」
ルカはそういいながら豪華な衣装を脱ぎだす。
「あ、ルカに先手はとらせないよ!私もっ、えいっ!」
リンも負けじと服を脱ぐ。
女子4人が楽しそうに服を脱ぎ、タオルを巻く。
シャワールームに向かう一同。
「あれ?なんでルカはタオル巻かずに来たの?」
ミクが幼い質問をルカにする。
それにはルカはにっと笑顔を見せるだけで、何も言わない。
メイコがミクの耳元でそっとつぶやく。
「あのね、ルカ姉さんはご自慢のお胸をさらしているのよ」
ルカは少し苦笑いし、シャワーをくぐっていた。

シャワーをくぐり終わり、抜けた部屋には大きなドレッサーがあった。
ドレッサーは、軽く5人は入りきるほどの大きな鏡で、その前にはありとあらゆる化粧品がおいてあった。
立て札がまたあった。
「お疲れ様でした。ここで化粧をしたら、ドレッサーの向かいにある個室にひとりずつお入りください。ここで先ほどお預かりした衣服をお返しいたします。では、個室の先でお会いしましょう」
いよいよ料理のにおいがしてきた。
ミクたちは化粧をしていないので、ドレッサーには特にお世話にはならなかった。
そして、個室へ向かうことになった。
「誰がどこに入る?特に指定はないみたいだしさ。私はどこでもいいよ」
ミクが皆に問いかける。
すると、誰もそれに答えることなくさっさと部屋を決めた。
まるでその部屋に引き込まれるかのように。

「私は、ここでいいわ」

「私はここにする」

「じゃ、私ここで」
ミクの方には顔を見せずにそう言い、ルカたちは部屋に入っていってしまった。
ミクは少々不機嫌そうにしながらも、早く空腹から逃れたいから決めた部屋に入った。

部屋に入ると、いつもの服があった。
服に袖を通しながらミクは考えた。
・・・不思議なレストランだなぁ・・・
そして、次の部屋に通じる道に踏み出す瞬間、思った。
・・・注文の多い、料理店だな・・・

部屋に入ると、中央に一人分の少し大きめなテーブルに、いかにも座り心地のよさそうないすがあった。
テーブルの中央にメニューと思われる紙も一枚置いてある。
「なんで、一人分のいすしかないの?」
そうミクがつぶやくと、どこからともなく聞こえる感情のこもっていない男の声。
「それは、後にわかりますので先に料理をご注文ください」
ミクは一瞬驚いたが、すぐにいすに座った。
料理のメニューを見て、ミクは目をしかめた。

「本日のメニュー
・イエロージェミニソテー
・桃色肉の姿焼き
・赤い腕の味噌煮込み
・ブルーハワイ&レッドゼリー
特別デザート
赤緑のアイス」
と書いてある。
ミクはとりあえず、誰も来ないので「イエロージェミニソテー」を頼むことにした。
「すいません、イエロージェミニソテーをください」 
ミクはそう言うと、皆が来るのを待った。
すると、すぐに頼んだ品が運ばれてきた。
黒いスーツに身を包んだ男が料理をテーブルに置いた。
「・・・イエロージェミニソテーでございます。それではごゆっくりお楽しみください」
そういって料理のふたも取らずに男は出て行った。
少しあっけにとられながらも、料理が気になったのでふたを開けようとするミク。
「・・・みんな遅いし、先に食べるか・・・」
そういってふたを開けると、その中身を見てミクは絶句した。
「なに、これぇ・・・!!?」
中身は、

リンとレンの顔だった。
耳から後ろは赤いスープに浸されていて、見えない。 
リンとレンが、白目を剥いて首から先をそぎ落とされていた。
ミクは吐き気を伴い、席を立とうとした。
しかし、いつの間にか体がいすに固定されている。
体の三箇所にいかにも強そうなベルトが巻かれていて、それはいすのしたから出ていた。
動かせるのは、首と腕だけだ。
「う・・・えぇ・・・!!なによ、こ・・・れぇ・・・!!」
ミクは吐く寸前でがんばったが、息があがった。
「ソテーというのはいためるという意味ですが、今回はいためてオリジナルのスープで浸してみました」
さっきの男の声だ。
よく見ると、赤いスープは、血だ。
・・・じゃあ、いったいリンとレンはどこへ・・・!!
そんなことを考えることができる余裕はどこにもなかった。
それよりも、メニューの内容が気になる。
気になるというか、そればかりが不安でならなかった。
はぁはぁと荒い息をしながら、ミクは言う。
「・・・この・・・はぁ、はぁ・・・桃色肉の姿焼きってのは・・・いったい、何の肉なの・・・?」
ミクはおそるおそる聞いた。
すると男は感情のない声で答える。
「それは、食べてからでお願いします」
そう男がいうと、またどこからか黒いスーツの男が出てくる。
しかし次は大きな台車を引いてきた。
それはミクの前に置かれた。
「それではどうぞご賞味ください」
男が言うと、スーツの男は台車にかかっていた布をとった。

「・・・・・・・・・っ!!」
それもまた、よく知ったものが調理されていた。
ミクはようやく真相を知り、涙を流した。
「ルカーー!ルカぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ルカが全身丸焼きにされて、肌がただれている。
ミクは席から立てずに体だけ前にのめりこむ。
スーツの男は何も言わずにまた消えていった。
ミクはどうにかして席から立とうとした。
「殺してやる・・・!なんでこんなことすんだよぉぉぉぉ!!お前・・・このいすから解放しろぉ!!!みんなを・・・よくも・・・!!!」
ミクはまだ何か言いそうだったが、それもまたすぐにとめることになった。
感情のない男の声がまた響く。
「次は赤い腕の味噌煮込みです。どうぞ」
ミクはその料理の具がなんなのか、すぐにわかった。
首を横に激しく振り、叫ぶ。
「もう、やめろぉ!!メイコ先輩たちまで手を出すな!!くそぉ・・・・・・!!」
やはり男はそんなことは聞き入れない。
再びスーツの男を送り込み、料理を持ってくる。
・・・しかし、もう料理などではなかった。

少し大きめの皿に、ふたがついている。
テーブルにそれが置かれ、男の指示でスーツの男がふたをとった。
「赤い腕の味噌煮込みです」
・・・うくっ。
がま・・・ん、でき・・・な・・・いぃ・・・
ミクはそれを見て嘔吐した。
「うええぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・」
テーブルのはじに胃液を大量にこぼす。
吐き気が少し緩み、再び料理を見てみるミク。
赤いソースがかかった、どうみても人の腕。
しかもまだひくひくとかすかに痙攣していた。
そこで男の解説が入る。
「味噌というのは、ただの味噌ではありませんよ。知識の沢山入った、最高級の味噌でございます」
口から胸のあたりに胃液が伝うミクは、荒い呼吸で思った。
・・・そうか。
・・・味噌って、脳味噌のことか。
・・・メイコ先輩の頭を・・・。
もうミクは正気を保っていなかった。
わずかに口をあけて、小さくつぶやいた。
「もう・・・私を・・・帰して・・・カイ兄・・・だけはぁ・・・無事に・・・」


男はそれについては少しも触れずに、最後の料理を持ってきた。
「最後の料理、ブルーハワイ&レッドゼリーでございます」
スーツの男が、両手に小さい透明の皿を持ってやってきた。
それを丁寧にスーツの男がテーブルに置くと、もうミクは衝撃すら受けなかった。
皿に乗っていたのは、血の色のゼリーと、カイトの髪の毛と思われるものの乗った青いかき氷。
最後に、スーツの男は戻らなかった。
感情のない声で、男は地獄の一言を発した。
「さぁ、すべてお食べください」
スーツの男が横で見ている。
ミクは、今まで出された品をぼーっと見ながらつぶやいた。
「・・・無理・・・に、決まって・・・る・・・だろ」
それを聞いた黒いスーツの男はすぐに動き出す。
強引にミクのあごをつかみ、口をあける。
「ちょっ・・・!なにっ・・・」
スーツの男は反対の手でぐちゃっとリンの顔をつかみ、ミクの口に押し込む。
ミクは反抗することもできず、口にリンの顔が広がった。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
飲み込むことができぬまま、レンの顔も押し込まれる。
いつも一緒に遊んでいた光景が、頭の中に浮かんで・・・くることはなかった。

・・・おいしくない。
・・・ごめんね、リン、レン。ちっともおいしくないよ。
・・・まずいよ。

ミクはスーツの男にのどまで手を入れられて、リンとレンの顔を呑まされた。
・・・もう、死にたい。
・・・私、もう死にたい・・・
ミクはうつむきながらリンとレンの血と自分の唾液を口からこぼす。

・・・私が、いけないんだ。
・・・私が、シャワーのときに余計な解釈をするから・・・

「私が、みんなを殺したんだ」

休む暇はなかった。
ルカの丸焼きを喰わされた。
メイコの腕を喰わされた。
カイトのゼリーを喰わされた。

みんな、ごめんね。
・・・ほんとにごめん。
・・・この世で一番、おいしくないよ。

すべてを食べ終わり、ミクはようやくいすから解放された。
しかし、何かが変だった。
・・・動けるのに、動けない。
・・・足の感覚がない。
・・・ついでに頭もなんか軽い。

「赤緑のゼリー・・・か」

足の感覚がないのは足を切られたというのと、頭が軽いのは緑の髪の毛を切られたのだということに気づくには、ミクはずいぶんと時間がかかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

注文の多い料理店【グロ注意】

どうでしょうか…
変なとことかは指摘していただけるとありがたいです。

閲覧数:809

投稿日:2010/02/24 00:31:53

文字数:5,137文字

カテゴリ:小説

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  • 或菟

    或菟

    ご意見・ご感想

    初めましてー。梨星といいます。

    グロいもの大好きなんですが
    これはもう・・大好きです!
    ブクマいただきました!

    2010/02/28 11:51:56

    • 初音ミミック

      初音ミミック

      ありがとうございます!
      最近は投稿も極端に減ってしまったんですが、、、
      みなさんのご期待を裏切らないようがんばります^^

      2010/02/28 17:51:44

  • ayuu

    ayuu

    ご意見・ご感想

    初めまして^^ayuuといいます。
    拝読させていただきました~!
    …ちょっとグロいですけど、こういう話大好きです!
    ラストは衝撃でした…(゜д゜)!
    初音ミミックさんの他の小説も拝読したのですけど、どれもすごく良かったです!
    ブクマいただきましたっ♪

    2010/02/28 11:07:34

    • 初音ミミック

      初音ミミック

      ありがとうございます!
      最近は投稿も極端に減ってしまったんですが、、、
      みなさんのご期待を裏切らないようがんばります^^

      2010/02/28 17:51:44

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