第六十五話 君の幸せを祈ります

 「いいのか本当に」

 レンをおりんに会いに行かせてから、れんの背中を見送りながら、ちょっとだけ後ろにいたカイトがあたしにそう耳打ちした。
そんなこと言わないでよ、泣きそうなんだから。

 「ん、別に。あんなのどうでもいいわよ」

 「相変わらず、かわいくねぇなぁー」

 「何よ、あたしが女らしくしてても気持ち悪いって言うんでしょ、カイトは」

 「まーな」
そう言いながら、あたしの隣に並んだ。
そしてあたしの頭をぽんぽんと、叩いた。


 「いつもはそうだが、今は別だ。ちっちぇころからてめぇを見てっけど、俺が気づいてないかと思ってんのかよ?」

 ぶっきら棒に、そう言われた。

 「なに……に、さ」

 「はは、いまさら言うようなもんでもねぇだろ。それより、泣くときはちゃんと女は泣いとけ」

 「や、やだよ……」

 「そんなんだから可愛くねぇんだよ。ある可愛げもなくなっちまう」

 「…………」

 「我慢しなくてもいいんだ」



 なんだよ、こんなときにだけ、カッコつけてさ。


 あたしは独りだったら、壊れてしまいそうな気がしたから、隣にいるこのキザ野郎の手をちょっと握った。
カイトは最初は戸惑ってたけど、手を振り払うこともしないで、きゅっと握っててくれた。




 それから、枯れるくらいに泣き続けた。



 

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ノンブラッディ

だんだん健気になっていく……。

閲覧数:138

投稿日:2013/04/21 18:37:02

文字数:589文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    おお!?まさか、ここでカイトが男になるのか!
    さすがに大人で上手いww←

    とにかく、グミちゃんがかわいい件……

    2013/04/22 23:56:52

    • イズミ草

      イズミ草

      そうです!
      やっぱりなんかカイトは今まで出すところが申し訳程度だったので、ここは見せどころだぞ!って思ったら想像以上の働きをしてくれましたねww

      2013/04/23 20:42:29

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