「う~ん・・・・・・」
「・・・・・・」

考え込むレンとその向かい側に座って本を読む桃色の髪の女性
いまこのリビング型共通ファイルのなかにはこの二人だけ
部屋の中でリン以外の女性と一緒にいるっていうのはなんだか緊張する
それもリンと違ってうるさくないし積極的でもないから余計やりずらい
それでもおなじVOCALOIDとして話ぐらいしてみたいんだけど・・・

そんな彼女が"ここ"にきたのは3日前だった



―ファーストコンタクト――――



CVシリーズ03-巡音ルカ・・・
それが彼女の名前
年齢設定(歳)はリンやレンよりも6歳上で20歳
マスターがレンたちVOCALOIDの新しい仲間としてこの前買ってきた
ミク姉やカイ兄、メイ姉はもうなかよくなったみたいだけど
どうしても初対面で年上の人と上手く接することが出来ないレンは出遅れてしまった
だからこの状況を利用してなにか適当な話でも振って話がしたい
それがボクのルカへのファーストコンタクト

でも・・・


(実際にこうなると何話したらいいかわかんないよなぁ・・・)


いつもリンと一緒にいるからこういう静か人は苦手・・・
いや、苦手というよりはやりにくい感じだ
なにしろ初対面だから何に興味があるのかすらもわからない


リンはしらないけどミク姉たちは仲良くなっているみたいだけど・・・


そういえばミク姉やカイ兄はどんな風に仲良くなったんだっけ?
そのやりとりを参考にすればやり方がわかるかも!
そう考えたレンは早速頭に手を当てメモリー内を検索し始めた
記憶をたどると3人分の動画ファイルが見つかった
こんなときもと思ってファイル化しておいたのが役に立った


初めはメイ姉、これは彼女がきた3日前の出来事だ
動画を再生する三角のボタンを押す
それと同時に動画は再生された


「はじめまして新入りさん、わたしはMEIKO、好きな風に呼んで頂戴」
「どうもはじめましてMEIKOさん。巡音ルカと申します」

どうやら彼女はとても律儀のようだ。初対面の人への態度がキチンとしていて礼儀正しい
それから年上をおもわせる綺麗な声・・・
こんな声で歌う歌はさぞかし綺麗なことだろう
・・・さらに二人の会話は続く

「えっと・・・歳は20だったっけ?」
「はい、人間で言う成人に値します」
「へ、へぇ・・・」


成人?なんのことだ?
レンにはさっぱりなことでも彼女は知っている
頭もいいなんて・・・ここでレンは頭脳では敵わないと思った
・・・でもきになるからあとでカイ兄にきいてみよっと


「まぁいいわ。そんな難しいことわたしにはわからないから」
「そうですか」
「そうよ!わたしは難しいことが嫌いなの」


メイ姉らしいな・・・
そうか自分らしさをアピールするのはいいかもしれない


「MEIKOさんはなにがお好きなんですか?」
「もちろん歌うこと、それから・・・」
「それから・・・?」
「酒!!」


ここまで見てレンは見るのをやめた
これ以上みたらいろいろと危険そうだ
それにレンには酒事情なんてわからないし知らないままでいい

はぁ・・・じゃあ次行こうか


お次はミク姉。日にちは2日前。同じく再生ボタンを押して動画を見る



「こ、こんにちは!・・・えっとわたしは初音ミク、ミクでいいよ!」
「こんにちはミクさん、わたしの名前は・・・」
「ルカちゃん!」
「え?」
「そうよんでもいいでしょ?」
「・・・えぇ結構ですよ」


そういってにっこりと笑う彼女
なるほど・・・ミク姉も緊張してたのか
それでも勇気を出して話してみたのか・・・ボクと違うな

勇気・・・か

「何読んでるの?」
「コレですか?コレはマスターから頂いたもので英語の本です」
「へ、へぇ~」


やっぱりこの人に頭脳で勝負するのはやめた方がいいな
英語って・・・
ほかの鏡音レンがうたった歌に英語の歌詞があったりするけど
あれは多分打った歌詞をそのまま朗読してるだけだから・・・


「ルカちゃんって本が好きなんだね~」
「いえ、どっちかというとわたしはマグロのほうが」
「マグロ!?」


え!?彼女はマグロが好きなのか!?
あぁでも、魚食べると頭が良くなる~みたいな歌があるからあの頭の良さからすれば頷ける
それでもマグロって・・・高すぎだろ!


「そういうミクさんはなにがすきなんですか?」
「わたしはネギが好き!」
「ネギですか・・・マグロと合いそうですね」
「そう・・・なのかな?」


え?なにその好物のコラボレーション・・・
二人とも好物が普通の人間の女性とかけはなれててついていけない
というか好物以前にそれ以降の会話の内容は濃すぎてレンはそれ以上見れなかった



残った頼みの綱はカイ兄のみ
カイ兄ならそれなりにあたまがいいし優しいから参考になるかも
それに同じ男性タイプだしね


昨日撮ったばかりのファイルを開いて同じく再生する


「やぁルカさんこんにちは」
「こんにちは、あなたは?」
「ボクはKAITO。好きな風に呼んで」
「はい」


カイ兄はストレートだなぁ・・・いきなりルカさんだなんて
逆に名前を聞かれてるし
・・・そっかストレートに先制すれば会話の流れをつかみやすいのかな?


「まだわかんないことばかりだと思うけどみんないい子だから安心してね」
「はい、ありがとうございます」


カイ兄のはココで終わり。短いな・・・

やっぱカイ兄さんは優しいな~でもこの優しさをまねるのは無理だ


う~ん・・・一通り見てわかったことはないなぁ
一ついえることはとりあえず話してみること
そうだな、ミク姉も勇気出して話したんだからボクも!


覚悟は決まった!!


「あの~」
「・・・はい、なんですか?」


・・・そういえば3日もたってるのに自己紹介から始まる会話ってどうなんだろう
向こうは多分もう名前知ってると思うしな~
いや、でもここはあえて突き進む!


「本読んでるときにごめん、なんか退屈だったから」
「そうですね・・・」
「あ、ボクは鏡音レン。レンでいいよ」
「わたしはルカ。呼び方はお好きに」
「あ・・うん、じゃあ"ルカ姉"でいいかな?」
「はい、構いませんよ」
「うん、じゃあよろしくねルカ姉」


よかった~なんとか話せた・・・
そんな風に胸をなでおろしているとこんどはルカ姉から話を振ってきてくれた


「いつも一緒にいる女の子はどうしたんですか?」
「リンのこと?う~んリアルの方に出てると思うけど・・・」
「兄妹なんですか?」
「あぁいや・・・ボクのほうが弟でリンが姉だよ」
「そうなんですか?いつもあの子があなたに甘えているのでてっきり兄妹かと・・・」


まぁそう見えるのは仕方ないな・・・タコみたいによくくっついてくるし


「ほんとタコみたいにくっついてくるんだよね~」
「タコならここにもいますよ」
「え?」


そういうとルカ姉は手を上に向けてなにかのデータを放出し始めた
そのデータはすぐに形をとり始めて・・・
ルカ姉そっくりの生首になった

・・・って


「ギャーーーーーーッ!お化けェェェェェェェっ!」
「失礼ですね!これは"たこルカ"ですよ」
「た、たこ?」


どうやらたこルカというらしいその生首はボクの頭の上に乗っかった


「うわぁぁぁぁぁぁっ!乗るなぁぁぁっ!」
「たこルカ、Let's singing!」


ルカ姉が良くわからないことをいったのと同時にたこルカはリズムよく歌い始めた


『るっか♪るっか♪』
「え?」
「どうですか?可愛いでしょ?」
「は、はぁ・・・」


どうやら意外とルカ姉は明るい性格をしているらしい
本を読んでるときみたいに静かでクールそうな"青"ではなくて
明るくて優しくて・・・そう、まるでルカ姉の髪の色みたいな"桃色"
それが本当の色なのかもしれない


「そのままDancing!」
『るっかるか~』


今度は髪を足のように使って目の前で踊りながら歌うたこルカ
・・・そういえばこんなに明るく接してくれたのはボクがはじめてなのかな?
さっきまでミク姉たちのファーストコンタクトをみてたけど
ここまで明るく接してくれてはいなかったし・・・
それはなんとなくうれしいな
そんなことを思っているうちにたこルカへの恐怖心は自然に消えていた


『るっかるか♪まーぐろフィーバー♪』
「ぷっ・・・あははははは」
「どうしました?」
「あははは、ごめんなんか面白くって」
「・・・やっと笑ってくれましたね」
「え?」
「わたし、ほかの人に笑ってもらったりするのが好きで」
「へぇ~・・・ルカ姉って優しいんだね」
「え?」
「さっきまでずっと本ばっか読んでたから」
「いや、もちろん本も好きですよ?」
「そういう意味じゃなくって・・・」
「??」


いくら頭が良くてもココまではわからないか・・・
ま、いつかわかることだけど


「まぁいいか、ね?たこルカ?」
『るっかるか♪』
「もう!それじゃわからないじゃないですか!」
「わからなくても大丈夫だよ~」
「もう!」


《おーいレン!ルカ!》


マスターの声だ、部屋のモニターから聞こえてくる
最初に反応したのはまたルカ姉だった


「なんですかマスター?」
《新しい歌ができたぞ!今度のはレンとルカのデュエット曲だ》
「え?」
「本当?マスター!?」
《あぁ、早くリアルに来い。歌詞もって待ってるぞ》


マスターとの通信が切れる


「やったねルカ姉!デュエットだって!」
「はい!初めての歌・・・緊張します」
「あぁわかるわかる!ボクもさいしょはそうだったよ」
「さ、早く行きましょう、マスターが待ってます」
「あぁっ!まってよルカ姉!」



・・・このあとルカ姉とボクが歌った歌は皮肉にも“出会い”の歌だった

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ファーストコンタクト(レン→ルカ)

自分の作品のなかではつの1話完結作品です!
今回はルカも初登場~いやー難しかった・・・
ちゃんとかけたかな?感想お願いしますっ!

閲覧数:148

投稿日:2011/08/13 22:39:37

文字数:4,077文字

カテゴリ:小説

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