「蝉、うるさいっ!!」
「まぁまぁ、グミさん。落ち着きなって。」
この暑さは一体なんなのだ?
まったく・・・太陽働きすぎだよ。
私をそんなに溶かしたいのかっ????
「だいたい、音楽室にエアコンが設置されてない時点でおかしいよ!」
「仕方ないって、うちの学校ボンビーだからさ。」
「金貯めろよぉぉぉぉ!!」
どうしてここまで苦情を言っているか・・・そんなの決まってる。
さっきまで私達は扇風機が4台しかない音楽室で3時間も部活をやっていたのだから!
あんなのを経験したら誰でも苦情を言いたくなるもんだ。
熱中症になるのも時間の問題だと最近、真剣に思う。
と、まぁ今は親友、リンの家で恒例のお喋りタイム。
「もう喉もガラガラだよぉ~」
大げさに喉をさすって痛いですよアピールをしてるとリンが「まぁまぁ」と言って私をなだめた。
「ホラッ、もうすぐで引退だし・・・あとちょっと頑張ろうよ~。」
「そーだけどー。」
そう言われると、さっきまでのイライラ感が開放感へ変わっていった。
もうすぐで終わりなんだーーー!!
まぁ、引退後に待っているのは「勉強」という名の悪魔なんだけど。
中学3年生って改めて辛い。
「そういえばさ、最近どうよ?」
「どうよって、何が?」
「んもう~しらばっくれちゃって~、グミヤとどうなのよ?」
「へっ?///////////////」
一気に顔が赤くなって、私は慌てて手で顔を隠した。
グミヤとは私の彼氏で、だいぶ前から付き合っている。
ちなみにグミヤは陸上部で結構スゴイ。
「どうせラブラブなんでしょ~?」
呆れた声で尋ねるリン。
「ううん、それがさ・・・グミヤ大会近いから、最近連絡とってないんだ。」
「えー!まさかの破局の危機!?」
「そっ、そんなんじゃないよ~!!」
でもちょっと不安。
少し連絡しないだけで、嫌われたんじゃないかとか考えたくもないことが頭を行ったり来たりする。
そんな負のオーラを放射している私の背中をいきなり結構強い力で叩いた。
「も~冗談だって。そもそもグミヤが簡単にグミを手放すわけがないでしょ~。」
「そっ・・・そうなのかなぁ~?///////////」
「そうなの~。」
リンの言葉で少し不安が晴れて、今度は照れてきた。
日差しが強いせいか余計に体温はノンストップで上昇する。
「リッ、リンこそレンとは上手くいってるの?」
「まぁね~、毎日メールもしてるしラブラブだよ~♪」
「そっか~。」
リンが羨ましい。
私だって、もっとグミヤとお話したいし・・・デートだっていっぱいしたい。
もちろんラブラブになりたい。
落ち込んでる私にリンは励ますように言った。
「グミ・・・今日ぐらいさ~連絡してみなよ~。」
「えっ?そっ・・そんなこと出来ないよ~!」
リンはぐずる私に軽いデコピンをした。
これまた結構強い。
「いだっ!」
リンさん、あなたのせいで体の前後が痛いのですが・・・・。
「グミッ!少しは我儘になりなっ!いい?引いてばっかじゃ駄目、たまには攻めなきゃ!」
そういうリンが凄く頼もしくて私は抱きついた。
「リンーー、出来るかな~?」
そう尋ねるとリンはポンポン背中を叩いて答えた。
「大丈夫、グミは出来る子だもん。」
「リン、ダイスキィィィ!」
「はいはい、その言葉はグミヤに伝えようね~。」
それから私はリンと別れて、また家に向かって歩き始めた。
歩きながらメールの内容を考えてたんだけど、ウザがられたらどうしよう、とか悪いほうに考えが進んでしまう。
やっと自分の家が見えたと思ったら家の前に誰かが立っていた。
「んっ?誰だろ・・・。」
そーっと家に近づいて見たら、なっなっなっなんとソコに立っていたのは・・・
「グッグミヤっ!?」
私に気づいたグミヤはコッチに来た。
驚き過ぎて、口がポカーンと開いたままの私を見てグミヤは「ヒデー顔」と言って笑った。
ちょっと怒り気味に尋ねる。
「どうしたの?」
「部活が早く終わったから、来てみたんだよ。」
「えっ?でも、私が学校出るときまだ部活やってたじゃん。」
「それは~、お前がリンと長時間喋りすぎなんだって。
おかげで何分待たされたことか・・・。」
「は~」とため息をつくグミヤの「ゴメン」と謝った。
でも私、そんなに話してたかな~?と疑問に思いながらチラッとグミヤの髪が視界に入った。
なぜかあらゆる方向にピョンピョンハネている。
グミヤが着ているTシャツを見ると汗で濡れているように見える。
もしかしたら急いでココまで走って来てくれたんじゃないかと思った。
こんな暑い日に・・・私に会うために・・・。
そう思ったら自然と顔がニヤける。
「グミヤッ、大好きっ!」
「なっ・・・いきなり何だよ?////////////」
「ううん、気にしないで。
あっ、ウチ寄ってく?今、誰もいないし。」
「え``っ・・・あっ・・・おう。///////////」
私はそっとグミヤの手を握って家に入った。
やっぱりグミヤの手は汗で少し濡れていた。
自分、愛されてるな~と自惚れそう。
チラッとグミヤを見ると自然に笑みがこぼれる。
そんな私に気づいたのかグミヤは不思議そうにコッチを見た。
「なんだ?」
「ううん、なんでもな~い。」
と、言いながら心の中で呟いた言葉は私だけの秘密。
-大好きだよ、私だけの王子様
~End~
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