腕時計の短針は八時よりの七時を指している。いつも遅刻ギリギリの私にとっては、とても早い時刻だ。
靴箱で上靴に履き替え、教室までの道のりを歩く。まだあまり人がいないらしく、廊下は静けさが満ちていた。
教室に着くと、友人のミクが自分の席で文庫本を読んでいた。私に気付いた彼女は顔を上げ、挨拶をしてくる。私も手を振って返す。
「どうしたの?こんな早くに」
「うーん、まぁちょっとあってね…ミクとリンに、相談かな」
その時ちょうど、ガラガラと戸が開いた。揺れる白いリボンと金髪で、話題に上がっていた友人のリンだと判断する。
「あれ?グミちゃん、今日早いね。彼となんかあった?」
「なるほど、グミヤ君か。だからこんな早くに来たんだね」
開口早々、ど真ん中を射貫いてきたリンの動物的勘に感心しつつも、私は首を縦に振った。
「そうなの!日曜日に私は見てしまったのよ!」
「へぇ、何を?」
肩に背負っていた鞄を机に置きながら、リンは興味津々といった様子でこちらを見てくる。ミクも疑問符を顔に浮かべながら、耳を澄ませている。
「実はね……



グミヤが、隣のクラスの転校生と歩いてたの…!」

「「え?」」

同時に首をかしげた友人は、小さく復唱しながら言葉を理解しようとしている。
先に意味を理解したリンは、訊ねてくる。
「転校生って、あのイア、とか言う人?」
「名前は知らないけど、長い銀髪の人」
「ミク、知ってる?」
「もち。今学期から転入してきたけど、結構有名だよ?名前はリンの言ったとおり、イア。グミヤ君と同じクラスね。勉強も出来て、しかも可愛いから男子から人気。ここまで来たら性格が悪いのがお約束だけど、優しくて男子よりも紳士的って、女子からも人気。まぁ要するに、パーフェクトな女の子って感じだね」
いつの間に調べたのかかなり疑問だけど、それは思考の片隅に追いやった。
「つまり、グミヤ君が浮気したってことね」
「浮気と断定するのは気が引けるけど…とにかく、そのイアさんと一緒に居たのを見たの!」
「ちゃんと彼のことを信じるあたり、グミいい子だよね」
「だって、グミヤのことだもん」
俯いて、髪をいじる。小学校から一緒にいて、グミヤはいつもやましいことがあると決まって癖がでる。それは中学に来てからも変わらない。だから、浮気なんてことがあればすぐに解るのに。
「……すごく楽しそうにしてた」
友人は顔を見合わせて、こそこそと話し合い始めた。すごく小さい声での会話なので、残念ながら聞こえない。三十秒後、密談が終わったのかこちらを向いた二人。リンが口を開く。
「まぁとりあえず、どうなのかを確かめるために、行動を起こしてみるべきだね」
今度は私が、言葉の意味を理解できなくなった。なんとか飲み干して、訊ねる。
「行動…って?」
「無視とか」
「む、むしぃ!?」
「いえーす。思い切って知らんぷりだよ。向こうはそれほどのことしたんだから」
ミクの言葉にリンも頷いている。
無視なんて考えたこともなかった。今まで見かけたら声かけて来たし、気付いてて聞こえないふり、なんてやったこともない。
でも……
「やってみる…グミヤにちゃんと確かめてやるんだ…」
「「頑張れよー」」





「しんどい……」
「まぁ、べったりだったもんね」
「このバカップル」
ぐったりと机に突っ伏した私にかける二人の声がなんか冷たい。
「だって…」
グミヤを無視する、ということは思ったよりも難しいことだった。体力の消耗が激しく、息が切れてくる。
そんなに依存してたかなぁ…、と考えを巡らせながらも、顔を上げる。
「結局、真実はわからなかったよ」
「そうね…こうなったら本人に確かめてみる?」
「クラス違うから、放課後とか?」
「やっぱ、そうするしかないよね…」
無視するのも辛いけど、顔を合わせるのはもっと辛い。
でもやはり、確かめないことには何も進まないから、放課後に問い詰めることにした。





チャイムが鳴る。本日の授業を全て終え、学年の教室が並ぶ廊下でグミヤの姿を探す。彼のクラスは一足早く解散したらしく、二、三人しかいなかった。あの鮮やかな新緑を見つけようと目を凝らすが、やはりどこにも見えない。諦めようか迷い、溜息を吐いたとき、
「グミ」
声が聞こえた。探していた、だけどやっぱり聴きたくなかった声。
後ろを振り返ると、若葉の色をした髪の、愛しい恋人。
少し、いや、だいぶ不機嫌そうな顔をして、大股でこちらに歩み寄ってくる。
「なんで今日、話しかけても気付いてないふりなんかするんだよ。お前のことなんか全部わかるんだぞ」
大声でまくし立てるグミヤ。少し目が潤んでるのは、見ない振りをした。
「わ、私だってこんなことしたくなかったわよ!でも、元はと言えばグミヤが悪いんじゃない!知ってるんだからね、日曜日にイアさんと一緒に居たこと!」
どんどん目に涙が溜まってくる。あぁもう、こんなこと言いたいんじゃなかったのに。
グミヤの表情が、固まっている。その仕草だけで、胸が締め付けられる。
「…あれは、近所に引っ越してきたイアさんに街の案内をしていただけなんだよ」
ばつの悪そうな顔での言い訳に、いらだってきた。
「嘘だ!だったら、なんで雑貨屋さんにいたの!?」
「それはっ……」
グミヤは一瞬言い淀んだ。顔が赤く染まっていく。
「それは…………」
「?」
目を逸らして、小さく呟かれた声は、私の耳にちゃんと届いた。
「お前にちゃんとした贈り物とかしたことなかったんだけど、どういうのにすればいいのか分かんなかったから、意見を聞かせてもらったんだよ」
「え……?」
「というか、浮気とかありえないし」
「そう……だったの……」
力が抜けていく。そんなことで、一人で怒って、一人で悲しんで、馬鹿みたい。
「なんか……ごめん」
「いや、こちらこそなんかごめん」
「でもね、グミヤは浮気なんかしないって、信じてたから。これは本当」
「お前がいるのに浮気なんてするわけないだろ、グミ」

後日、綺麗な緑の石がついたブレスレットをもらい、私の宝物となりました。




「ミクさ、最初から気付いてたでしょ」
「まぁ、イアさん彼氏いるしね。そもそもグミヤ君がグミ以外見向きもしないの、知ってるし」
「本当にバカップルだよね。あの二人は」
「それで二人が幸せなんなら、いいんじゃない?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【香凜ちゃんへ】 浮気の真実 【すごく遅れてすみません!】

姉音香凜ちゃん、お誕生日おめでとうございます!一ヶ月も遅れてすみません!
最近は連絡もとってなくて…忘れ去られてるかもしれません^^;
一日クオリティですが、ミヤグミを書かせていただきました。
本当にただのバカップルでしかありません、すみません。

香凜ちゃんはただでさえ文才がすごいのに最近(結構前だけど)はボカロとかUTAUの調教までやってて…どう足掻いても追いつけないです。無理はしない程度に活動を続けてください!これからも、仲良くしてくださると嬉しいです!

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閲覧数:165

投稿日:2013/04/24 21:02:59

文字数:2,624文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 姉音香凛

    姉音香凛

    ご意見・ご感想

    ばんわー!姉音ですー!

    うおおおお久しぶりのミヤグミきたこれ・・・!美味しかったですありがとうございます!
    気付いてたミクさんとリンちゃんにも2828・・・ミヤグミもかわいいなあ、くそう。
    あとちゃんと覚えてるから心配しないでいいよー!作詞出来るすごい人って覚えてますw

    えーと、これからもよろしくですー!

    2013/04/24 21:11:13

    • 美里

      美里

      早速のメッセありがとうございます!

      最近詞しか書いてなかったんで小説も久しぶりだったんです(一番新しいのレンリンかな)。
      もう本当に表現被らないようにするのが…
      ミヤグミ本当に美味しいですよね!大好物です!
      あ、やったー!忘れられてない!(いや、親戚に誕生日忘れられてた人なので

      今までの分も、よろしくお願いします!メッセしてないだけで作品は見てるので!

      2013/04/24 21:29:32

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