「いやいやいやいやいや……さすがルカ先輩っすねぇ!!まさか一晩で事件にケリつけちまうなんて!!」

 「あんたらが遅いんじゃないの?」

 「えっ、ちょ、ひど!!」


 悪之介を署に連行したルカ達は、捜査一課の捜査本部で松田にもてはやされていた。


 「それにしても……ひっどい怪我でしたねぇ富岡悪之介は。両腕粉砕骨折に両大腿骨複雑骨折、肋骨も全部砕けてたし、歯は前歯と犬歯が折れて下顎に突き刺さってましたよ?いったい何やったんです?」

 「さ……さぁてねぇぇぇ?(明後日の方向)」

 『……………。』


 全員が呆れ果てた顔をする。慌ててルカが話題転換した。


 「そ、それより感謝するならロシアンちゃんにしてよ!!ロシアンちゃんがいなかったら、『疾風刑事ルカ』の名声はきっと地に堕ちてた……間違いなく三日以上かかってたわ!」

 『吾輩が特別何かしたわけではない。ちょっとした予備知識を教えてやったまでだ。ほとんどはルカ自身の力だ。……それよりルカ。お主、これからどうするつもりだ?』


 突然話を切り換えるロシアン。ほんの少し考え込んだ後、ルカはぼつぼつと呟きだした。


 「……ここで事件を終わらせたとして、今後も今回のような事件が続いていくことは変わらない……二度とこんな凄惨な事件を起こさないためには……火元を断つことが大切……!!……『黒猫組』のアジトを、つぶしに行く!!」


 ミク達にアイコンタクトで確認を取る。すでにもう、全員やる気満々のようだ。

 話は決まった……かのように見えたが。



 「ま、待ってくだせえルカ先輩!!『黒猫組』のアジトの在処は、まだわかってねぇんですわ!!」



 「………は?はああああああああああああ!!!?」


 ルカの素っ頓狂な声が上がった。そして羅刹の形相で松田の頭を引っ掴んで持ち上げる。


 「どーゆーことよ!!あんたらまじめに仕事してんのー!!?」

 「し……してますよぉ!!だけど『黒猫組』の組員はアジトを嗅ぎつけられることを非常に警戒していて、どれほど注意深く尾行してもいつの間にか撒かれちまうんでさあ!!」

 『そいつは吾輩も聞いたことがあるな。』


 バタバタ暴れる松田を掴んだままのルカに、ロシアンが声をかけた。


 『暴力団というのはアジトから一網打尽にされることが多いと聞く……奴等はそれを恐れ、アジトを全力で隠しているようだ。手下が何匹捕まろうと、アジトさえ無事なら壊滅だけは免れるからな。……最も、今回捕まったのはNo.2だからな……どう動いてくるかわからんぞ?』


 くくく、とロシアンが笑っていると、窓をコツコツと引っ掻く音がした。

 近寄って窓を開けてみると、そこには一匹の若猫が。すぐにロシアンが駆け寄り、話しだした。


 「にゃーあお、にゃおう?」

 「にゃう!!なあああう!!にゃおおう!!」

 「にゃぅ!?」


 かなり驚いた(猫らしい)声を上げて、ロシアンが振り返った。


 『ルカ!!驚け、こいつが『黒猫組』のアジトを探り当ててきたぞ!!』

 『マジで!?』


 ルカと一緒に、松田も飛びついてきた。


 『場所はこの町で一番高い電波塔『天空塔』……その地下だ!こいつが仲間と一緒に見回りをしている時に、天空塔から大人数の『黒猫組』組員が慌ただしく飛び出してくるのを発見したらしい。塔の中に侵入してみたところ……エレベーターの横に隠し扉があって、そこから通じる地下に『黒猫組』の組紋が描かれた扉があったという……可能性としてはかなり高いぞ!!』

 「だ……だが、猫からの情報なんて言ったって強行捜査が通るわけが……!!」


 松田がしどろもどろになっていると、それまで静かにロシアンの話を聞いていたルカがすっと立ち上がり、ミク達に向き直った。

 覚悟は―――――決まっていた。


 「ドンキー!!強行突破自体は私たちに任せて、あんたは捜査一課総動員して天空塔の前に行きなさい!!……刑事になったなら、国民のために一度ぐらい自分の首かけてみな!!」

 「……っ!!……わ、わかりやしたっ!!おいおめーらぁ!!捜査一課全員に伝えろ!!『黒猫組』をぶっ潰しに行くぞ―――――!!」

 「はっ、はい!!」


 一斉に刑事たちが引き上げていき、ルカも気合を入れなおそうとして―――――ある違和感に気付いた。

 ロシアンの話ではこの若猫は『仲間と一緒に』見回りをしていたはずだ。同じ猫の言葉を、ロシアンが聞き間違えるとも思えない。可能性としてはこの若猫が嘘をついているか……もしくは―――――


 「ね、ねぇ!ロシアンちゃん!この猫ちゃん、確か仲間と一緒だったのよね?その仲間はどうしたの?」

 「!!……にゃあ、にゃうにゃー?」

 「!にゃう……にゃう、にゃあう……。」

 『……なんだと!?』

 「ど、どうしたのロシアンちゃん!?」


 ほんの少しこわばった表情で振り向いたロシアンは若猫が述べたことを話し出した。





 『あの時……俺と仲間三人で『黒猫組』のアジトの扉の前に立った時……突然扉の隙間から紅い焔が噴き出してきたんです。その焔に巻かれ、思わず目をつぶったんです。次に目を開けた瞬間には―――――仲間の姿はどこにも見当たらなくて……!!』





 『………!!』


 ロシアンとルカのみならず、そこにいた全員が硬直していた。


 「る……ルカ姉……!!」


 ミクが少しだけ不安そうな眼をするが、ルカのその眼には変わらない覚悟の色が映っていた。


 『……ルカ。引き返すなら今のうちだぞ。何かとてつもなく嫌な予感がする……!!』

 「……何言ってるの、ロシアンちゃん。私たちは……『黒猫組』を絶対に叩き潰してみせる!!」


 ロシアンの目が、ほんの少し見開かれ、そして瞬時に小さな笑みに変わる。


 『……ふふ、大した覚悟だ。……決行は明日の朝一だ。いいな!!』

 『お――――――――――っ!!』


 力強い掛け声が、部屋いっぱいに響き渡った。





 ―――――翌朝6時。

 電波塔の前に、6人のボーカロイドと、一匹の猫又の姿があった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ボーカロイド達の慰安旅行(10)~アジト、発見!!~

蜂退治は巣ごとやるもんです!
こんにちはTurndogです。

下手人捕まえてそれだけでルカさんが収まるわけがない!
たぶんルカさんはゴキブリ退治の時はついでに巣も探すタイプだと思う。
そしてわざわざついていくロシアン。案外お人よし。

次回は久々のバトルシーン!!
(と言いつつ実際にはみんなで雑魚を蹴散らしてるだけとか言わないこと)

タグで遊んでるのはご愛ky
リンレンめーちゃんカイト『覚悟はいいか?』

閲覧数:218

投稿日:2013/04/13 00:18:52

文字数:2,581文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

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  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    おおおお……!!
    頑張れ! みんな!!
    そしてコメ遅くなってごめんなさい><

    2013/04/18 20:43:36

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      次回『は』皆さん大活躍!!

      だいじょぶですよー多少遅くなっても。むしろ遅くなってもくれることを私はスライディング土下座で感謝せねば((

      2013/04/18 21:36:38

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    こ、これは……!?
    グミちゃんが、KAITOを呼んでいるよ?
    こっちこーい、こっちこーい
    いずれ、ルカさんが全てもっていくんだから……さぁ、私と一緒に……
    こっちこーい、こっちこーい

    出番の図(予想)
    ルカ>>>ミク>メイコ>その他>>>カイト>>グミ

    2013/04/13 17:43:41

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      グミ『こっち来ないとTurndogごとズドーン☆しちゃうよ―』
      待ってくださいグミさんあんた次の話で活躍多い予定だから待ってうわああああ(ズドーン☆)
      グミ『……え?』

      めーちゃん辺りまでは間違ってないかもしれないwww

      2013/04/13 18:04:15

  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    ちょっwwwまwwwwww
    タグがww兄さんwwwまさかのww掛け声にもwww入ってなかったのwwwww(黙
    開口一番に「ルカさんマジ女神ですね!」といようとしたのにwwwwww

    紅い焔……? ロシアンが普通の猫のときに好きだった猫又がいましたよね、たしかルカさんと同じ名前の……まさかその子とか?
    まぁそれは続き読めば分かりますよね。それじゃあ続き読みに逝ってきます!(漢字ェ

    2013/04/13 13:52:28

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      頑張りすぎたかいとは少し『真っ白に燃え尽きちまったぜ……』状態になってればダイジョブさ!また頑張れるy(黙れ

      ふふっふっふ!
      つづきは今書いてんぜ!

      2013/04/13 14:23:43

  • 和壬

    和壬

    ご意見・ご感想

    初めまして、のーかですw

    Gって1匹いると200匹いるんでしょ?
    ロシアン、皆と意外にずっと一緒にいるよね。わたしのルカさんと…くっ!!!

    KAITO(前回活躍したから休憩)ってwww
    どおでもいいけどw←おい

    ルカさんつーよー!
    カッケェよ!まぁルカさんはどんな物語でも素敵だし可愛いし素晴らしいけれどm(黙れ

    失礼しましたーw

    2013/04/13 11:57:34

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      初めましてー!Turndogと申します!

      あの子たちはせいぜい30ですよw200は多分オーバー。
      よくぞ言ってくれたのーかさん!!ロシアン、そこをかわr(お前も黙れ

      カイトの扱いはそんなんでも何とかなる!(きりっ

      ルカさんなうな男がバトルものを書くとこうなるのです!wwwww

      2013/04/13 12:28:11

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