うっかり口を滑らせたのは認める、いきなり驚かせたのも認める、だけど…。
「普通蹴るかよ…。」
時間が経ったら腹も立って来た。しかしあの髪、あの顔、小柄で細身な体…どっかで見た事ある気がするんだよな。気になって目が冴えて寝付けなかった。
「何処で見たんだっけな…?」
気でも紛らわせようと少し船内を散歩する。流石にこんな時間に誰も起きて無い様で静かだ。昼とは打って変わって潮風が少し肌寒い。と、デッキの側に誰かが立っていた。此方に気付くと男は静かに言った。
「あんた、参加者?」
「いいえ、俺はNPC…えっと、企画側ですよ。」
誰だっけ…資料全部は覚えてなかったな…。金髪で背が高くって…名前が出て来ない!
「あんたも覗き?」
「は?」
「あの2人、散歩してたら見掛けたんだけどもう目のやり場に困っちゃって。」
金髪男は持っていた扇でデッキを指し示した。
「…密さん?」
「密っての?あいつ。女の子の方は参加者みたいだけど。」
思い出した。そうか、あの時ペナルティを付けてまで社長が参加させた女の子…。
「朝吹浬音…。」
「誰だか知らねーけど、スタッフとグルな訳?出来レース?」
「あ、いや…密さんにはペナルティが付いてるんで、その…ゲーム中は手伝ったり
とか出来ない筈で…。」
質問に答えながら目が離せなかった。勿論鬼執事長のあんな顔見たのも初めてだったから充分驚いていたけど、何より彼女の方に釘付けだった。さっきみたいな気の強さなんて微塵も感じなかった。警戒心はまるで無くて、すっかり安心し切って、零れる様に笑っては、時折その身を密さんに預けて、子犬の様に甘えていた。確かにこれではペナルティ対象にもなるだろう、贔屓する事は容易に想像出来る。
「何でも良いけど、勝負は公平になってるんだろうな?」
「え?は、はい!それは、勿論。」
「大丈夫かよ?」
「…………………………。」
「何?あの子が気になんの?」
「いや、別に…そんな…事は。」
正直凄く気になっていた。あんな顔で見詰められたらどんな気分だろうと考えてしまう、あの華奢な体力任せに抱き締めて、あの髪いじり倒して、好き放題やったらどんな気分だろう…。
「あんたあの子が好きなんだ?」
「え…?」
「その内手を組まない?あんた、そこそこ強そうだし。」
「組むって…。」
「ま、先の事はわかんねーし?そん時が来たら宜しくって事で、茅ヶ崎鳴兎さん。」
「何で…名前…?」
「な・ふ・だ。」
男は扇で首のドッグタグを指してクスクス笑うとそのまま船室へ戻って行った。
「チッ…外しときゃ良かったな…。」
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ご意見・ご感想
0-ko
ご意見・ご感想
あの子、どんだけゲームに真剣…(゜Д゜;)
2010/07/26 07:54:42
安酉鵺
賞金1億円の魅力ですよ…。
( ̄∀ ̄)。o0(タノシイ
2010/07/26 08:06:32