語り部の有限の魔術師

ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのは無限を追い求めた一人の魔術師のお話です。

その魔術師は無限を追い求め、その内に一つの人形を創り上げたそうです。
その人形は限りなく無限に近かったため、魔術師は人形と過ごすうちに「私は有限」だと思い知ったそうです。
思い知ってなおも、永遠を追い求める内に「有限」は「この世の理」だと理解したそうです。

ある時魔術師は戯れに、枯れぬこと無く咲き誇る花のことを人形に話したそうです。
人形はその話を笑顔で語る魔術師を見て、不完全な心で
 「その花を手渡せば魔術師はずっと笑って居くれるはずだ。」
そう思ったそうです。そして、
人形は魔術師の止める声も聞かずに出て行ったそうです。枯れぬ花を探すその人形は限りなく無限に近いだけで有限でした。

魔術師も、人形自身も気づいてはいませんでしたが、人形は所詮作られた物ですから、その器は限りなく無限に近くとも、心は不完全だったのです。そして、御伽噺を真実だと思い込んでしまったのです。

無限などどこにも存在せず、無限は永遠ではないという事をようやく魔術師は知ったそうです。
そして、魔術師は人形と共にいる事こそが永遠だと知り、人形が自身の元に戻ってくることを強く望んでいるそうです。

枯れぬ花を探す人形 いつしかここに帰る 有限の私と人形
                 不完全な体と、完全な心を持った魔術師

           永遠はこの手の中に

不完全な心と完全な体を持った人形
           七色に輝いて咲き誇る枯れぬ花 いつまでも探してる

いかがでしたか?私のお聞かせした物語は。次に来られた時はこの物語の中の枯れぬ花のお話をしましょう。今日のところはここでお開きにしましょう。帰り道にはどうぞお気をつけて。よければまた、私の物語を聞きにいらして下さい。それではさようなら。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

語り部の有限の魔術師

語り部シリーズ9作目です。

閲覧数:425

投稿日:2009/07/12 10:39:54

文字数:811文字

カテゴリ:小説

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