「ルカさん・・・?」
キヨテルさんの困ったような声にはっと我に返る。
「え!あ!?すみません!!私・・・」
私は慌てて頭を下げる。
「失礼しました!」
「え、ちょ!?」
私はかかとの高いブーツで全力疾走した。
何で私、あんなこと言っちゃったんだろう・・・
「痛!」
ブーツのかかとが、道の小さな溝にはまって派手に転んでしまった。
周りの視線が痛い。
(今日、ついてないなぁ・・・)
がくぽには浮気されちゃうし、派手に転んじゃうし・・・
なんか、もう・・・
半べそになりながら、私はのっそりと立ち上がった。足が痛い・・・
タイツは伝線して、膝からは血が出ていた。
「ルカさん!」
後ろから声が聞こえた。
(キヨテルさん!?)
見ると、キヨテルさんが人を掻き分けながらこっちに向かってきた。
「大丈夫ですか!?さっき、転んだの見えて・・・」
「い、いや!だ、大丈夫です・・・」
キヨテルさんの距離からでも見えるくらい、私派手に転んでたのか・・・
さっきあんなことを言ってしまった手前、合わせる顔が無いような気がした。
「そうですか・・・って、血出てるじゃないですか!早く手当てしないと!!」
「そんな!ただ転んだだけですし、手当てだなんて・・・」
「傷跡残っちゃったらどうするんですか!女性なんですから!!」
「あ、あう・・・」
その後も私は遠慮し続けたが、キヨテルさんが手当てをしてくれるというので、甘えさせてもらうことにした。
「歩けますか?」
「はい・・・いっ!」
一歩歩き出すと、膝がズキンと痛んだ。
あんなに思いっきり転んだのは小学生以来だから、打ち所が悪かったのかもしれない。
「・・・いいですか?」
「へ?わっ・・・」
キヨテルさんは私を抱きかかえて、俗に言う『お姫様抱っこ』をした。
「背負うのは膝に負担が掛かると思ったので」
「重くない・・・ですか?」
「全然ですよ」
そう言って、キヨテルさんはにこっと笑った。
初めは緊張していた私も次第に安心してきて、だんだん眠気がさしてきた。
キヨテルさんの胸に顔をうずめて、私はまぶたを閉じた。
『・・・カ・・・さん』
どこかで、私を呼ぶ声がする。
目を開けると、見慣れない天井が目に入った。
「目、覚めましたか?」
「あ・・・はい。すみません、寝ちゃって・・・・」
そっか、私キヨテルさんに手当てしてもらうために・・・
私はベッドの中にいた。ということは、ここはキヨテルさんの家?
寝起きで頭がぼぉっとして、思考回路がうまくいかない。
「あの、勝手だったんですけど手当てさせてもらいました。お大事になさってください」
「あ、ほんとすみません・・・ありがとうございます」
私はベッドから起きて、ぺこりと頭を下げた。
「じゃあ、私はこれで・・・」
「え?もうこんな時間ですし、多分終電終わっちゃってると思いますよ?」
「へ・・・?」
時計を見ると、深夜3時をさしていた。
「ど、どうしよう!キヨテルさんに迷惑かけちゃって・・・」
「泊まっても大丈夫ですよ?明日仕事休みですし・・・」
え!?
「そ、それは・・・」
私がもじもじと言うと、キヨテルさんは全然そんなこと思っていなかったらしく、顔が真っ赤になった。
「そういう意味ではなくて!足も怪我なさっているし、歩くのは控えた方がいいかと・・・」
「あ、はい・・・」
ただ転んだだけなのに・・・
「キヨテルさんは優しいですね」
「そ、そうですか?」
「だって、私転んだだけなのに・・・」
こんな優しい人だったら・・・
「私の彼氏が、キヨテルさんだったらよかったのにな!」
私はわざとらしく腕を伸ばして、わざとらしく笑った。
でも、すぐに作り笑顔は歪んで涙がこぼれた。
「ルカさん・・・」
「ごめんなさい!私・・・」
必死で涙を拭うけど、一度出た涙は止まってくれなかった。
「俺にだって、下心くらいあります」
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心のなかは空っぽで 何してても
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当たり前も できない
僕を責めた いつだって
必死で 生きてるのに伝わらない
居場所が 奪われてゆく
声や視線が 雨のように...君へ続く軌跡_歌詞

駒木優
A
華のにおい 香り
ふわりと漂って
音色がふった
踊り始める
B
どこまでも続くよ
蒼い空を
のんびり
羽ばたいてゆくよ...find the world_Remix_ver

あおむ
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