-第十六章-
 二人はとりあえず、町へ出てみることにした。と、いうのも、カイトから頼まれたお使いのついでに、町の中で帝国がおかしな行動を起こしていないか、見てみる必要があると踏んだからだ。
 とことこと歩きながら、頼まれたものを探しつつ、周りの人間たちの行動には目を光らせている。人だかりでもあろうものなら、自らその中に飛び込んで人だかりの原因を見て、帝国がどういった行動を起こそうとしているのか、少しでもわかればいいのではないのか、ということで、二人は手にメモと財布を持って、人ごみの中心をはぐれぬように歩いていった。
 結果、これといった収穫はなく、二人は買い物をおえて事務所に帰っていった。
 事務所では、少し暇そうな――といっても、いつものことなのだが――カイトが黒い椅子をぎしぎし言わせながらくつろいでいた。
「ただいま、買ってきたよ」
「ああ、お帰り。これでお昼の準備、できるね。よかった、よかった」
「今日のお昼、何?」
「チャーハンでも作ろうかと思ってるよ。さあ、頑張って作ろう!」
「おー!」
 そうやってカイトの掛け声にあわせ、リンがぐっと握った手を上に振り上げて、嬉しそうに笑った。
 それを見ると、レンはカイトに、
「それじゃあ、部屋にいるから、できたら呼んで」
「うん。寝ないようにしてね」
「わかってるよ」
 と、いって、部屋に戻った。手に握られているのは、携帯電話だった。
 いまだに、ミクやルカからの連絡は来ない。
 段々と、心配になってくるのだ。どちらか一方が、というのならきづいていないだけかもしれないが、二人とも気づかないということはそうそうあるものではないだろう。それに、ルカは案外神経質な性格で、自分に送られてきたメールはすぐさま返すし、自分からメールをとめようということはほぼない。そのくせ、こっちがとめてやると、後でおかしなお説教をされるのだ。と、まあ、そんなことで、ルカが返してこないことは可笑しいということがわかるのだが、ミクが返してこないのは、どうも不思議である。
 彼女はあんなゆったりとした口調の割に、行動は案外早い。そんなミクが、二日以上もメールの返信をしてこないというのは、いささか気になるものがある。
 ふと、携帯電話の着信音が響き、レンは少しあわてながらも携帯電話を開いて、画面を確認した。そこには、メールが一件。メールはミクからでもルカからでもなく、最後の守護者からであった。兎に角メールを確認し、レンはがたがたと音を立てながら立ち上がると、足早に部屋を出て、キッチンのほうにいるリンに声をかけた。
「――リン、いくよ!」
「え?あ、うん!カイト、これ、あとでたべるから、ラップでもかけて冷蔵庫に入れておいて!」
「う、うん。いってらっしゃい、気をつけて」
 そういって二人を送り出したカイトの背中は心なし寂しげであった。

 事務所を出るなり、リンはすたすたと足早に進むレンの顔を覗き込み、
「どうしたの、レン?いきなり…」
 ときいた。その問いに、レンはリンのほうを見ようとせずに淡々と話した。
「リンはまだ会ってないから知らないと思うけど、最後の守護者から、メールが届いた。早急に話を聞く内容だ。ここまで試練をクリアしたリンなら、もう関係ないとはいえないからね」
 そういうレンの表情には焦りが見られた。
 しかしその歩みは一向に遅くはならない。それについていくことでリンは精一杯で、レンの話をちゃんと理解するほどの余裕はなかったが、しかし、何となく今の状況が通常ではないことはわかった。
 レンが、自分の服のすそをぐっと引っ張って、ぶんぶんと手を交互に振りながら歩いていく。それが、レンのあせったときの癖だった。
「レン、その人に、連絡は入れた?」
「うん、入れた。けど、結構遠いところにすんでいるんだ。車があればそう時間もかからないけど、徒歩だときついな…」
 そういったレンの横に、パトカーが一台、止まった。
「二人とも、何、やってるの?」
「メイコ姉!」
 ひょっこりと顔を出したのは、メイコだった。
「メイコ姉!ちょっと、連れて行って欲しいところがあるんだ。パトカー飛ばしてくれない!?」
「え?…わかったわ。早く乗って。どこまで?飛ばすわよぉ!!」
 そういったメイコの瞳には、炎が燃え上がっていた。
 
 しばらくして、メイコが運転するパトカーは目的地へと到着した。うっそうと茂る森の中、その館はポツンと存在していた。玄関で待っていた青年は、レンがやってきたのをみると、こちらへと走りよってきて、レンの頭をわしゃわしゃと引っ掻き回した。
 青年――メイトは、そのレンが降りてきたパトカーに目を留め、疑うような目つきでレンを睨んだ。
「大丈夫、この車は、知り合いの車さ。間違っても、帝国の手先じゃない」
「…ならいいんだが…。しかし、町のほうでお前に友達ができるとはな。顔くらい見ておくか」
 そういって、メイトはパトカーを覗き込んだ。いきなり、顔がこわばった。
「…レン、なんで運転席に鏡が置いてあるんだ」
「誰もそんなボケはほしくねぇよ。よく見て」
 そういって、レンガメイトの視線をそちらへずらすと、今度はメイコのほうが身を乗り出して聞いてきた。
「レン、どうして鏡が?」
「あんたもか。」
 呆れながらそういったレンの横で、赤い二人が火花を散らし始めていた。

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  • 非営利目的に限ります

真実のガーネット 17

こんばんは、リオンです。
まあ、いろいろありまして、学級閉鎖にはなりませんでした。
…学校閉鎖にはなりましたが。
でも、投稿時間が早まることはほぼないので、あしからず。
それでは、また明日!

閲覧数:178

投稿日:2009/10/05 23:24:57

文字数:2,239文字

カテゴリ:小説

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