おかえり

 

ふぅ。
短く息を吐く。
 
レンカさんの時と同じようにやればいいんだ。
 
「リント」
「ん?」
「あのさ、まず一人でやらせて」
「え?別にいいけど大丈夫なのか?」
「あ、で、でもヤバくなったら助けてね」
「あぁ。分かった」
 
改めて短く息を吐く。
魔方陣を開く。
しばらくすると回り始めた。

瞳を閉じ、力を込める。

――絶対にレンを取り戻すんだ。そして笑顔で迎えてあげよう。
 
そう考えていると込める力も自然と強くなった。

―――お願い。帰ってきて――。
 
さすがに苦しくなってきた。
でも、レンのためにも倒れる訳にはいかない。
あたしは出せる限りの力を込めた。

もう、限界だ――。
 
そう思ったとき魔方陣は光りだし、辺り一面を真っ白に染めた。
 
  
やった―――。
 
そう思った時にはすでに倒れていた。
 
 
 


 …ン
 「…リン」

「リン」

あたしを懐かしい優しい声が呼んでいる。
 
「おかえり。レン」
 
あたしは倒れたまま笑みを浮かべた。
レンもあたしとそっくりな笑顔で応えた。
 
「ただいま」

レンはあたしの手を握り、自分の方に引き寄せた。
あたしは引き寄せられたついでに抱きついた。

そして、いつの間にか泣いていた。
泣かないで笑顔でって決めていたのに。
 
「ゴメン」
 
レンが謝る。
謝らないでよ。
余計に…。
余計に泣けてくるじゃない。
 
「…謝らないで。笑顔で『ただいま』って言ってくれれば、あたしはそれでいい」

レンはあたしの方に向き直り、笑顔で「ただいま」と言ってくれた。
二回目だけど、あたしの中では二回目と一回目のただいまは違うと思う。
だから。
あたしもちゃんと違う『おかえり』を。
 
レンの首に手をまわす。
あたしは笑顔で「おかえり」と言いつつおそろいのネックレスをレンにつけた。

「うんうん。なんて素敵な姉弟愛」
「リント?いらんコメント禁止」
「うるさい。俺は純粋n…[ゴッッ!!]
「全く…」
 
リントが伸びている。
あたしはやっぱりこんなほのぼのとしたのが好き。
 
「じゃ、私たちは反転世界に帰るね」
 
レンカさんはリントを引きずりながら洗面台へ向かった。
 
レンカさんとリントは魔方陣の中に消えた。
 
「こういうことだったんだな」
 
レンは一度にいろんなことを悟ったようだ。
 

「さて。『ただいま』ってちゃんとみんなに言いにいかないとな」
「うん」
 


あたしはレンに手をひかれながら部屋を出た。
 






次回に続きます。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

家族の消失 ―鏡音編⑩―

鏡音編完結。
次がおそらく最終回です。
 
 
初音ミクの消失
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2937784

この小説の土台、および参考にさせていただいております。

閲覧数:357

投稿日:2012/04/15 21:50:40

文字数:1,083文字

カテゴリ:小説

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