「…どうしたんだ、あいつ…」
リントは走り去って行ったレンカの後を見送って、シャーペンをペンケースにしまい、立ち上がってリンを見下ろすと、
「ごめん、帰るわ。…後はレンに教えてもらえ」
「うん…。仕方ないね。ありがと」
リントはすばやくスクールバッグをリュックのように背負うと、流石の運動神経で、教室を出て行った。
「…ってもういねぇ! アイツ足はっや!!」
リントの声が聞こえる。
入れ違いになって、レンが後ろのドアから教室に入ってきた。
「…どしたの」
「んー、なんかねー、痴話喧嘩?」
「は?」
「ふ…っ、ぅあ…、えぐ…」
頬に手を当てると、泣いている所為か、熱くなって行っているのがわかる。
「リントくん…ぐす…」
「…なんでお前、泣いてんだよ…」
突然声がして、レンカは振り返った。逆光の中、ドアを開いて、リントが仁王立ちになって自分を見下ろしている。
「リント…くん…」
「おう。呼んだか。…とりあえず、泣き止め」
言いながらしゃがむと、リントは自分の制服のセーターの袖を伸ばして手を隠すと、レンカの涙をぬぐってやった。少し呆れたような表情をしているが、どこか不安そうで、子犬のようにも見える。
レンカが泣き止むと、リントはレンカのスクールバッグももって家に上がった。
「何で泣いてたんだ? 誰かに虐められたのか?」
リントは振り返りながら、そういった。
違うんだよ。あのね。…そういえれば、どれだけ。
「…っなんでもないよ…。大丈夫。…ごめんね、すぐご飯の準備するから…」
声を出すと、また涙が出てきてしまう。レンカはあわててそれを隠しながらいった。
「…レンカ?」
しかし、リントはすぐにレンカの異変に気付いたらしかった。数歩レンカに近づいて声をかけたが、レンカはぷるぷると小刻みに震えたまま、答えてはくれない。次第に苛立ってきて、リントは強くレンカの肩をつかんだ。
「――何でもない事ねぇだろ! 突然逃げた理由と泣いてた理由をちゃんと話せ!」
腹立たしさと苛立ちが込められたその語勢にわずかにレンカはビクついたが、すぐに落ち着いて、次の瞬間、キッとリントをにらみつけた。
「リントくんの所為だよ!!」
その迫力に、思わずリントはひるみ、後ずさった。何も言わずにまたレンカはうつむくと、リントが持っていた自分のスクールバッグを乱暴にひったくって、二階にある自分の部屋へと戻っていった。
え…、え、え?
残されたリントはただただきょとんとして、レンカが上がっていった目の前の階段を見つめていた。
…え? 俺の所為? 俺、レンカが嫌がることなんてしたか? いや、レンカは俺が苦手だから、俺がなんとも思っていなくても、レンカにとってはものすごいストレスだったのかも…。
それがここに来て爆発したのか?
リントは恐る恐る震える足で階段を上がり、レンカの部屋の前に立つと、軽く二、三度ドアをノックした。
「あの…、レンカ…なんか…その、ごめん…」
「ごめんって、何が」
「いや、何がって言われても…でも…なんか嫌な思いさせたみたいだし…」
対人経験の少なさは、こういうときに不利である。子供がしかられたからとりあえず謝るのと同じように、リントは兎に角謝っておこう、と漠然と思っただけなのである。
「…レンカ、あの…」
「もういいから。しばらく一人にして。リントくんの声聞きたくない。放っておいて」
ついに言われた。声も聞きたくない。どっかにいけ。
それは…つまり、同じ空気も吸いたくないと言うことなのか? レンカが俺みたいなタイプが苦手なことはわかっていたが、そんな、生理的に受け付けないほどだったのか…?
絶望に打ちひしがれた気分だった。レンカに嫌われた。最近はスキンシップも多くなったし、お互い慣れてきて、距離も縮んできたと思っていたのに、それは、俺の単なる独りよがりだったのか?
ぐるぐると色々な考えが脳裏をよぎるが、それらはやがて、形を成さない愚問へと変っていく。
そうか、俺は勘違いしてたのか。俺が好きだから、あいつも好きだろう。勝手にそう思って、自分に都合よく解釈して、それで、レンカを振り回していたのだ。
落ち着いてそう結論付けた途端、リントは視界が一瞬、真っ暗になったように感じた。それが所謂めまいと言うものだと気付いたとき、リントは壁に頭を思い切りぶつけていた。
ずきずきと痛む後頭部を抑えながら、リントはその場にしゃがみこんだ。
「…くそ…っ」
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ご意見・ご感想
美里
ご意見・ご感想
あああああああああああぁぁぁぁぁ、レンカちゃん可愛い!
リント君はレンカちゃん愛が凄く深いですね。それでいてレンカちゃんを多分世界一大切にしてると思います。
レンカちゃんの足の速さに憧れます。というか、レンカちゃんって絵も描ける、足も速い、家事もできるで凄いと思います。レン君とレンカちゃんが一家にいたら凄く幸せだ…
女子軍の何気ない一言で男子軍があたふたとしているところが好きです。大好きです。凄く可愛くて。
リント君は子供です。実はリンちゃんやグミちゃんより子供だったりして。単純だ…
リント「今日の晩飯、何?」
レンカ「何がいい?」
リント「ハンバーグ!!(即答)」
レンカ「分かった。」
リント「皿洗い、手伝うか?」
レンカ「大丈夫だよ。リント君は宿題とかやってて。」
リント「お前は?」
レンカ「大丈夫だよ。宿題は終わらせた。いつもやってるから。」
リント「…いつも、ゴメン。」
レンカ「?」
こんな感じだと思います。
2011/12/13 20:27:04
リオン
こんばんは美里さん^^ 変身遅くなってごめんなさい><
そうですね、リントくんはすごく一途でレンカちゃんには異常に気を使ってると思います。
レンカちゃんはなんでもオールマイティこなせるはずです。でも多分ダンスとかの変則的な運動は苦手。
一家に二人、レンとレンカですね(笑
いつもはクールぶってる男の子が突然子供みたいにおろおろするのすごく可愛いですよね(殴
追い詰められると大人になるのが女子陣、子供になるのがレンとリントくん。変らないのがグミヤ。
レンカ「今日は何食べよっか」
リント「…。オムライス…」
レンカ「うん、わかった。…リントくん、子供っぽいもの好きだよね」
リント「ば…っ、違う! 別にオムライスなんか食いたくねぇし!!」
レンカ「リントくん、ごめんね、ちょっと手が届かないの。上のお皿、とってくれない?」
リント「おう。…っ、…! …???っ」
レンカ「あっ、ごめんね、リントくんも…。踏み台もってこようか?」
リント「いらん! ちょっと黙ってろ、今本気出してとってやるから!!」
多分こんな感じです。最後にはリントくんが切れるから、レンカちゃんが謝って終わります。でも可愛い。
2011/12/13 21:59:03
アストリア@生きてるよ
ご意見・ご感想
リントぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
……いきなりすいません。毎日お疲れ様です、アストリアですー
いやぁ何だかんだで優しいリント君萌えた……っ、萌え尽きた………っっ!!
レンカちゃん運動神経もいいとかwwスペック高wwそしておいしいww
リント君はレンカちゃん、レンはリンちゃん実は大好きっ子ですから、ちょっと冷たい一言ですっごい落ち込みそうです……てか落ち込んでます……かわええ……←
リント君何かよく分からないけど反省してる……!!よし、妄想しようじゃないか色々と!!(((
レン「リン、宿題終わってる?教えてあげるけど」
リン「…レン、それは私がバカだから?だから「教える」って言うの?」
レン「えっ……あ……(嫌味じゃない!むしろ教えたい!!)」
リント「レンカ、何か手伝うぞ。やって欲しいこととかあるか?」
レンカ「いや、いいよ。リント君は座ってて、1人で十分だから」
リント「え、あ、うん……」
何気なーい一言で傷つく2人はとってもおいしいと思います!!
2011/12/13 16:24:15
リオン
メッセありがとうございます、こんにちはアストリアさん^^
リントくんはちょっとツンデレなだけで、決して悪い奴じゃないです。寧ろ恋に関しては超乙女。
レンカちゃんは超超超ハイスキルです。でも自慢とかしないから、誰も知りません。ハイ。
そうですね、そりゃあもう女子組の言動に一喜一憂する男の子すごくいいです。
子供ってとりあえず謝るか、質問攻めする生き物ですよね。多分リントくんはそういうタイプ。
レン「リン、勉強わかる? 教えるよ?」
リン「いいもん。レンよりリントくんのがわかりやすいもん」
レン「!!?」
リント「レンカ、困ったことないか? 俺に言えよ」
レンカ「ありがとう、リントくん。でも、レン君が助けてくれるから、大丈夫だよ」
リント「!!?」
こうしてレンとリントくんの仲が悪くなっていきます(笑
でもリンはリントくんと、レンカちゃんはレンとただ同じクラスだから、と思って頼ってるだけだったりして。
2011/12/13 16:37:55