「あの…その…グミさんのことずっと前から見ていて一生懸命なところも、頑張り屋なところも、すごくかわいいなって思って…だから、あの…僕と付き合ってください!!!」
3月19日、人生初めての告白をされる―――今日の日記のタイトルはこれに決定だな。
私は人差し指にまかれためくれそうになっている絆創膏をもてあそびながら相手をじろりとにらむ。
目の前にいる男子は異常なほどに真っ赤な顔で黒縁の眼鏡越しに私の機嫌をうかがうかのような目をむける。
正直言って、全然タイプじゃない。
「へ、返事は、今じゃなくても…」
「嫌いだから無理。」
私は一言そういって教室のドアを開けて立ち去る。
ああ、神様。あんな奴のために呼び出された指定の場所までいった素直でいい子ちゃんな私の時間を返して……なんてね。
全く話したこともない男子にあんな気持ち悪いことを言われるのは最悪だった。
私が『一生懸命』『頑張り屋』?ふざけるな。お前に何が分かる。
いらいらしたままやりかけの仕事が残る生徒会室に戻ると、私の仲間がまっていた。
「お帰り、グミ。 いきなり出ていくから心配しちゃったよ。先生に新しい仕事でも頼まれたの?」
「おっせーよ、会長。あと、この資料、なんか文章がおかしいんでもう一度、目を通してください。」
「グミせんぱーい。このパソコン動かなくなっちゃったんですけどー。」
「ただいま、ミク。仕事は増えてないから安心して。ところでミクオは?またサボり?
レン、口が悪い。先輩には敬意をはらいなさい。んで、何?その資料? あとで見るから机に置いておいて。
はいはい、リン。そんなクリックしまくってると、もっと動かなくなるわよ。それ以上いじらないで私に任せて、こっちの仕事をして。」
私は全員からの言葉に返事をしてリンを困らせるパソコンをとりあえず見てみる。
しばらくいろんなところをいじってみて、様子を見るとまたちゃんと動き始めた。
「リン。パソコンちゃんと動くわよ。その仕事は私にかして、パソコンのほうに戻って。」
「はーい。ありがと。せんぱい。」
「ミク、ミクオはどこいったの?」
「クオ君はレン君との賭けに負けてジュース買いにいったよ。」
「こら!レン。賭け事は禁止って言ったでしょ!!」
「すんませーん。もうしません。クオが全員分のジュース買ってくるんでそれでチャラにしてください。」
「はいはい。今回だけよ。」
「ふふっ。グミ優しいね。 ところでさっきどこにいってたの?」
「あー。なんかよくわかんない男子に告白されてきた。」
ガタリ、と。全員が椅子から立ち上がる。
なぜかタイミングよく
生徒会室に入ってきたミクオまでもが口をパクパクと動かし、目を見開いている。
「どどどどどどうしよう!?えーと、お赤飯炊くべきかな!?クオ君!!」
「いやいやいや!!とりあえず槍が降るかもしれないから、レン、窓閉めてきて!」
「え、ちょ、待って!明日、世界終わるフラグかなこれは!?」
「えー!!いやだそんなの!リンまだやりたいことたくさんあるのに。死にたくないよお!!!」
…。
みんなは椅子をなぎ倒しながら大騒ぎ。
窓を閉めたり開けたりを繰り返してるレンに、泣きながら床にうずくまっているリン。買ってきたコーラを振りまくっているミクオに、どこからか炊飯ジャーを取り出すミク。
私はとりあえず、ミクオが振りまくっているコーラを取り上げて、缶のプルタブを起こした。
「…。」
「…。」
「…。」
「…。」
「みんな、落ち着いた?」
コーラまみれになったみんなは、やっと落ち着きを取り戻したようだ。
数十秒の沈黙の中、やっと話せる状況になったミクオがタオルで頭をふきながら、質問してきた。
「で、グミに告白した男子って誰?」
「んー…名前知らない。なんか眼鏡してて黄緑色の髪した男子。」
「え!?それって、去年の文化祭のミスターコンテストで優勝したグミヤ君じゃない!?
この学校1の美少年で有名じゃん!!」
「そうなの?」
「まさかこの学校の女子生徒でグミヤ君を知らない人がいるとは…」
「しかも、そのグミヤ君がズボラで女子らしさのかけらもないグミに告白するとは…」
みんな酷い言いようだ。
「…。」
「まさかグミ先輩、振ったんですか?」
「うん。」
「会長、おしいことしたな… これから先の人生で告られることなんてもうないかもしれないのに…」
「それはどういう意味?レン。」
「そのまんまの意m…痛い!ちょ、会長!!足蹴らないでえええ!!」
「グミ!!だめだよ!!レンにかかってるコーラがグミちゃんにも飛び散っちゃう!!」
「ミク先輩!?俺の心配は!?」
その日はとりあえず、下校時間が来てしまったのでみんなでおとなしく家に帰った。
次の日の放課後。
私たちは学校周辺の見回りをしていた。
最近は他校のガラの悪い連中がうろついてるから危険、ということで生徒の下校時間に学校周辺の見回りをしろと先生に頼まれた。
「しっかし、こんなところぐるぐる歩き回っても意味ないんじゃね―の?電車とかバスで通学してるやつもいるし。」
ミクオが大きなあくびをしながら言う。
「まあ、確かに言われてみればあんまり意味ないかもね。」
「会長、ほかにも仕事あるし、時間短縮のために何人かずつに分かれて、それぞれ別の道の見回りしたほうがいいんじゃないっすか?」
レンが提案する。
「そっちのほうが時間短縮になるわね。
じゃあ、リンとレンは此処からまっすぐ歩いて東門のほうから学校に戻って。ミクとミクオは…そうね、この道を左に曲がって行ったら駅があるからそこの見回りをしてきて。
みんな、地図持ってるから道は大丈夫よね?何かあったらケータイに連絡すること。私は裏門のほう回ってくるから。」
私が指示すると、ミクが抗議する。
「待って!!裏門のほうって、一番危険だよ!? グミ一人で行って何かあったら…」
「ミク、泣きそうな顔しないで。大丈夫だから。」
「でも…「ミク!!!」
ミクの声を遮ったのはミクオだった。
「…会長の命令は絶対だ。グミが大丈夫って言ってんだから大丈夫。」
ミクオがミクをなだめると、ミクはしかめっ面で、
「わかった。でも、無理だけはしないで。グミも女の子なんだから。」
小さくそういった。私はミクの頭を撫でて、うなずいた。
「よし!!時間はそんなにないから寄り道だけはするなよ!!解散!!」
私の言葉でみんなそれぞれ歩き出した。
裏門のほうに向かって歩いていくと、だんだん人通りが少なくなってくる。
旧校舎の壁にペンキで書かれた落書きや放置された自転車を通り過ぎ、暗い道を歩いていくと報告にあった通りの不良たちがうちの学校の制服を着た生徒とそこにいた。
私のいる場所からは会話は聞こえない。
不良たちの場所へ行くかどうか迷いながら、その様子をうかがっていると、不良がうちの学校の生徒の胸ぐらをつかんだ。
「!?」
流石にこんな状況を目にしたら、出ないわけにはいかないだろう。私は意を決して不良たちに近づいた。
「ねえ、君。」
「あ゛ぁ゛?なんだよ。」
見た目からして不良のそいつは視線を生徒から私に移す。
その鋭い視線に少しひるみそうになりつつも、なるべく相手を刺激しないように優しく話す。
「君が脅してるその生徒、うちの学校の生徒なんだが、開放してもらえないだろうか?」
「はぁ?離すわけねえだろ。馬鹿じゃね―の!?こいつの代わりにお前が金払うんだったら考えてやってもいいぜ?」
「金、ねぇ…。一応聞いておこうか。いくらだ?」
「五万。」
「はっ。そんな大金ただの学生が持ち歩いてると思うか?大体、その生徒が金を払う必要があるのか?」
思わずその不良をにらみつける。
「払えねえんだったらお前にも用はねぇ!!」
不良はイラついたように顔をゆがませ生徒を離し、私を殴ろうとする。
「!?」
とっさのことで反応ができず、思わず目をつぶった。
カシャン、と何かが落ちたような音。
「…?」
自分の身に衝撃がおとずれないのでそーっと目を開けてみると、自分の目の前には大嫌いな人物の影。
地面に目をやると、自分の大嫌いな人物のかけていた黒縁の眼鏡。
「…ぐ、みや…?」
思わずその人物の名前が口からこぼれた。
体から力が抜けて、その場に情けなく座り込んでしまった私のほうを振り向いて、グミヤは一瞬微笑んで見せた。
その唇の端からは赤い血が滴っていた。
「あ゛ぁ?誰だよ、お前。」
不良が私たちをにらみ、もう一発殴ろうと構える。
「名乗るほどのものでもない。」
グミヤは小さくそう答えて、不良のこぶしをするりとよけて、不良の後ろに回り込む。
そして一瞬のうちに、不良の首筋に自分の肘を叩き込んだ。
「ぅがっ!!」
不良はそのまま白目をむいて倒れた。…ただの気絶のようだ。
すでに脅されていた生徒は逃げたようで、その場には私とグミヤだけ。
落ちた眼鏡を拾ったグミヤは、その眼鏡を自分のポケットにしまい、私のほうへ歩みよてきた。
グミヤから差し出されたその手につかまりなんとか立ち上がったけど、足元はふらふらして目からは涙があふれて、今の私はどんだけ情けない状態なのだろうと思った。
彼は何も言わず私の背中に腕を回し、母親が小さな子供をあやすように、背中をやさしくなでてくれた。
その優しさに、さらに涙があふれる。
「ご、ごめんっな、さい…。わ、たしのせぃで、怪我、させちゃ、って…。」
「大丈夫。怪我なんてなんともないから。」
私が泣き止むまで、彼は黙ってわたしを抱きしめていてくれた。
落ち着きを取り戻し彼から離れた。
顔が思わず赤くなるのを必死にポーカーフェイスでかくして、私はグミヤに言った。
「…さっきは情けないところを見せてごめん。」
「こっちこそ勝手に抱きしめちゃってごめん。嫌われてるのに」
「き、きらいじゃ、ない…よ…。
あ、あとは私が何とかするから!!もう帰って!!」
グミヤに顔を向けていられなくて、思わず背を向けると、グミヤは私の腕を引っ張った。
「!?」
「あ、ごめん!!」
グミヤはすぐに腕を離してくれた。
「何?」
「…帰らない。」
「なんで?グミヤはもう、かえっていいよ。あとはミクオとか呼んで処理して帰るだけだから。」
「もし、ミクオたちが来る前に不良が目を覚まして、グミさんが襲われたら、俺は一生後悔する。」
「…っ!!なんで!!」
「俺がまだ、グミさんのことを好きだから。」
「私は好きじゃ、ない!!」
「でも、嫌いじゃないでしょ?」
「…。」
いつもの自分らしくない。だんだん熱くなる顔。
目の前のグミヤの顔は、ミスターコンテストで優勝したのも納得なほどのイケメンで。
「め、眼鏡!!…その、外してたほうが、かっこいい…よ。」
自分でもよくわからないことを口走っていた。
「そう?なら外したままなら付き合ってくれる?」
「…考えといてあげる…。」
小さくそう答えれば、グミヤは優しく微笑んで、不覚にも私はその笑顔に見とれてしまった。
~後日談~
その後、私の帰りが遅いのを心配してやってきたミクオたち生徒会メンバーに私はめちゃくちゃ怒られた。
とくにミクは号泣。
さすがに悪いことをしたなと私は思い、後日、生徒会メンバーに反省文を提出した。
みんなはその反省文を見て「グミらしい」と言って笑っていた。
グミヤはたくさんの女子に毎日追い回されて大変そうだ。
でも毎日ちゃんと女子たちから逃げ切って生徒会室まで迎えに来てくれる。
はじめとは違う答えを今なら出せる気がするんだ――――
「ねえ、グミヤ?」
下校中、夕暮れ色に染まった廊下で私は窓を閉めながら後ろで私のカバンを持ってくれているグミヤに声をかけた。
「何?」
「好きだよ」
「///」
「あれ?もしかして照れてる?」
「うっせぇ…」
「いつもは私が恥ずかしがってばっかりだからね、お返し!!」
イヒヒと笑ってみせると、グミヤが顔をうつむかせたままで小さく言った。
「…俺だって好きだし…」
「んー?なんか言った?」
「あ゛ぁ゛ー!!もう!!!!俺も大好きだよ、グミのこと!!」
真っ赤な顔でグミヤは怒鳴った。下校時刻間際の人が少ない廊下にその声が響き渡る。
「じゃあ、両思いだね。」
私もきっと赤い顔をしてるんだろう。
二人の視線が交差して、私たちはどちらからともなく、
「「好き」」
そう呟いた。
4月9日。今日の日記のタイトルは――――――
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ご意見・ご感想
姉音香凛
ご意見・ご感想
ミヤグミひゃっはー!←
ミヤくんが無駄にかっこいい!((失礼な
ツンデレGUMIさんも美味しいよmgmg!
最後の日記のひにちが自分の誕生日・・・だと・・・!?
ってかツンデレのくせに日記つけてるGUMIとか!美味しすぎる!((違
素敵小説さんくす!ブクマもらってくぜ!
2012/04/12 18:12:41
紅華116@たまに活動。
本当に遅れてごめん!!
気にいってくれたみたいでよかった!!
ミヤグミおいしいよね、ぐふh(((
グミヤの性格が前半と後半で違うwwかっこいいならいいけどww
グミさんのツンデレがちゃんと伝わっていて安心ww
せっかく誕生日だからね!!遅れてしまったのが残念だけど…
来年は当日に渡せるように努力します!!
どぞどぞ、すきなだけグミちゃんをmgmgしてください←
ブクマしてくれてありがとう!!
2012/04/12 21:10:41