林檎。赤。
手の中にある果実を見つめながら目の前の魔女は言った。
「林檎の赤って綺麗だな、レン。」
「・・・いきなりどうしたんですか?リンさん。」
「いやな、林檎の赤が綺麗でな。ちょっとレンとその綺麗さを共有したくなったんだ。」
妙に乙女だ。可愛いけど気持ち悪い。
まぁ、確かに林檎の赤は綺麗だ。この世に存在するどんな赤より綺麗だと僕は思う。夕日のように目を痛めつける赤とも違い人間の体内に流れるどす黒い血とも違う、食欲をそそる美しい赤だ。イヴが口にしたのも白雪姫が毒だと知らずに一口、林檎を齧ったのもわかるかも知れない。実質、どう考えても怪しいおばあさんに「林檎はいらんかい?」と言われたら貰ってしまいそうな気がする。
「そうですか。僕も林檎の赤は美しいと思いますよ。どんな赤より美しいと思います。」
「・・・食うか?」
「大丈夫ですよ。リンさんは、人間の血ってみたことありますか?」
「ふん!!当たり前だ!私は魔女だぞ!」
「どうでしたか。」
「あぁ!真っ赤だったこの林檎の様に!美しかった!」
「ちなみにどんな場面でしたか?」
「ふふ、知りたいか?まだ私が鏡に入っていない時にな、ジョンという男なのに裁縫が好きなやつがいてな。そいつの話が面白いので、私は毎日そいつの元へ通ってたんだ。ある日私が、驚かそうとして後ろから肩をトントンとやってやったら手に持っていた針が指に刺さってしまったのじゃ。ぷつって感じで血が出てきた。私が大笑いしてたらそいつ、怒っちまってな。正座で説教聞かされたんじゃ。まぁ、今はもうこの世に居ないがいい奴だったぞ。」
魔女の表情は、若いのにまるで若き頃の美しき記憶に思いを馳せる老人のようだった。
心の何処かに少しの苛立ち。
「馬鹿ですね、リンさん。人間の血はもっとどす黒いですよ。僕、小さい頃に病院で採血をしてもらったんですけど、ふと注射器を見た僕の目に映ったのはどす黒い液体でした。僕、それを見るまでずーっと人間の血液って今リンさんの手の中にある林檎みたいな綺麗な赤してると思ってました。だから、軽くショックでした。」
「そ、そうか。」
気のせいか魔女の表情が引き攣っている。コイツ、今まで知らなかったな。まぁ、こんなことをいきなり言われたらひくわな。
「人間の血は今あなたの手の中にある果実の様に美しくはないのですよ。僕たちの中に流れる血が人間がいかに醜いかを証明しているんです。」
「私は、美しいと思うぞ。その人間特有の醜さこそ美しいと思うぞ。目的のためならどんなことでもするなんて、美しいと思わないか?例えどんな目的であろうと、手を選ばずにそれを実現しようとする。とても美しいと思わないか?」
「・・・僕は逆に人間のそんな所が嫌いです。実に醜い。」
「そうかぁ?というか、お前も人間じゃないか!本当にお前は面白いな。」
そういうと魔女はくすくすと笑う。
そんな彼女に、心の何処かで愛しいと思う僕が居る。
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