ガチャ…

僕は勢いよく部屋に飛び込んできた。さっきのレンは消えてしまった。彼は幽霊だったのだろうかそう考えるとゾッとする。
僕は落ち着こうと深呼吸をして、今入って来た部屋を見回した。しかし、ここは部屋なのか?そうこの部屋は、さっきのレンの部屋と違って、なんというか…歪んでいた……所々部屋には穴が開き、直線であるはずの部屋の輪郭は曲がっていた。
僕がなんとも奇妙な部屋を見回していると、部屋の隅から歌声が聞こえてきた。それはさっきのレンのものとは違いどこか淋しげだった。僕は興味を持ち部屋の隅まで歩いていった。(これがなかなか大変で、床に穴が開いたり、空間が歪んだりするのだから。)そこには僕よりも少し幼い少年が膝を抱えていた。しかし、確実に歌声は彼から聞こえていた。

「君…」

「ヒッ…」
僕がその子の肩に触れようとすると彼は僕の手を避けるように身をよじった。僕は過去にその子に何かあったのだろうと察し、その子に触れずに尋ねた。

「君、名前は?」
他愛もない質問。

「レン。」

「えっ!?」
今度は僕が怯える番だった。レンってあのレンか?彼ならさっき前の部屋で…

「…お兄ちゃんも見たんでしょ。」
2番目のレンが僕に尋ねる。

「何を?」

「別の僕が消えるところを…僕もいずれそうなるんだよ…」
僕がそれを聞いて黙ってしまっていると、2番目のレンはまた歌いだしてしまった。気のせいかさっきよりも部屋の歪みが大きくなった気がする。

「ねえ、レン。ならなんで歌うのを止めないの?そうすれば君は消えなくて済むんだろう?」

「繋ぎとめるため…」
レンがつぶやくように言う。

「えっ?」
僕が聞き返したが、その時大きく床が揺れた。

「いけない、喋りすぎた。僕は歌でこのちぐはぐな世界を繋いでいたんだ。僕だけの世界を…でももう限界みたいだ、この世界はもうすぐ崩壊する。お兄ちゃんは早くこの部屋から出てって、僕は時間を稼ぐから…」
そう言うと、二番目のレンは僕が入って来たのとは反対にある扉を指差し、また歌いだしてしまった。

「でもっ…」
僕がレンを止めようとするがレンが大声を出す。

「いいから、出てってよ!ここは僕だけの場所だ。僕だけの安全な…」
僕はその姿に恐怖に似た感情を抱いた。そして黙ってその場を立ち去った。扉にたどり着いて振り返ると、ちょうどレンが薄れ部屋が崩壊するところだった。

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  • 非営利目的に限ります
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僕―7番目の僕②―

mayukoさんの7番目の僕(http://www.nicovideo.jp/watch/nm10697814)を勝手に小説にさせて頂きました。
2番目の僕です。彼は臆病という設定だったから、無邪気の1番目の僕よりかは書きやすかったかな。でも、彼も悲しい人です。

続きはこちら(http://piapro.jp/t/NTT3

閲覧数:691

投稿日:2011/04/19 02:25:46

文字数:1,005文字

カテゴリ:小説

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